落語声劇「甲府い」
落語声劇「甲府い」
台本化:霧夜シオン
所要時間:約35分
必要演者数:最低4名
(0:0:4)
(0:4:0)
(1:3:0)
(2:2:0)
(3:1:0)
(4:0:0)
※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。
よって性別は全て不問とさせていただきます。
(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)
※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品
に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。
それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。
●登場人物
伝吉:主人公。甲府から江戸へ出てきて一旗揚げようとしたが、
浅草観音へお参りに行った際にスリに巾着をスられ、一文無しに
なってしまう。腹を空かせたあまりに豆腐屋の卯の花に手を出し
てしまう。それが彼の運命を変えるきっかけとなった。
親方:豆腐屋の親方。
卯の花を盗み食いした伝吉をすぐに役人につきださずに、訳ありだ
と見抜き、話の末に自分と同じ宗旨だと知ると、自分の店に住み込
みで働かせる。
おかみ:豆腐屋の親方の妻。
お花:豆腐屋夫婦の娘。親方が伝吉を見込んだ事と、自身が伝吉に
惚れていた事で夫婦となる。
金公:豆腐屋の店員。人間は悪くないのだが短気で、卯の花を盗んだ伝吉
を有無を言わさず引っぱたく。
ついでに言うと素直でもない。
叔父:伝吉の叔父。
1セリフのみ。
客1:豆腐屋に買いに来た客、その一。伝吉役と兼ね。
客2:豆腐屋に買いに来た客、その二。金公役と兼ね。
客3:豆腐屋に買いに来た客、その三。おかみ役と兼ね。
亭主:長屋の女房の亭主。
女房が伝吉豆腐に入れあげてるせいで毎日豆腐三昧。
だいぶ辟易している。
女房:長屋のカミさん連中の一人。
如才ない伝吉にすっかり参ってしまっている。
語り:雰囲気を大事に。
●配役例
伝吉・客1:
親方・叔父:
おかみ・客3・女房:
金公・亭主・客2・語り:
※枕は誰かが適宜兼ねてください。
枕:世の中には、合縁奇縁なんて言葉がございます。
今こうなっている、という事柄にはなんかきっかけが過去にある。
過去にそういう事があったからそれが縁となって今こうなってる。
人間の人生なんというものは、その繰り返しなのかもしれませんな。
【自分のエピソードを入れてもOKです】
縁の中には良縁もあれば悪縁もある。そのあみだくじみたいに複雑に
絡まってる中から選り取って我々は日々生きていくわけですが、
中にはこれより語ります、重ねがさねの良縁の積み重ねという場合も
あるようでございまして。
金公:この野郎ッ!何しやがるッ!
親方:おぉい金公!待ちな待ちなッ!
人様に手ェ上げるなんて乱暴な事をするんじゃねえ、バカ野郎!
金公:待ってくだせェ親方。
あっしは何も虫や癇のせいで引っぱたいたんじゃねえんで。
ここでもってあっしが商売物の桶を洗ってるってえと、桶の横から
ぬうーっと手が出やがった。
桶が化けたのかと思ったけどそうじゃねえ。
ひょいと見てみるってと、この野郎が桶の影で卯の花ァつかんで
むしゃむしゃむしゃむしゃ食ってやがる。
それであんまり癇に障るから引っぱたいたんで。
親方、これでもあっしが悪いんで?
親方:どっちが悪いとかじゃあない。人様に手ェ上げるのがいけないって
んだよ。
そこのお前さんも、そんな事をしたらぶたれたってしょうがないよ
。
なんだってこんな事しなすったんだい?
伝吉:あ、相すいません、勘弁して下さいまし。
お、おらァ腹が減ってたもんで…。
親方:いくら腹が減ってるったって、人様ん家のものをただ食べていいと
いう法は無いよ。
盗んだりなんかせずに、買ったらいいじゃないか。
お足を払ったらどうだい?
伝吉:そ、それが…あいにく、持ち合せがねえもんでございますから…。
親方:持ち合せが無い?
いやいや、卯の花なんてものは「おから」と言うくらいだ。
子供だって買えるくらいの安いもんだよ?
それが買えないってのかい?
伝吉:は、はい…一銭もないんでございます…。
親方:え、一銭もない?
そんなふうには見えないけどなあ…。
なりの拵えや口のきき方から察するに、お前さん、江戸の人じゃな
いね?
伝吉:は、はい、旅の者でございます。
親方:手甲脚絆のいでたちからしてそうだろうね。
まぁまぁ、なんかわけがありそうだ。
ここじゃ話もできないから、奥へおいで。
伝吉:えっ、あ、はい…。
親方:おぉいおい、そんなとこでしゃがみ込んじゃいけないよ。
豆腐屋の流してものは濡れてるんだから、さ、こっちへおいで。
遠慮することは無いよ。
おぅい座布団出してくれ!客だ!
おかみ:はあい、ただいま。
伝吉:あ、ありがとうございます…。
親方:いいからいいから、気にする事は無いよ。
さ、わけを話してごらん。
またその話によっちゃ、こっちもちょいと力になろうじゃないか。
伝吉:へ、へい…ご親切にありがとうございます…。
おらァ伝吉と言いまして、甲州のもんでございます。
親方:ほう、甲州の伝吉さんかい。
また遠いところから来なすったな。
俺も知り合いが何人かいるよ、
で、甲州のどこだい?
伝吉:甲府の在の生まれでございます。
小せえ時分に親父とおふくろに死に別れまして、叔父さんに引き取
られて今日までお世話になって参りりました。
けれど、いつまでたっても叔父さんの厄介になってるんじゃ申し訳
ない。
江戸へ出て一旗あげたいって相談しましたら、
叔父:おめェ、そりゃあ生易しいこっちゃねえ。
おらァ勧めたくねえが、おめえがどうしてもってんだったら反対は
しねえ。
ひとつ、死ぬ気になってやってみたらどうだ。
伝吉:ってんで、たっぷり餞別持たして、送り出してくれたんです。
途中で身延山へ上って三年の願掛けをしまして、きのう江戸へ着い
たんです。
それで、浅草の観音様が大変に繁盛してるって事を聞きまして、
一番にそこへお参りしようと向かいましたところ、途中でむこうか
ら駆け出してきた男がいきなりおらにドーンと突き当たったんです
。
その時は、なんてそそっかしい男だろうと気にも留めなかったんで
すが、お堂の前へ行って賽銭をあげようと思って懐へ手を入れてみ
たら……財布が、ないんでございます…!
親方:あ~そりゃお前さん、スリにやられちまったんだねぇ…。
ぼんやりしてるってえとそういう事になるんだよ。
江戸ってとこはな、生き馬の目を抜くところなんだ。
ぼんやり歩いてちゃいけねえ。で、どうしたんだ。
伝吉:それから途方にくれまして、ゆうべはどこへも泊まる事ができねえ
で、人様の家の軒下で夜を明かしたんです。
明るくなってまたふらふらふらふら歩きはじめたんでございますが
、なにしろ昨日から何も食べておりません。
腹が減って腹が減って、それでさっきお宅様の前を通りかかりまし
たら、あの桶の中からふわーっと煙が出てる。
あんまりうまそうだったんで思わず…悪い事とは知りながらつい盗
んで食べてしまったんでございます…!
どうぞひとつ、ご勘弁くださいまし…!
親方:そうだったのか、そりゃあ災難だったなァ…。
おい金公!ええ?見ろ!
巾着切りにやられたってんだ。気の毒な方じゃねえか。
わけも聞かねえでポカポカポカポカ張り倒しやがって。
ほんとにしょうがねえ奴だな。
謝んな!
謝んなってんだよ!
金公:【ぶっきらぼうに】
~~…ごめんなさいね!
親方:なんだお前、その謝りようは。
もっと丁寧に謝りな!
金公:【ベソをかいて】
ッ…ぐすっ、すびばせん…!
親方:今度は泣いてやがるよ…ああもういいよ!
まったく極端な奴だな。
あぁはは、まあ勘弁してやってくれ。
いや、金公は大変に気の短けぇ奴なんだが、人間は決して悪い奴
じゃねえんだ。
それで改めて聞くけど、怪我はしなかったかい?
伝吉:へ、へい、大丈夫です…。
親方:そうかい、そりゃよかった。
ところでお前さんの話の中に、身延山に三年の願掛けをしたという
のがあったね。
もしかしてお前さん、お宗旨の方かい?
伝吉:へい、おらの家は代々その、法華宗でございまして。
親方:おぉそうかい!
こりゃあ面白いねえ。いや、うちもそうなんだ。
法華の凝り固まりだよ。
おいおっかぁ、この人もお宗旨の方だとさ!
おかみ:あらまあ、ほんとに奇遇だねえ。
親方:ああ、そうだとも。
お宗旨の方が災難にあってるのを、黙って見てるわけにゃあいかね
えや。
おかみ:そうだよお前さん。
できる限りの事をしてあげなきゃね。
親方:あたりめえよ。
いや、お前さんはいいとこへ来たね。
他だったら大変な事になっちまってたよ。
へえそうかぁ……うん?ちょいと待てよ。
おいおっかあ、今日は何日だ?
おかみ:今日かい?
10月の13日…あら、お前さん大変だよ!
親方:ああ!お祖師様のご命日じゃねえか!
へええ…こりゃあますます奇遇だ。
お祖師様のご命日にお前さんがうちに来てさ、おからを盗んで食べ
たなんてな、これァお祖師様のお引き合せかもしれねえ。
うーん嬉しいねえ。
おかみ:そう言われてみるとなんだか、この方の顔がだいぶお祖師様の
ように見えてくる気がするね。
親方:ああ、大変にありがたいお顔になってきたな。
伝吉:い、いやいやいやそんな、恐れ多い事で…!
親方:見ねェ、鼻の頭のあたりから後光がぱぁーっと差してきたな。
伝吉:い、いえ、水ッ洟に朝日があたってるだけで…。
親方:あ、そうか。
まあなんにしても、腹が減ってるんだろ?
おぃおっかあ、聞いての通りだ。
飯を食わしてやってくれ。
おかみ:はいはい。あ、でもおかずがあんまりないね。
親方:まあ朝だからしょうがねえよ。
なにか適当に見つくろってやってくれ。
さ、おっかあが支度してくれるからな、向こう行って飯を食うとい
いよ。
伝吉:あ、ありがとうございます!!
そうだ、おかみさんにご挨拶しないと…。
親方:ははは、そうかい。
おいおっかぁ、ご挨拶だとよ。
伝吉:おかみさん、このたびはどうも、お世話になりまして…!
あらためて、「お鉢」にお目にかかります、伝吉と申します…!
【↑お初のところをお鉢と取れる言い方で】
おかみ:あら、わざわざいいのにねえ。
親方:はは、お堅い人なんだな。
「お鉢にお目に掛かります」って、よっぽど腹が減ってるんだね。
さあさあ、たっぷりお目に掛かってくれ。
ん?どうしたおっかあ。そんなところに付いててどうしようってん
だい?
おかみ:え?お給仕してあげようと思って。
親方:バカだね。
初めて来た家だよ。傍に付いてて給仕なんかしてみろ。
気づまりして飯が喉を通らないじゃないか。
一人にしといていいんだよ。
お鉢をあてがっておきゃあいいんだ。
それより、茶あ入れてくれ。
…おい、離れろよ。
おめえ、やっぱりなにか、男は若えのがいいってのか?
金公:親方ァー!
客が来やしたよー!!
おかみ:あら大変、もうそんな時間かい?
親方:おぉっと、茶どころじゃねえな。
こうしちゃあいられねえ。
俺たちゃ店に出てるから、お前さんはゆっくり飯を食ってな!
へいいらっしゃい!何を差し上げましょう?
客1:おう、がんもどき五つくれ!
親方:へい、まいど!
そちら様は!?
客2:豆腐おくれ!
親方:へい、どういたしましょう!?
客2:やっこで頼む!
親方:さようでございますか!
へいっまいど!
お嬢ちゃんは?
客3:おとうふくださいな。
親方:うん、なんにするんだい?
客3:お付けの実にするの。
親方:そうかい、じゃ、賽の目に切ってあげような。
そちらは?あ、生揚げね、ありがとうございます!
語り:なんてんで、朝からお豆腐屋は大変に繁盛しております。
とにかく店主の親方が変わった人でして、法華の凝り固まりという
のもあって、ご近所からは法華豆腐なんと呼ばれてる。
気性がチャキチャキの江戸っ子そのもので、強い者にはどこまでも
向かっていく、弱い者はとことん助けてやろうというような、大変に義侠心に
富んだ方でございました。
親方:ふう、まずは一息つけるな。
おう、どうだい?飯は食べたかい?
伝吉:はい!ありがとうございました!
たっぷりいただきました…!
親方:おぉそうかい!そりゃあよかったよかった。
って、おいおい、何してんだい?
伝吉:え、片そうと思いまして…。
親方:あぁいぃいぃ、いいんだよ片さなくたって。
な、おっかあ。
おかみ:そうだよ、あたしの仕事だからね。
そのままにしておいておくれ。
伝吉:いえあの、お鉢を洗おうと思いまして…。
親方:え?お、お鉢を…?
おっかあ、俺ァ言ったじゃねえか。
冷や飯は食わしちゃいけねえって。
おかみ:え?朝に炊き立てのやつを出したんだよ。
親方:炊き立て…?
確か二升五合は炊いたはずだろ?
じゃ、金公だけが食べかけたやつ、あれをそっくり食っちゃったの
かい!?
そらァまたやったねえ…。
俺もまだ食ってねえぞ?
まぁまぁ、いいよ。よっぽど腹が減ってたんだなァ。
そのお鉢もおっかあが洗うから、こっちへ来なよ。
おかみ:そうそう、うちの人とゆっくりしておいで。
伝吉:あ、ありがとうございます…!
それじゃ、失礼して…。
親方:おう、こぅちこっち。
さ、煙草を一服やるといいよ。
伝吉:あ、その、おらは煙草は飲まねえんです。
親方:そうかい。
ところで俺ァいま考えたんだが、お前さん江戸へ出てきて何かやる
といったって、これァなかなか上手くいくもんじゃない。
ちょいと口は悪いが、田舎の人ってものは江戸に出てくりゃ金が
落ちてるとでもいう風に考えてる節がある。
けどそれァとんでもねえ話だ。
なんにも知らないうちに騙されて、泥沼に潜っちまうなんという事
がよくあるんだ。
お前さんみてえに純な人だったら、やっぱり国に帰って叔父さんの
とこで一生懸命働くってのが一番いいんじゃねえかと思うけど、
どうだい?
失礼ながら、路銀はいくらか俺が出すから。
伝吉:…せっかくのお言葉に返すようでございますけども、おらァ国を
出る時に叔父さんの前で、なんとしてでも、なんとかならねえうち
は、こっちへは帰ってこねえって言い切りましたし、
それに身延山に三年の願掛けをしてきましたんで、なんとしてでも
、なんとかならねえうちは、国には帰れねえんでございます…。
おかみ:しっかり思いこんじゃったんだねえ…。
親方:うーん、そうかい…。
それじゃ、何かあてがあるのかい?
伝吉:いえ、これといってあてはねえんでございますが、芳町ってとこへ
行くと口入れ屋さんがたくさんあるって事をうかがいましたので
そこで何か奉公口を世話してもらおうと思いまして。
親方:するとまだ何も決まってねえってわけだ。
じゃあどうだい。
ものは相談だがな、お前さんさえよけりゃ、うちで働いてみる気は
ないかい?
伝吉:えっ、こちら様でございますか!?
いや、それは、もしそうしていただけるんでしたら、おらとしては
誠にありがてえ事でございます。
親方:おうそうかい!
いや、実は売り子が一人足りなくてな。
あすこにいる金公、今朝お前さんを張り倒した奴だな。
売り子があれと俺の二人きりなんだ。
店のほうはなんとかなるんだが、お得意様がほうぼうにいてな、
そこへ売りに行かなくちゃならねえんだ。
じゃ、お前さんやってくれるかい?
伝吉:へい、ぜひやらせてください!
親方:ようし話は決まった!
じゃあ伝吉、あらためてよろしく頼むよ!
おう金公、ちょいとこっちへ来い。
金公:なんですか、親方?
親方:この伝吉がな、売り子をやってくれるそうだ。
すぐに口入れ屋行って、断り入れてきてくれ。
金公:へい、わかりやしーー
親方:【↑の語尾に喰い気味に】
あぁっと!ちょいと待ちな!
おめえは乱暴だからな、妙な断り方をするってえと後に響くぞ。
いいか、「実はお頼みしていた売り子ですが、田舎のほうから親類
の者が出て参りまして、是非にと言うので売り子にいたしました。
またこの次に何かあった時にはよろしくお願いします」って、
丁寧に頼まねえと駄目だぞ。
わかったな?
金公:へぇい。それじゃ、行ってきます。
親方:うん、頼んだぞ。
おっかあ、伝吉が売り子をやってくれるぞ。
おかみ:よかったねえお前さん。
伝吉さん、よろしくお願いするよ。
伝吉:へい!おかみさん、こちらこそよろしくお願いします!
おかみ:でもお前さん、身元引受人のほうはどうするんだい?
親方:なに言ってんだ、そんなものは要りやしないよ。
俺の目に狂いはねえ、大丈夫だよ。
ところで伝吉、お前さんに断っとくが豆腐屋なんて商売はな、
これがなかなか辛い商売だ。
朝は早えし、それから夏場はまだいいけど冬場になるってえと、
水が冷てえぞ。
大丈夫かい?
伝吉:へい、そんな事は別にどうって事はございません。
親方:そうかい、まあ田舎のほうでもって苦労しているからそういう所
は苦にならねえか。
それでな、商売というのはなんでもそうだが、売って歩くとなると
売り声てものが肝心だ。
天秤棒を肩にして商って歩きながらだと、声がなかなか初めのうち
は出ねえ…というよりは出さねえほうが多いもんなんだ。
気恥しいもんだからついつい小せえ声になっちまう。
だからそういうのを吹っきって、大きな声でやらなくちゃいけねえ
。
伝吉:大きな声でですね、分かりました。
親方:でな、豆腐屋の売り声てものはおおよそ決まっているんだ。
「とぉ~ふゥ~、なまァ~あ~げェがん~もどきィ~」
と、こうやるんだが、うちのはちょいと違うんだ。
豆腐も自慢なんだが、がんもどきが他とは変わっててな、
どう変わってるかてえと、ゴマがたくさん入ってるんだ。
ゴマは体にいいからな。
だから、「ゴマ入りがんもどき」とこう売ってもらいてえんだ。
「とぉ~ふゥ~、ごまァ~い~りィがん~もどきィ~」
と、こう言って売って歩いてるとな、ほうぼうのカミさん連中が
法華豆腐が来たんだなってんで次々に飛び出して来て、商いになる
ってやつだから、わかったかい?
伝吉:へい!ゴマ入りがんもどきですね!
親方:それからな、ただ売って歩いてたんじゃ面白くないからな、
張り合いがあるように、お前さんに売上げの中から一割の取り分を
あげよう。
たとえばお前さんが一日に八十文売り上げたら、八文が取り分だ。
伝吉:あ、ありがとうございます、何から何まで…!
親方、どうぞひとつ、よろしくお願いします!
親方:おう、こちらこそよろしく頼んだよ!
そのうちにな、豆腐の作り方や商売のあれこれ細かいこと、
何でも教えてやるからな。
だから最初のうちは、一生懸命売って歩いてくれよ。
伝吉:へいっ親方!
おかみ:元気のいい声だね、これならきっと大丈夫だよ。
語り:無事に就職の決まりました伝吉、喜び勇んで次の日から売り子とし
て商売に精を出します。
もともと体は丈夫ですから、天秤棒を肩にして終日商いをして帰っ
て来ても、少しも疲れを見せません。
熱心に学ぶ性質ですから教わった事はどんどんどんどん覚えていっ
てしまう。
更には如才がないもんですから天秤棒担いで長屋へ入っていく、
、カミさん連中が洗濯してれば水汲みましょ、子供がケンカしてれ
ば仲裁して腹掛けに忍ばせてる駄菓子をあげる、
おかげでカミさん連中や子供たちに誠に評判が良い。
近ごろはもう「伝吉さんじゃなきゃダメ」「豆腐は伝吉にかぎるよ
」「伝吉豆腐だね」なんてんで、法華豆腐と言う名前の影が薄くな
っちゃうくらいでございます。
そこで面白くないのがカミさん連中の亭主たち。
女房:ほんと、いつも伝吉さんには助かってるねえ。
うちの宿六とは大違いだよ。
亭主:おいお光、また伝吉豆腐が来たのか!?
女房:そうなんだよ。
亭主:…嬉しそうな顔しやがってちきしょうめ。
そうなんだよじゃねえ、いい加減にしろよほんとに!
この町内にはなにか、魚屋はなんてものはねえのか!?
たまにはおめえ、刺身くらい食わしてくれよ!
明けても暮れてもずっと豆腐じゃねえか!
朝は何でェ、生揚げ焼いたのだった。
昼は仕事先行って弁当箱開けたらがんもどきの煮付けが出てきた。
夜に帰ってくりゃやっこ豆腐だよ。
冗談じゃねえよ、体ぱさぱさになっちまったよ!
こないだ湯に入ったら、体がふわーっと浮いたぜおい!
たまには別なもん食わしてくれよ!
女房:あら、嫌かい?
亭主:あたりめえだよ!
なに言ってやんでェったく。
女房:そう?じゃあ変えようかい?
亭主:お、何にしてくれるんだ?
女房:卯の花にするよ。
亭主:おんなじじゃねえか!
女房:なら伝吉さんをちょいとでも見習いなよ!
語り:なんてやりとりがあちこちで起きてはいるものの、伝吉本人は至っ
て真面目に日々商いを続けているわけでございます。
親方:おっかあ、俺ァ伝吉の事を自慢のように思ってるよ。
おかみ:そうだねえ、あんなに毎日一生懸命働いて…。
親方:どうだい、俺の目に狂いは無かったろ。
伝吉がうちで働き始めてから、俺ァ本当に楽ができてるよ。
それにまたあいつは気持ちがいい。
おかみ:本当にねえ…。
親方:あれから三年になるが、本当によくこれだけやってくれたと思うよ
。
金公の奴が辞めちまった時は二人っきりでどうしようかと思ったけ
どなんだ、ちっとも変わりゃしなかったね。
朝に豆腐仕込んで、店の方をきちっと支度しといて俺に任して、
あとはずっと売って歩いてる。
帰って来たら来たで、後の事もきっちりやる。
いや驚いたね、ほんと。
ああいう男はそんじょそこらにはいやしないよ。
おかみ:あたしも今まで見たことが無いよ。
本当にたいしたもんだね。
親方:ああ。
それにね、了見がいいよ。
いや、何がってな、実はゆうべ、俺ァ夜中にはばかりへ起きたよ。
すると裏のほうでざーっと水を流す音がする。
おかしいな、こんな夜中に誰が何してんだろうと思って、雨戸を
細めに開けてひょいとのぞいたら…伝吉だよ。
頭っから水を浴びながら、一生懸命に身延山にお願いをしてるんだ
。
伝吉:妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、ご当家様商売繁盛、
皆様無病息災にて暮らす事ができますように、
国元の叔父さんが長生きできますように、
一つ下がって、わたくしが立身出世できますように…!
親方:てんで一心不乱だよ。
なかなか今の若い者にはできねえ。
俺ァ嬉しくってね、涙が出てきたね。
思わず声を掛けようかと思ったんだが、信心してる所を邪魔しちゃ
いけねえと思って、そのまま寝ちまったんだ。
おかみ:ほんと、ありがたいねえ…。
親方:それでな、おっかあ。
俺ァ考えたんだが、うちのお花も年頃だ。
いつまでもうっちゃっといて、悪い虫でも付いちゃあいけねえと
思ってな。
うちはいずれ婿養子を取らなきゃいけねえ。
けど下手な奴を養子にした日にゃあ大変な事になっちまう。
そこでだ、伝吉だったら安心だと思うんだがどうだ?
おかみ:そうだね、伝吉だったら間違いないよ。
親方:おめえもそう思うかい。
あとはお花の了見次第だな。
女は女連れ、俺からじゃあちょいと聞きにくいから、
折を見ておめえから聞いてみてくれねえかい?
おかみ:お前さん、その事だったらもうとうにね、聞いてあるよ。
親方:なに、もう聞いてあるのか?
ははは、やけに手回しがいいじゃねえかい。
で、なんて言ってた?
おかみ:そりゃあもう、返事を聞くまでも無かったよ。
同じ女のあたしから見てね、お花が伝吉の事を好いているって事
は分かってた。
でも一応ちゃんと聞いてみたんだ。
そしたらやっぱりあの子、真っ赤になって俯いてさ、
畳に「の」の字なんて書いてたよ。
それで、「伝吉さんなら…」って先が言えないくらいだったね。
親方:へへへ何でェ、お花も伝吉にすっかり「ほ」の字って事じゃねえか
い。結構な話じゃねえか。
当人がいいってんなら話は早えや。
それじゃ、いい日取りを決めてな、それでーー
おかみ:ちょいとちょいとお前さん、お花がいいったって、伝吉がなんと
言うか分かりゃしないじゃないか。
親方:何をゥ!?
伝吉がどういうかわからねぇ!?
何を言ってやんでェ!
あいつなんざ、引き受けるに決まってるじゃねえか!
嫌だなんて、んな事ァ言わせるもんかィ!
冗談じゃねえや。
あいつが俺ンとこに来た時に、店先で卯の花ァ盗んで食いやがっ
て金公に張り倒されたんだ。それを俺が助けてやったんでェ!
喉元過ぎりゃ暑さを忘れるたァこのこった!
お花のどこが悪いんでェ!本当に冗談じゃねえや!
おかみ:ちょいと、お前さん…!
親方:【↑の語尾に喰い気味に】
嫌だなんて生意気なこと言いやがったらァおいッ、伝吉ッ!
伝吉ィッ!!
伝吉:へいッ!
親方、お呼びでございますか!
親方:お呼びかじゃねえ、こんちきしょう!
そこへ座れッ!
伝吉:!!?へ、へい。
親方:おゥてめェ、お花のどこが悪いってんだ!?
伝吉:!??え?え?お花さんがどうかなすったんですか?
親方:どうもこうもなすったんでねェ!
お花のどこが悪いんだ、あァ!?
俺んとこに初めて来た時ァなんだ、俺が助けてやったんじゃねえか
!
その恩をてめェ、忘れたってのか!?
伝吉:いえッ、冗談言っちゃいけません!
親方に受けた恩は、生涯おらは忘れや致しません!
親方:なに言ってやんでェ、そんな事は口が重宝だから色んなこと言えるん
でェ!
お花のどこが悪いってんだよ!
何が気に入らねえってーーー
おかみ:【↑の語尾に喰い気味で】
ちょ、ちょいとちょいとッお前さんッ!!
お待ちなさいよ、本当にそそっかしいんだからお前さんは!
ご覧なさいよ、わけもわからずにお前さんに怒鳴られて、
伝吉がオロオロしてるじゃないか。
まだあの子になんにも聞いてないだろ!
親方:!ぁ………。
っはっはっは…そうそう、そうだった。
まだ何にも話してなかったよ。
ははは…これァいけねえ、俺ァどうもそそっかしくていけねえ。
おっかあ、おめえから聞いてくれるかい。
おかみ:本当に困っちまうよ。
伝吉、驚かせてすまなかったね。
実は聞きたい事があるんだ。もし聞いたうえで嫌だったら嫌と
はっきり言っとくれ。
伝吉:へ、へい…。
おかみ:実は、うちの娘のお花なんだけどさ、まあ親の口から言うのも
なんだけど、器量は十人並みで一通りのことは仕込んである。
誠に不束な者だけど、お前さんさえよけりゃどうだろう、
お花と一緒になって、この店を継いでもらえないかい?
伝吉:えっ、お花さんとおらが!?
…。
あ、ありがとう存じます…ッ!!
さんざんご恩を受けまして、そのご恩をまだ返していないうちに
こんな結構なお話…、身に余る幸せでございます…!
おらに否やはございません。
ありがとうございます…ぜひ、お願いいたします…!!
おかみ:そうかい、承知しておくれだね。
ほらお前さん、順を追って話をすれば、こうスラスラ進むんだよ
、ね?
伝吉は承知だとさ。
親方:ッそうかあ!おっかあ良かったなァ!
よし、じゃ、あらためてよろしく頼むぞ、倅!
伝吉:はっはいッ!!
おかみ:ちょいと気が早すぎるよ、お前さん。
語り:こうして伝吉とお花は晴れて結ばれ、夫婦となりました。
以前は奉公人でしたが今度は若旦那の身、そうなれば少しくらい
楽をしようなんという不心得な気になる者もいたりするわけですが
伝吉はそのような怠け者ではありません。
さあ今度は自分の店になったんだから、前よりもなお一層、
一生懸命に働いております。
のめり込むと身を亡ぼすものに「呑む」「打つ」「買う」の三道楽
がございますが、この伝吉は一切道楽をしない。
そうなるとやはりお店にお金は溜まっていく。
親方:伝吉、あんまり働き過ぎてもいけねえ。
芝居でも見に行ったらどうだい?
伝吉:いえ、結構でございます。
おかみ:寄席とかもいいよ?
伝吉:いえ、行きません。寄席は止せ、というくらいですから。
親方:稽古事とかも面白いぞ。
伝吉:いえ、私はまだそこまでは至っておりませんので。
語り:なんてんで一生懸命にずーっと働いている。
おかげで豆腐屋はますます繁盛し、ついには横町に小さな家を一軒
買うまでになります。
親方夫婦はそこに楽隠居、悠々自適の毎日を送っておりました。
そんなある日のことでございます。
おかみ:お前さん、伝吉とお花が来ましたよ。
親方:おうよく来たな!
さあさあさあ、こっちへ入んな。
今日はもう店じまいしたのかい?
伝吉:はい、ちょっと早いですが、今日はもう閉めました。
親方:そうかそうか、いいんだいいんだ。
たまには早く閉めたってな。
あんまり働きづめになっちゃあいけねえ。
おめえは体が達者だからいいかもしれねえが、たまにはお花を連れ
て芝居でも観に行くとか、そんな事くらいはしてやらなくちゃ
いけねえよ。
伝吉:は、はい…。
実は、その…。
おかみ:おや、どうしたんだい?
親方:なんか、話でもありそうだな。
二人してもじもじしてるよ。
伝吉:っじ、実はおとっつぁんに、ちょいとお願いしたい事がありまして
。
親方:よせよおい、親子の間じゃねえか。
お願いも手水鉢もあるもんかい。
なんだい?言ってみな。
伝吉:実は五、六日ほど、暇をいただきたいんです。
親方:暇?どっか行くのか?
おかみ:湯治場とかかい?
伝吉:いえ、そうじゃねえんです。
おとっつぁんのとこへ来てから、今年で五年になるんです。
親方:五年!もうそんなになるのかぁ。
おかみ:時が経つのはほんとに早いねえ…。
親方:ああ、こっちが年を取るのも無理もねえや。
で、どうしたんだい?
伝吉:実は叔父さんには色々と手紙かなんかやったりして、こちらの近況
をおおよそは知らせていたんですが、やっぱり直に会って自分の口
から詳しい事を話したいし、それにお花を叔父さん叔母さんに
引き合わせてえんです。
親方:うんうん、なるほどな。
そりゃあもっともな話だ。
伝吉:それに今日、私がこうしていられるのは、親方におかみさん、
それから贔屓のお客様のお陰だと常日頃思っておりますが、
もう一つ、なんと言っても忘れちゃならないのが、
お祖師様のご利益だったと思うんです。
おかみ:そうだねえ、伝吉がうちに来たのも、お祖師様のお引き合わせだっ
ただろうしねえ。
伝吉:それで、身延山に三年の願掛けをしっぱなしになっているので、
願ほどきをしたいんです。
そのために五、六日ほど、故郷に行ってきたいと思うんですが…。
親方:おぉぉそうか!
いや、そういう事はな、俺が気が付かなくちゃいけなかったんだ。
すっかりおめえに甘えちまってたんだな。
おかみ:面目ないねえ、ほんと。
親方:結構な事だよ、うん。行っておいで。
ああ、店の方は休まないからな。
おめえが一生懸命やってる店だ。休んじまったらたまらねえやな。
おっかあにも手伝わさしてな。俺たちでなんとかするからよ。
それで、いつ行くんだい?
伝吉:まあ、思い立ったら吉日なんていう事を言いますから、
明日の朝早くに発とうと思います。
親方:それァまた急な話だなァ…。
まあまあいいよ、そういう事は早い方がいいやな。
おかみ:ああそうだ、明日発つ前に、いったん家に来ておくれ。
赤飯に尾頭付きくらい準備さしておくれよ。
親方:そうだぞ。
何せ、めでたい門出だからな!
そういうことだから、二人ともそうしてくれ。
伝吉:はい、ではおとっつぁん、おっかさん、明日の朝また参りますんで
。お休みなさいまし。
語り:やがてカラスカァで夜が明ける、
朝になるってえと、若夫婦二人は支度を整え、
横丁の親方夫婦の家までやってきます。
伝吉:おはようございます!
親方:おぉ来たか!
おっかあ見てみなよ!二人が支度してやってきたぞ!
まるで芝居を見てるようだよ、道行きだなあ。
さあさあさあ、こっちへ上がりな!
お膳の支度が出来てるからな!
さ、しっかり食べなよ!これから旅をするんだからな!
伝吉:はい、いただきます!
親方:おっかあなんか、昨日は興奮して寝れなかったみてえでな。
ははは、まるで子供だよ。
伝吉:いえ、ほんとにありがたいことです…!
【二拍】
すっかりご馳走になりまして…。
親方:なに、もういいのかい?
ずいぶん早いな…ってそんなに大して食べてねえじゃねえか。
伝吉:いえ、もう十分に頂戴しました。
親方:もう十分っておかしいな。
おめえが家に初めて来た時は、お鉢を空にしたじゃねえか。
もういけねえかい?
だいぶ腕が落ちたなァ。
おめえ、いっぺん立ち上がってトントントンと二・三遍くらい体を
ゆすってみなよ。上の方が少し空きができるぞ。
おかみ:なに言ってんだいお前さん。
お茶の袋じゃないんだよ。
本人がもういいって言うんだから、無理して食べてお腹でも壊し
たら困るじゃないか。
親方:まあそれもそうだな。
伝吉:おとっつぁん、おっかさん、そろそろ発ちます。
おかみ:ああ、ちょいと待っとくれ。
…これね、餞別だよ。
親方:誠に少ねえが、それで途中で二人で何か食べるといい。
それからな、おめえがこれがいいと思ったものを叔父さんへの
お土産として持って行くといいぞ。
本当は俺も会いに行きてえとこだが、年ばっかり取って口だけは
達者になったが、足の方はからっきし意気地がねえから、
申し訳ねえが甲府までは行けねえ。
そこんとこをよくよく訳を話して謝っといてくれ。
伝吉:はい…!
おかみ:そのうち、必ず江戸見物に出てくるようにって伝えておくれ。
親方:お花、向こうへ行ったら、きちっと挨拶するんだぞ。
これから先の親類づきあいにも関わるからな。
おめえだけの恥じゃねえ。俺たち夫婦、そして伝吉の恥になるんだ
。そこを忘れるんじゃねえぞ!
それじゃ伝吉、お花をよろしく頼むよ。
おかみ:気を付けて行っておいで…!
伝吉:はいッ、行って参ります!
【二拍】
亭主:おぉい皆、見なよ!
豆腐屋の若旦那の様子が違うぞ!
女房:あらやだ、綺麗に着飾っちゃって…どこかに出かけるのかい?
亭主:ちょいと聞いてみようじゃねえか。
おぉい、朝早くからどちらへお出かけだい?
伝吉:「甲府ぃ~、お参りィ~願ほどきィ~」
終劇
参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)
古今亭志ん朝(三代目)
浮世亭写楽→後の三笑亭可楽(九代目)
三遊亭圓窓(六代目)
柳家小三治(十代目)
※用語解説
・お足
代金、お金の事。
・手甲
分かりやすく言うと、昔の手首や手の甲周りのサポーター。
・脚絆
脛の部分に巻く布・革でできた被服。ゲートルとも。
・甲州
山梨県の事。
・身延山
山梨県にある標高1153mの山で、日蓮宗の総本山である久遠寺がある
。
・生き馬の目を抜く
生きている馬の目玉を抜き取るほど一瞬の素早い動作で事を行うことを言
い、他人を出し抜いてでも素早く利益を得ることを考える、ずるくて油断
のならない人にたとえる。
・祖師
この場合は法華宗(日蓮宗)の開祖、日蓮の事を指す。
・二升五合
現代換算だと大体3750g。
・芳町
かつて東京・日本橋(現在の人形町付近)に存在した花街の俗称であり、
幕末から昭和にかけて繁栄し、川上貞奴や勝太郎などの名妓を輩出した
。
・口入れ屋
奉公人などを斡旋する人を指す言葉で、現代の職業紹介所や人材派遣会社
に相当する。
・路銀
旅費。
・如才がない
気が利いていて抜け目がない、愛想がよく、細部まで手抜かりがないこと
を意味する誉め言葉。
・了見
考え、思案。
・はばかり
トイレ
・不束
能力・しつけ等が足りず、行き届かないこと。
・願ほどき
神仏へお願いした「立願」を解除すること。
これは、叶った願いに対するお礼(お礼参り)とは異なり、
叶わなかった願いや、もう不要になった願いを神仏に伝えることで、
今後の神仏への負担をなくすための行為。
・巾着切り
スリの事。