第35話 『届けるべきもの』
「包囲完了しました」
制御室の扉の向こうから、冷たい声が響く。西方物流公社の精鋭部隊が、重装備で塔の最上階を取り囲んでいた。
「降伏なさい」声が続く。「純粋魔力の管理権は、我が社に」
「また管理か」フィリアが杖を強く握る。「魔法は、そんなもののはず...」
その時、スライムたちの体が、これまでにない輝きを放ち始めた。
「なんか」ポップが嬉しそうに。「分かるんだ」
「ああ」フレアが熱く。「オレたちがやるべきこと」
「理論的に申し上げますと」リーフが落ち着いた声で。「これは魔法本来の...」
「うるさいけど」ルナが優雅に微笑む。「今回は同感よ」
「皆さん」ミストが静かに、しかし力強く。「準備は?」
五匹のスライムが、制御室の中央に集まる。
「3」
「2」
「1」
「0」
「配達、開始です」
まるで何かの合図のように、スライムたちの魔力が一つに溶け合う。その光は、これまでの共鳴とは違った、より深い輝きを放っていた。
「これは!」フィリアが息を呑む。「純粋魔力の...解放?」
守護者が頷く。
「本来の魔法は、制御するものではない」
扉が破られ、西方物流公社の部隊が突入してくる。しかし、その動きは突如として止まった。
純粋な魔力の光が、制御室全体を包み込んでいく。
「こんな...魔力制御装置が、機能しない?」
「そうだ」守護者が告げる。「彼らの魔力は、本質的なもの。管理も、制御も、必要としない」
「私たちは」ポップの声が響く。
「この魔法を」フレアが続く。
「理論を超えて」リーフが力強く。
「確かに」ルナが優雅に。
「届けます」ミストが締めくくる。
光は塔の外へと広がり、街全体を包み込んでいく。
するとそこかしこで、魔力制御装置が機能を停止し始めた。
「見てください」フィリアが杖を掲げる。「魔法が、本来の姿を取り戻していく」
街中の機械生物たちが、より自然な動きを見せ始める。
工場の魔力管からは、より柔らかな光が漏れ出す。
「これが」翔太が呟く。「本当の配達」
「そう」守護者が答える。「彼らは、魔法の調和を運ぶ者」
光は、さらに遠くへと広がっていく。
東の大陸へ。
そして西の大陸へ。
本来の魔法という荷物を、確実に届けるために。
(続く)




