第59話 『深淵からの声』
魔力の海の最深部から、新たな存在が姿を現す。
「理論的に分析させていただきますと」リーフが震える声で。「この魔力波動は、先ほどの闇の一族とは次元が...」
「うるさいわね」ルナが遮るが、その声は不安に満ちている。「でも、これは想定外ね」
深淵から現れた存在は、闇そのものとも言える姿をしていた。
『原初の闇』古のスライムたちが警戒を強める。『世界が生まれる前から存在する否定の力』
「否定の...力?」ポップが困惑する。
「そう」存在が低く響く声で語り始める。「私は"結びつき"の対極にある存在」
「まさか」シャドウが影の中で震える。「私たち闇の一族でさえ、その存在を伝説としか」
原初の闇が、ゆっくりと語り続ける。
「調和も、結びつきも、全ては幻想」その声には否定の力が満ちている。「世界の本質は、永遠の分断と孤独」
その言葉に、スライムたちの光が揺らぐ。
「違う!」フレアが叫ぶが、その声には迷いが。「オレたちは...」
「見せてやろう」原初の闇が力を解き放つ。「お前たちの"結びつき"が、いかに脆いものか」
魔力の海全体が、否定の力に染まっていく。
東西の世界との繋がりが、徐々に薄れていく。
スライムたちの純粋魔力が、力を失っていく。
そして、彼らの心にも——。
「本当に」ミストが弱々しく。「私たちに、できるのかな」
「これまでの配達も」ポップの声が曇る。「意味があったのかな」
しかし、その時。
「待って」翔太が静かに、しかし強い声で。「思い出して。私たちが見てきたもの」
フィリアも杖を掲げる。
「確かに、世界には対立がある」彼女が前に進む。「でも、だからこそ意味があるんです」
「そうだ」シャドウも影から姿を現す。「私は敵として君たちと戦った。しかし、その中で学んだ」
古のスライムたちも、光を取り戻し始める。
『対立があるからこそ』
『違いを認め合い』
『新しい可能性が生まれる』
「僕らは」ポップが少しずつ光を取り戻す。「毎日の配達で、それを見てきたんだ」
「熱い想いで」フレアが力強く。
「理論を超えて」リーフが真剣に。
「美しい調和を」ルナが優雅に。
「皆と共に」ミストが静かに。
原初の闇が、さらなる否定の力を放つ。
「無駄な抵抗だ」その声が響く。「全ては、無に帰すべき」
しかし、スライムたちの光は、もう揺らがない。
「私たちには」翔太が仲間たちを見る。「届けるべきものがある」
世界の運命を賭けた戦いは、新たな段階へと突入しようとしていた。
(続く)




