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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界侵略者は今日を生きる

作者: 筒山浦

とりあえず、今書いてる作品の1話を短編として投稿することにしました。

初投稿なので色々と拙い所があると思いますが、全力で取り組んで行きたいと思います

 時は22世紀も終わりの頃。

 人類は世界を超える技術を偶然、発見してしまった。

 元は惑星間移動のためのなんたらかんたらの技術だったらしいが、それがなんの因果か世界線を超え、異世界、と呼ばれるものにたどり着く技術となってしまった。


 そうして22世紀の人類に一時の異世界ブームが訪れた。

 当時僕は幼かったし、特に興味もなかったからよく知らなかったのだけど、どうやら異世界へのバカンス的なものが流行ったらしい。


 だがそれも今は当時と比べて下火となってしまった。

 そりゃあ自然は豊かで現代の汚れた地球や惑星に住む人間にとっては一時のバカンスにはなるだろうけど、どうしても現代技術に慣れた人間には不便だという問題があった。


 今でも異世界バカンス的なことは行われているけども、それも一部の世界だけであってほとんどの世界は違った。

 国際企業連による資源開発、と言うものがほとんどを占めるようになったのだ。


「と、言うわけだ。諸君。今回の新たに見つかった別世界、d-675についての理解は出来たかね?」


「「「「はッ!」」」」


「それは上々。では荒木主任、今回の指揮も君に任せよう。次に会うのは数年後になるだろうが、良い結果を期待してるよ」


 そうしてこれまで数回の異世界資源開発を終えたらしい上司とさらにそれよりも偉い上司が話しているのを僕はぼうっとしながら見つめる。

 僕の家庭は裕福じゃなかったし、自分の学力も酷いものだった。

 だから最低限大学にはなんとか通えたけど、就職出来た先はブルーカラー。

 死傷率が現代の職業の中でもとりわけ高く、現代科学の恩恵がほぼ受けれず、肉体的にもかなりのキツさを誇ると噂の企業において人気全くなしの異世界資源開発部門だった。


 さらに死んだ際には保険金がそれなりに出る業種なこともあって家族からも勧められ、僕はそこの新入社員として入社したのだ。


 個人的に何かとりわけやりたい職業があったわけではなかったし、将来に対しての望みもなかった。

 家族には貧しい中で大学まで出させてもらった恩もあるし、僕はここへの就職を決めた。


「では諸君。これから世界跳躍を行う」


「「「はい」」」


 そうしてなんやかんやしてるのをぼんやりと眺めているうちに異世界に行く時間になってしまった。

 次にこちらに帰ってくるのは23世紀になってからか、などとどうでもいいことを考えながら荒木主任の指示に従い、ポッドの中に入る。


 そうしてカウントと共に目を閉じた。


____________


「__ッ!」


「ああぁぁぁ!」


 急激な熱により目を開ける。

 何が起こっているのか全くと言っていいほど理解ができない。

 声の方に目を向けると荒木主任が驚いた顔でバラバラになったり、福笑いのように人としてありえない感じで引っ付けられたりしていた。

 体から彼のインプラントの部品がのぞく。だがちぎれた部品から漏電している様子はない。


「ッア!?うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ふと自分の体にも目を向ける。

 絶句し、直後絶叫した。自分の体も荒木主任のようにバラバラになったり、くっつけられたり、まるで粘土の人形になったような気分だった。

 これが熱の原因か?とにかく熱かった。熱だけが今の体を支配していた。


 何度も異世界に飛んでいる荒木主任の慌てようからしておそらく何かまずいことが起きていることは確定だろう。勘弁してくれ。


 他の同僚たちも近くに浮かんでいた。

 彼らも何が起こっているのか理解してないと言う風だった。呆然として、口をぱくぱくと動かしているのが見えた。



 ____そこで荒木主任の絶叫がピタリと止まる。



 同僚たちの視線が僕の後ろの方へと向けられる。

 今まで感じたことのない重圧を感じる。

 汗が噴き出る。同僚たちの顔が恐怖に歪む。

 なんだ?何がいるんだ?この異常はこれが原因か?ここで僕の人生は終わるのか。せめて何がいるのかだけでも見るために後ろを振り向こうとする。

 だがバラバラになった体はうまく動かない。


『誰かに愛して欲しいなら、まずは自分を愛しなさい!』


 硬い意志を持った声が、聞こえた。


『貴方には、この今日じゃなくて明日を生きて欲しいから』


 そして、僕は目を閉じる


__________


「__ッハ!?」


 土の匂いと風が顔を撫でていくのを感じてがばり、と勢いよく顔を上げた。

 今のは夢か、幻か。体をぺたぺたと触り、自分の体がバラバラになってないことを何度も確認する。


「っはぁ……はぁ……い、生きてる……?」


 そうして自分はなんとか生きている。ということを実感する。

 だが、


「うぉっ!?」


 地面についた指が水気を感じそちらへ視線を向ける。

 そこにはバラバラになった同僚たちの姿があった。

 どうやら自分以外の同僚たちはあの空間でバラバラになったまま戻れなかったらしい。

 特に荒木主任の死体の姿は酷いものだった。

 他の同僚たちは人の姿を保ってこそいるものの肋骨の部分が閉じずに外側に開き、内臓が外から見える状態で死んでいるのに対し、彼は肉から何から全てバラバラの全身バラバラ状態であった。

 自分と彼らの違いはパッとは思いつかなかった。


「そ、そうだ。一応上司に連絡……あと、地形データも見ておかないと」


 僕は近くに転がっているPDA端末を拾う。

 どうやらこっちは人と違って無事にこちらまで届けられたらしい。

 この端末には資源開発以前に行われる事前調査によって得られた簡易的な地形データや世界座標、地球との緊急連絡手段などが収められている。


 それを使って上司に連絡を入れようとしたが、


「通信不可……?」


 どうやら地球への連絡はできないらしい。

 それならばと地形データの確認をする。

 問題が起こり、資源開発の継続が困難であると判断された際、または別世界に渡ってから連絡が一度も行われなかった際に、指定された座標に帰還用ポッドが投下される予定なのだ。


 予定は3週間後で、しかも一定期間使用されなかった場合はどう頑張っても使用ができなくなり、遺棄される仕様なため、距離によっては今から移動しないと間に合わないかもしれない。そう思い、地形データも確認したのだが、


「こっちも駄目か!?地形データの不一致!?世界座標がd-675じゃないのか!?」


 ストレスで頭をガリガリと掻き毟る。

 理解が現実に追いついてきた感じがする。人の死があまりにも突然過ぎて現実感がなかったが、こうして一つずつ自分が追い詰められているのを感じると怒りと焦り、そして恐怖でどうしようもない不安感に襲われる。

 

 だが、ずっとそうしてはいられないことも分かっていた。

 大きく息を吸って一つ深呼吸をした後に、使えそうなものをカバンに入れていった。


「切り替えろ。僕。いつだって乗り越えてきただろ」


 そう言って顔を叩いて気合いを入れ直した。


 仕事は、一応しておいたほうが良いのだろう。

 言い訳は用意しておかないといけない。




________


 饐えた(すえた)匂いが酷く、足元を虫が這っていくお世辞にも食欲が湧くとは言えない環境で堅パンを皿代わりにして食事をする。

 ここ数ヶ月で慣れたものだった。

 周りの人間は笑い方が下品であまり近づきたいとは思えない。

 僕は1人でもそもそとパンに盛られた豆と根菜の炒め物と質の低いワインを流し込んでいく。


 そんな寂しい自分を哀れに思ったのだろうか。

 人が歩いてくる気配を感じた。

 視線を向けると先ほどゲラゲラと下品な笑い方をしていた一員らしく、ニヤニヤと下卑た笑みを口に貼り付けながら歩いてくる男がいた。

 後ろの奴らもそれを面白そうに眺めているのが見える。


 はぁ、またか。と思う。

 なんともイライラする顔だ。この数ヶ月間で何度も向けられた見下す人間のそれだ。

 どうやら僕は舐められやすいタチらしい。


 手には飲みかけのエールが握られている。

 ……このパターンも前にあったな。こういった奴らの考えることはワンパターンなのだろうか?


「それ以上近づかないで貰えませんか?人が苦手なもので」


「ぷっ」


 一応ダメ元でやめて欲しい旨を伝えてみるが、相手はより嘲笑の色を強くする。

 こう言った下手にでるところも舐められる原因なのだろうか?

 そんなことをぼんやりと考えていると男はこちらにその飲みかけのエールを頭からかけようとしてくる。

 ……まぁ、考えてた通りの結末すぎてあくびが出そうだよ。せめて僕の考えをこえた嫌がらせをして欲しかった。その方がまだ(おどろ)けるし、その嫌がらせに勉強になったとして対策を考えられるからだ。


「やめろよ」


「あぁ?何言ってるかわかんねぇなぁ?」


 エールの入ったコップを途中で受け止めて、頭にかからないようにし、僕にとっての最後通牒を送る。

 一応語気も強くしてみたのだが、それも相手には通用しないみたいだった。


 まぁ……この世界において僕が弱そうなのは認めるところだ。

 筋肉はないし、魔法使いや剣士のように戦える武器のようなものも見えない。

 尚且つここらの人種にも見えないとなれば絡まれやすいのも理解できる。


 でも、非力そうだからって何も対抗する手段がないわけじゃあないんだ。


「やめろって言ったよな?」


「あ?ッうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 そう言った直後に懐から銃を取り出し、コップの取手ごと相手の人差し指を撃ち抜く。

 エールや血がつかないように避けたつもりだったが顔に少し飛んでしまった。とても不快だ。不快だが、つけたままなのはもっと不快なので、服の裾で(ぬぐ)っておく


 周りの視線が僕と喧嘩をふっかけてきた男に集まる。

 男の仲間も何が起こったのか分からず、ポカンとしたままだった。


 ちょうど良い。さっさと逃げてしまおう。


「早めに医者か神官に診てもらいなよ」


 痛がってる男に一応指を飛ばした謝罪として声をかけた後にポカンとしたままの酒場の大将に迷惑料として硬貨を何枚か投げてから僕は足早に出口へと向かう。


 やはり銃は最高だ。

 昔から使われていて信頼性も高く、他の武器と比べて小さくて持ち運びや隠すのが容易でさらに仕組みが単純でメンテナンス性も高い。

 尚且つ弾の数が限られてて敵に奪われても弾切れさせれば無力化できる。


 何世紀も前から武器として最前線を張り続けるには訳があるわけだ。


 そんなことを考えてるうちに出口を抜ける。

 ようやく現実に戻ってきたのか、酒場の方からガヤガヤと声が聞こえてきたが、そんなこともう僕の知ったことではなかった。


「……また面倒ごとに巻き込まれたの?」


「ん……まぁ、はい」


 そのまま去ろうとした僕に声がかけられる。

 どうやら仕事をとりにいってた仲間の1人が僕を呼びにきていたらしい。

 そこで僕がまた絡まれ、ちょうど逃げてくるところだったので呆れ返ったらしく後ろから聞こえてくるため息に少しバツが悪くなるが自分だって絡まれたい訳じゃないのだ。


「まぁ、あなたのことだからかなり手加減してやった上でちゃんとやり返してるとは思うんだけど、それにしたって心配になるくらい絡まれるわね」


「はは、まぁ……はい。僕としても絡まれるのは不本意ではあるんですけど」


「あなた全身からぜひいじめてくださいって感じのオーラが出てるからね。そのせいだと思うわ。それを変えてみたら?」


「えぇ……そうなんですか?それに変えろって言われてもこれが素なので……」


 じゃらり、とした音を立てながら隣まで走ってくる彼女。

 魔法使いの印である宝石が旅用のローブの隙間から覗き、片手にはこれまた魔法使いのための杖が握られている。

 彼女もまた、僕と同じく商隊に雇われる護衛の1人だった。


「ん、えーとそれで、次の仕事はなんでしょうか?」


 自分でも薄々思っていた絡まれる理由を仲間にも言われて少し気まずい気持ちになったが、それは本題ではないはずだった。

 流れを変えるために本題へと話を逸らす。


「ん、まぁそうね。次の仕事は南よ。戦争をやってるらしいわ」


「南……か」


「商隊はそこで一月ほど商売をやるらしいから、私たちはその間傭兵としても働くことになるわ」


「はい、わざわざ伝えてくださってありがとうございます」


「はい、わざわざ丁寧に返してもらってありがとう。じゃあ伝えたから。出発は明日の3の鐘と共に出るから遅れないでね」


「はい」


 そうしてこの街でまだやることがあるらしい彼女と別れる。

 いつだってそうだが、商隊に属する本来の目的もあって彼女は忙しいらしい。

 僕は自分の住んでる宿の方へ向かいながら耳元に指を当てヘッドセットを起動する。


「聞いてた通り次の目的地は南らしいです。明日6時に街を出るので荷物をまとめておいてください」


 ピピッという音と共に通信が切れる。

 言葉をかける必要はないのだろうが、この世界に来てから声をかけるのはほぼ癖のようなものだった。

 言葉をかける前から街をでる準備自体はしていたのだろうが、個人的に伝えることはちゃんと自分の口から伝えたいタチであった。


「ふぅ……」


 僕は息を吐く

 そう、僕はこの世界の敵だ。それは決して忘れちゃいけない。

 命を奪うこともそれに比べたらなんと軽い罪なのだろうか。

 いずれ僕はこの世界に地球から人々を連れてくるのだろう。

 そうしてこの街の人間も、魔法使いの彼女も奴隷となるのだろう。


 でも、それまでは


 僕だってこの世界を生きる人たちの1人にすぎない。

 ただの今日のために日銭を稼ぐ商隊の一員にすぎない。


 いつかくるその日まで




 異世界侵略者は今日を生きる。

本編タイトルは『異世界侵略者は明日を生きる』となります。

投稿日時は全くもって不明ですが、書き溜めていきたいと思います

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