第41話 『光と影の境界で』
霧の立ち込める境界線上で、結衆社の一行は足を止めていた。
「ここから先が、魔王軍の影響圏」フィリアが杖で霧を払う。
商人ギルドの護衛隊が、周囲を警戒している。しかし、不自然な静けさが漂っていた。
「理論的に分析させていただきますと」リーフが声を潜めて。「この霧には魔力が...」
「うるさいわね」ルナが制するが、表情は真剣だ。「でも、この感覚...」
突如、霧の中から影が現れる。
「よく来たな」シャドウの声が響く。「配達の邪魔をするつもりはない。むしろ...」
彼が手を広げると、霧が晴れていく。
「案内しよう。本当の依頼主の元へ」
「待って」ポップが前に出る。「村の人たちは?薬は本当に...」
「ああ、彼らにも届けられる」シャドウが不敵に笑む。「お前たちが、私たちの取引に応じるなら」
「取引?」
「純粋魔力の研究協力だ」
一同が息を呑む。
「私たちの力を」フレアが怒りを込めて。「そんな理由で!」
「考えが甘いな」シャドウの声が冷たく。「この世界の魔法体系は、歪んでいる。東西の分断、制御と自然の対立...」
「だからこそ」彼が続ける。「純粋魔力による統一が必要なのだ」
「違う!」
予想外の声が上がった。ミストが、珍しく強い口調で。
「私たちの純粋魔力は」彼が静かに、しかし確かな声で。「誰かの笑顔のため。支配のためじゃない」
その瞬間、スライムたちの体が光り始める。しかし今回は、これまでと違う輝きだった。
「この光は...」フィリアが目を見開く。
五色の光が溶け合い、霧を押し返していく。そこに浮かび上がったのは、村への道。そして待ち受ける人々の姿。
「見えた!」ポップが声を上げる。「本当の配達先が!」
「理論を超えた導きね」
「熱い道しるべだぜ!」
「皆さんの想いが...」
「くっ」シャドウが後ずさる。「まさか、純粋魔力がこんな形で...」
翔太は静かに前に出た。
「私たちの目的は、ただ一つ」
彼の声に、確信が溢れている。
「人々を、世界を、"結ぶ"こと」
護衛隊が動き出す。シャドウは一瞬、複雑な表情を見せ、そして影の中に消えていった。
「行きましょう」フィリアが杖を掲げる。「私たちの配達を、完遂しに」
霧の向こうで、村の明かりが見える。
そして、待ち受ける人々の、確かな存在が。
(続く)




