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第8話 『配達用魔法の開発』

「ポップくん、もう一度お願いします」


研究室で、フィリアが実験を続けていた。スライムたちが仲間になってから一週間。魔法配送会員マギウスからの依頼は増える一方だ。


「任せて!」ポップが元気よく跳ねる。「僕、フィリアさんの魔法との相性、いいみたいなんだ!」


「そうなんです」フィリアの目が輝く。「通常、保存魔法は6時間が限界なのに、スライムを媒介にすると...」


「理論的に解説させていただきますと!」リーフが跳ねながら割り込む。「スライムの体内には特殊な魔法回路があり、その共鳴率は通常の312.4%!さらに青属性のポップの場合は...」


「もう、うるさいわね」ルナが冷ややかに。「でも、確かに効果は明らかよ」


「熱い実験だぜ!」フレアも興奮気味に。


「私が記録を取ります」ミストが静かにメモを取り始める。


翔太は、仲間たちのやり取りを見守りながら、配達記録を整理していた。


その時、研究室のドアが勢いよく開いた。


「フィリア!何をしているんです!」


声の主は、魔法研究所の上級研究員。厳しい表情で室内を見回している。


「スライムと戯れて、これが研究だと?」


「これは違います」フィリアが真剣な表情で答える。「スライムの魔法増幅効果は、魔法理論の常識を覆す可能性が...」


「黙りなさい!」上級研究員が声を荒げる。「あなたには戦闘魔法の研究を命じたはず。それなのにこんな下らない...」


「下らない?」


意外にも、ポップが前に出た。小さな体には不釣り合いな、強い意志を帯びた声。


「フィリアさんの魔法は、みんなの役に立ってる。それのどこが下らないの?」


「そうだぜ!」フレアも続く。「毎日、たくさんの人が笑顔になってるんだ!」


「理論的に考えても」リーフが熱く語り出す。「実用性という観点から見れば、むしろ...」


「黙りなさい!スライムのくせに!」上級研究員が杖を振りかざす。


その瞬間、予想外の光景が広がった。


五匹のスライムが、まるで本能のように円陣を組む。それぞれの体から放たれる魔力が、美しい五芒星を描き出した。


「これは...」上級研究員が息を呑む。


フィリアも目を見開いていた。スライムたちの魔力が共鳴し合い、研究所でも見たことのない魔法陣を形成している。


「私たちには」ポップが誇らしげに。「フィリアさんの魔法を輝かせる力があるんだ!」


「熱い絆だぜ!」

「理論値を超えた現象です!」

「チームワークね」

「みんなの力を、一つに」


上級研究員は言葉を失ったまま、その場を去っていった。


「フィリアさん」翔太が声をかける。「これが、私たちの本当の強みかもしれません」


フィリアは頷いた。魔法とスライム。異なる存在が重なり合うことで生まれる、新しい可能性。


「結衆社の名に恥じない」彼女は微笑む。「本当の意味で、みんなを結ぶ力を手に入れた気がします」


窓の外では、夕陽が研究室を優しく照らしていた。彼らの挑戦は、まだ始まったばかり。


(続く)

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