第32話 『塔の記憶』
「あれが、創織の塔...」
一行の前に、巨大な塔が聳え立つ。漆黒の外壁を這う無数の魔力管が、かすかな青い光を放っている。
機械生物たちは、まるで古くからの習慣のように塔の周囲を巡回していた。
「理論的に観察させていただきますと」リーフが真剣な面持ちで。「塔の構造自体が巨大な魔力循環システムを形成しており、さらにその波長が私たちの魔力と...」
「今回は続けて」ルナが珍しく促す。「この感覚、私にも分かるから」
「なあなあ」フレアが落ち着かない様子。「オレ、ここに来たことがある気がするんだ」
「私も」ミストが静かに。「懐かしい記憶が...」
「でも」ポップが困惑した様子。「僕たち、生まれてからずっと東の大陸にいたはずなのに...」
フィリアはメリッサの父の研究ノートを開く。しかし、その時。
「みんな、これを」
地面に埋もれた古い石版を見つけたのは翔太だった。表面には、色褪せた文字が刻まれている。
「"Project Unity ― 東西融合実験第一号"」フィリアが読み上げる。「"純粋魔力の具現化による..."」
その瞬間、スライムたちの体が強く反応する。まるで、長い眠りから目覚めるように、光が広がっていく。
「これは!」
五色の光が溶け合い、石版に描かれた魔法陣が浮かび上がる。そして、古い映像が空中に投影された。
『実験記録:創織の塔研究所』
映像には、東西の研究者たちが協力して研究を行う姿が映し出される。
『純粋魔力の安定化に成功。形態は流動的ながら、確かな意思を持つ生命体として...』
「まさか」フィリアが息を呑む。「これが、スライムたちの...」
その時、映像が乱れ始める。
『警告:制御不能!純粋魔力が意思を持ち始めた模様。緊急封印プロトコル...』
「僕たちは」ポップの声が震える。「実験で作られた...?」
「違う」
振り向くと、機械生物の一体が、人の言葉で話し始めた。
「君たちは、奇跡だった」
「これは」フィリアが驚く。「塔の管理システム?」
「私は、創織の塔の記憶管理機構」機械生物が続ける。「かつて、東西の研究者たちは、ここで夢を追った」
「どんな...夢を?」翔太が問う。
「魔法と機械の真の調和を」機械生物の青い光が強まる。「そして、その研究から生まれたのが、純粋魔力を持つ存在...」
しかし、その時。
「警告:侵入者検知」
遠くで警報が鳴り響く。
「西方物流公社が」ミストが報告。「大部隊で接近中です」
「急いで」機械生物が促す。「塔の中へ。そこに、全ての真実が...」
一行は、塔の扉の前に立つ。
開かれた扉の奥には、青く輝く通路が続いている。
「行こう」翔太が仲間たちを見る。「私たちの本当の姿と...この世界の真実を求めて」
(続く)




