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線路は続くよ どこまでも

その日の早朝、「アナホルト様、遂に完成しました〜」と鍛治師の羊獣人ハンマオが飛び込んできた。


私が飛び起きると、隣で寝ていたリナが「う〜ん…あと5年」と布団を被った。

私はリナを残し、急いで顔を洗うとハンマオと共に工房に走り出した。


工房に着くと、黒光りした鉄の塊が鎮座している。

私は震える声で試運転をしたか尋ねる。

「試運転はこれからです。アナホルト様と一緒にしようと思ってお待ちしてました」とハンマオの弟子が答えた。


それを聞いた私がオークの魔石を取り出し、鉄の塊にセットすると、ハンマオがその中に水を入れる。

「よし、魔力を流すぞ」と、ゆっくり魔石に魔力を流す。

すると、魔石が熱を放ち水が沸騰ふっとうし、機械の中に蒸気が充満する。

やがて…充満した蒸気により空気が圧縮され、逃げ場を失った蒸気がピストンを押し上げる。

その押し上げられたピストンが歯車を回し、鉄の塊から突き出した車軸を力強く回した。


「成功だ〜!!」と私とハンマオが抱き合う。

そこにハンマオの弟子も加わり、3人で力強く動き続ける夢のエンジン『蒸気機関』を眺め続けた。



ーーーーーー



「とりあえず、1Kmくらいで充分かな」と工房から村の外に向かって「【レール(軌条きじょう)】と唱えると、0形(オー形)に繋がった線路が現れた。


「この線路の幅に車輪をセットして、ブレーキは蒸気の流れを変えて、蒸気ブレーキを採用」と、魔の森開拓の切り札とも言える蒸気機関車の開発を進める。


私は自分のギフト【ホール(穴掘り)】と魔石燃料の蒸気機関車がこの世界で最高の組み合わせである事を感じていた。

石炭などの火力燃料と違い、魔石燃料は煙突が必要なく煙も出ない。出るのは水蒸気だけだ。

これは、トンネル内を走らせる上で最高のメリットだった。

念の為、トンネルには空気の入れ替えの排気と吸気の仕組みを組み込んでいるが、無くても問題なかったくらいだ。


そして、燃料となる魔石は魔の森で魔物を狩れば、いくらでも採取できる上に、魔法を使える者であれば充填もできる。

正に夢のクリーンエネルギーだった。


前世の世界では、高度に科学技術が進んだことで便利だったが、その反面として化石燃料の使い過ぎと大地を覆い尽くすアスファルトや太陽光パネル、そして自然には分解しないプラスチックゴミなどの影響により、大地や海は汚されその循環が狂いかけていた。


『この世界をあの世界のようにしたくない』と思い付いたのが、地表には手を付けない開拓だった。

その為のギフトとして【ホール(穴掘り)】は最適と言えた。

さらに派生として、そこから連想された魔法が後押ししてくれる。

ノービル辺境伯には馬鹿にされたこのギフトが、私にはこれ以上にない大切なものとなっていた。






「よーし、試運転を始めよう」と0形(オー形)に敷いたレールに置かれた蒸気機関車を眺める。



煙突は必要無かったのだが、何となく車両の前に顔が付いてお喋りする(あの)機関車が頭を離れないため、前世の蒸気機関車と同じような形をハンマオに作ってもらったのだが…


『やだ、何これカッコいい!小さな煙突もアクセントになって可愛い』

と自画自賛がとどまることを知らない。



また試験運転として、10人程が乗れる小さな客車と、貨物車として丸太を10本乗せた物を連結させた。


『シュッシュ シュッシュ』と蒸気によりピストンが動き始める。

私は客車に座るバーモント村長とリナ、ハンマオと助手に声を掛ける。

初号機しょごうき 行きま〜す」といろいろと混じったテンションでギアをつなげる。

すると、ガコンと小さな衝撃が走り、車輪が動き出した。

蒸気機関車が客車と貨物車を引っ張って走り出す。

「成功だー」と叫ぶ私に、客車から「速〜い」「凄い!!」と歓声が上がる。


10周程線路を周回して車両を止める

「よし、ブレーキも問題ない。体感では時速60kmくらいのスピードだが、まだまだ余裕がある」とハンマオに笑いかけ、「完璧な出来だ。ありがとう」とねぎらった。




その時、この世界に高速大量輸送の手段が産声を上げた。








※現時点のギフト

ホール(穴掘り:空間含む)レベル3

    (ほーる)

   (集会所)レベル2


※派生ギフト

ホールド(保持)

ボール(球)

ウォール(壁)レベル2

ウール(羊毛:用途)

ポール(柱)

ロール(回転)

   (役割)

ファーム(農業)

オール(全て)

エール(応援)

ホーリー(聖魔法)

ホーイ(方位)

○ール(※※※※※※)

ホーム(拠点)

   (家)

   (プラットホーム)

レール(軌条きじょう

コール(こーる)



※レベル特典

二重起動







短めですが、話のキリが良いのでここで一度切ります。



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