第37話 『謎の来訪者』
創織の塔での出来事から一ヶ月。結衆社の新しい事務所は、東西の境界線上に設立された。
「はい、配達承りました!」
ポップが元気よく受付で応対している。東西からの依頼が日々増える中、スライムたちは以前と変わらぬ笑顔で働いていた。
「理論的に分析させていただきますと」リーフが誇らしげに報告。「東西間の配達依頼数は前週比178.4%増加。さらに調和魔法の伝播率は...」
「うるさいわね」ルナが溜め息。「でも、この忙しさは確かね」
「熱い日々だぜ!」フレアが興奮気味に荷物を運ぶ。
「私は配達ルートの最適化を」ミストが静かに地図と向き合う。
しかし、その平和な光景に、一人の来訪者が訪れる。
「これが...噂の結衆社」
黒いローブを纏った人物が、静かに事務所に入ってきた。その姿は、どこか不自然な影を帯びている。
「いらっしゃいませ!」ポップが笑顔で迎えるが、一瞬たじろぐ。
フィリアが即座に気付く。
「この魔力の波動...」
翔太も身構える。創織の塔で感じた純粋魔力とは違う、何か歪んだ力を感じた。
「失礼」来訪者が艶のある声で。「とある配達を依頼したくて」
「どのような...」
「純粋魔力を」来訪者が意味ありげに。「私どもの城まで」
一同が息を呑む。
「理論的に考えて、これは...」リーフの声が震える。
「魔王軍ね」ルナが冷たく。
「見破られましたか」来訪者がローブを脱ぐ。「魔王軍特使、シャドウと申します」
その姿は人の形を保っているものの、どこか歪な影のようだった。
「純粋魔力に興味を持たれまして」シャドウが続ける。「特に、スライムの皆さんの...能力に」
「断る」
意外にも、真っ先に声を上げたのはポップだった。
「僕たちの力は、みんなを笑顔にするため」
「そうだぜ!」フレアが熱く。「歪な魔力なんて、お断りさ!」
「理論的な説明は不要かと」
「話にならないわ」
「お引き取りください」
シャドウは、そんなスライムたちの反応を楽しむように微笑む。
「面白い」彼が告げる。「では、力ずくで」
その瞬間、事務所内に濃い影が広がり始めた。
「フィリアさん!」翔太が叫ぶ。
「ええ!」彼女が杖を構える。
スライムたちの体が、かすかに輝き始める。
純粋魔力が、歪んだ影と対峙する。
新たな戦いの幕開けだった。
(続く)




