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兄より優れた弟はちょくちょく存在する

アナホルトがオーガを討伐した頃、辺境伯邸では長男のカーノセイ ノービルが早朝から剣の稽古に取り組んでいた。

その姿は稽古と呼ぶにはあまりにも激しく、実戦さながらの迫力があった。


「フーー」とひと息入れ、剣を鞘に戻すと奥から『パチパチパチ』と拍手が上がった。

カーノセイが拍手がした方を見ると次男のヨーチナシ ノービルが「剣士みたいな中級ギフトしか与えられなかった人は大変ですね〜」と馬鹿にしたように告げ、「私の剣聖のギフトが怖いからと言って、いくら稽古しても所詮は無駄な足掻きですよ」と嫌らしく笑う。


その声を無視して再び稽古に入るカーノセイに、「わからない人だな〜。とっとと相続権を放棄して、私が次期辺境伯と認めろと言ってるんだ」とヨーチナシが怒鳴る。


それを聞いたカーノセイが「私がヨーチナシ程度を恐れている?まともに剣を振ったこともなく、メイドに囲まれてニヤつくだけの貴様を?」と笑うとヨーチナシが真っ赤になって怒り「剣聖のギフトに稽古など不要。貴様こそ、私が怖くてそんな激しい稽古をしているくせに、強がりを言うな」とカーノセイに反論した。


「私が恐れるのはアナホルトだけだ。いや、恐れると言うのも烏滸おこがましいか。出来るならアナホルトを辺境伯として、私はその家臣として盛り立てたかったが、アナホルトを恐れた誰かさんが手を回して追放したからな」と静かにヨーチナシを睨む。


「馬鹿を言うな。奴は妾腹の三男で穴掘りのギフトしか与えられなかった出来損ないだ。そもそも、兄である俺にかなうはずない。単に穴掘りなどを授かった奴が目障りだっただけのこと」と反論する。


「その理屈で言えば、弟であるヨーチナシは兄の私には決してかなわないと言うことだな」とカーノセイが笑う。





「では、どちらが辺境伯に相応しいかこの場で決めるが良い」とコートナシ辺境伯とビルクーチ婦人が現れ、「我が辺境伯は武門の家系。剣により決着をつけるが良い」と宣言した。


それを聞いたヨーチナシはニヤリと笑い「剣聖の私が勝つに決まっているが、少しくらいなら遊んでやっても良いぞ」とカーノセイを挑発する。

「先ほども言ったが、私は貴様など恐れたことはない」と剣を構えた。


「剣聖のギフトを思い知れ」とヨーチナシが力任せに剣を振るう。カーノセイがそれを冷静にかわすが、やはりギフトの差は大きく、徐々にカーノセイが押し込まれていく。

「ガハハハハ どうした口ほどにもない」とヨーチナシの攻撃が更に激しくなる。

しかし、ギリギリの所で躱し続けるカーノセイにヨーチナシのイライラが溜まり、「往生際が悪いぞ。サッサと諦めろ」と渾身の一撃を叩き込む。


「先ほど貴様は私の鍛錬を厳しいと言ったが、私にとってはこの程度の劣勢を想定した鍛錬は当たり前のこと。ここからが私の真骨頂だ」と剣を合わせて耐え忍ぶ。

すると金色の光と共に『ピコン』とカーノセイの脳内に通知音が流れた。


『ギフト保持者の覚悟が規定に達しました。【剣(✴︎)】のギフトが解放され(※不撓不屈ふとうふくつ)が追加されます』



「何が真骨頂だ。鍛錬など能力の劣る者がすること。私の持つ剣聖のギフトに鍛錬など必要ない」とヨーチナシが叫ぶと、一瞬黒い闇がヨーチナシを覆う。

そして『ピコン』とヨーチナシの脳内にも通知音が響く。

『最上級ギフトの保持条件(努力)が破棄されたことを感知しました。ギフト【剣聖けんせい】が破棄されギフト【剣逝けんせい】が解放されます』



「努力なき最上級ギフトなど唯の飾り、恐れることは無い。真の努力と技術に裏打ちされた我が剣の重みを思い知るが良い」とカーノセイが日々真摯しんしに、そして愚直ぐちょくに振り続けた一撃を放つ。



そして…


勝負は一瞬で決着を迎えた。





ーーーーーーーーー




そして天界では…


「何であんな最低級の男に最上級のギフトを与えたのよ」と女神の一人がギフトを与えた女神に詰め寄る。


「だって、あのアナホルトのお兄さんだから、そのくらいの素質はあったのよ。ヨーチナシがカーノセイ位の努力をしていれば、最強の剣聖になっていたんだから」と言い訳する。


「いくら素質があっても、最低級の人間が最上級のギフトなんて扱える訳ないじゃない。最上級ギフトの破棄なんて300年ぶりの珍事よ。ギフトは人間を楽にさせるものではないんだから」と別の女神がたしなめる。


「でも、【剣(✴︎)】の隠しギフト【剣(✴︎)】を解放する子なんて久しぶりね。しかも(※不撓不屈ふとうふくつ)まで付与されるなんて1000年振りの出来事かしら。あのカーノセイって子も目が離せないわね」

と、天界の女神達のお喋りは続いた。




ーーーーーーーーーーー



コートナシ辺境伯がカーノセイに「この領地は其方が引き継ぐことが決まった。これからは其方の思うようにするが良い」と告げる。

「ならば…魔の森の奥地で領土を開拓しているはずのアナホルトを探し出し、共に魔の森の開拓を進めます」と宣言する。


『生きている保証はないぞ』とコートナシの言葉に「いや、アナホルトであれば、今頃は我々が驚くような領土を開拓しているはずです」と魔の森の奥地に目を向けて、「アナホルトであれば必ず…」と呟いた。





※現時点のカーノセイのギフト


(✴︎)(※不撓不屈ふとうふくつ

〜剣士の隠れ最上級ギフト〜








〜ざまぁ〜をアナホルトにさせても良かったのですが、魔の森の集落と辺境伯の領地を早く繋げないと、集落が発展しないのでカーノセイにやらせました。

ついでに、カーノセイに主導権を持たせて、アナホルトと協力体制を取りやすくしています。

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