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第3話 『閃きの瞬間』

「つまり、保存魔法の効果時間は6時間」


翌朝、宿の一室でフィリアが杖を使って図を描いていた。


「魔力の消費量と維持時間のバランスを考えると、これが限界なんです」


翔太は頷きながら、自分の手帳と見比べる。


『生鮮品配送の課題:

・常温保存:2時間以内

・冷蔵品:4時間以内

・高額な保冷料金』


「でも、フィリアさんの魔法があれば...」


その時、通りで悲痛な声が響く。


「お願いです!娘の薬を届けたいんです!」


老婆が、商人ギルドの取次所の前で訴えている。


「緊急配送料を含めると金貨2枚です」


「そんな...それじゃ、一ヶ月の生活費が...」


翔太とフィリアは顔を見合わせる。


「行きましょう」


フィリアが杖を構える。翔太も立ち上がったその時、閃きが走った。


現場での経験。システム開発の知識。そしてフィリアの魔法。全てが一つに繋がる。


「フィリアさん、魔法の維持コストって、複数の荷物でも変わりませんよね?」


「ええ。同じ魔法陣なら...あ!」


フィリアも気づいたように目を見開く。


「そう」翔太が頷く。「複数の依頼をまとめれば、一件あたりのコストは下がる」


「私の魔法と...システムの効率化」


「決まりました」翔太が老婆の元へ向かう。「薬、お届けします」


「え?でも、送料が...」


「無料です」


「無料...?」老婆が困惑する。「そんなことが...」


「はい。代わりに」翔太は説明を始める。「月々、決まった額の会員料を払っていただけませんか?その代わり、いつでも送料無料で配達させていただきます」


フィリアが魔法で薬を包み込む。鮮やかな光の中、老婆の目に涙が光る。


「本当に...届けてくれるんですね」


「約束します」


翔太は確信を持って答えた。システム開発で追求していた理想。誰もが使える物流サービス。それが、この異世界で実現できるかもしれない。


「私の魔法」フィリアが決意を込めて言う。「きっと、役に立つはずです」


届けられた薬。涙する老婆。そして、二人の新たな挑戦の始まり。


この日の出来事は、やがて「送料無料革命」と呼ばれることになる、大きな変革の第一歩だった。


(続く)

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