第44話 『千年の真実』
「千年前、世界には一つの魔法しかなかった」
老研究者の言葉に、事務所内は静まり返っていた。
「理論的に考察させていただきますと」リーフが慎重に。「現存する魔法史料からは確認できない事実であり...」
「うるさいわね」ルナが遮るが、その声は震えている。「でも、この感覚は嘘じゃない」
確かに、スライムたちの体が共鳴するように輝いていた。
老人は続ける。
「魔法は本来、自然と調和し、かつ制御可能な力だった。しかし、ある出来事をきっかけに...」
彼が杖を掲げると、空中に古い映像が浮かび上がる。巨大な魔力の渦。そして、引き裂かれていく世界の様子。
「大災厄」フィリアが息を呑む。「伝説の...」
「ああ」老人が頷く。「魔力暴走により、世界は東西に引き裂かれた。そして魔法も、二つの性質に分かれてしまった」
「東の自然な魔法と」翔太が呟く。「西の制御された魔法...」
「Project Unityは」老人の声が重い。「その分断を修復するためのものだった」
「でも、なぜスライムなんですか?」ポップが不安そうに。
老人は、温かな眼差しでスライムたちを見つめる。
「純粋魔力を持つ存在として」彼が説明を続ける。「あなたたちは、東西の魔法を自然に扱える。それは、本来の魔法の姿そのものなのです」
「なるほど」フレアが熱く。「だからオレたちには、両方の魔法が使えるんだ!」
「待って」メリッサが口を開く。「では、魔王軍の目的は...」
「ああ」老人の表情が曇る。「彼らも世界の統合を目指している。しかし、その方法は...」
突然、地面が大きく揺れ始める。
「警告」ミストが報告。「魔力の異常が急激に...」
フィリアの杖が強く反応する。
「これは」彼女が目を見開く。「世界を引き裂いた時と同じ波動!」
老人が立ち上がる。
「魔王軍が動き出した。彼らは、世界を一度崩壊させ...」
「新しい世界を作ろうとしている」メリッサが言葉を継ぐ。
その時、スライムたちの体が強く輝き始めた。
「僕たち」ポップが決意を込めて。「何かできるはずだよ」
「ああ」フレアが力強く。「この熱い魂に、できないことはない!」
「理論値を超えてでも!」リーフが真剣に。
「やるしかないでしょ」ルナが覚悟を決めて。
「皆さんと共に」ミストが静かに。
翔太とフィリアは顔を見合わせる。
「私たちは」翔太が静かに、しかし力強く。「"結びつき"を信じてきた」
フィリアも杖を掲げる。
「そう。だから今度は...世界を結ぶ番」
外では、異常な魔力の渦が空を覆い始めていた。
しかし、結衆社の面々の目には、迷いはなかった。
世界の真実を知った今、彼らにしかできない使命がある——。
(続く)




