第29話 『明かされる一端』
「ここなら、しばらく安全です」
港から離れた倉庫街。ミストが見つけた隠れ家で、一行は息を整えていた。
「みんな、大丈夫?」翔太が心配そうに。
「なんとかね」ポップが少し疲れた様子。「でも、あの光はなんだったんだろう」
「理論的に考察させていただきますと」リーフが真剣な面持ちで。「私たちの魔力共鳴は、既知の理論では説明できない現象で...」
「今回は黙らないわ」ルナが珍しく優しい声で。「私たちの本質に関わることだもの」
「なあなあ」フレアが不安げに。「オレたち、普通のスライムじゃないのか?」
「私にも、分かりません」ミストが静かに答える。
フィリアは研究ノートを広げ、必死に記録を取っていた。
「pure magical energy...純粋魔力」彼女が呟く。「東の研究所では、禁忌とされていた概念」
その時、思いがけない声が響く。
「当然ですよ。純粋魔力は、制御できないものですからね」
影から現れたのは、一人の老人。しかし、その立ち居振る舞いには、ただ者ではない威厳が感じられた。
「誰だ!」翔太が身構える。
「私は...かつての研究者です」老人が静かに答える。「東西の狭間で、真実を追い求めた者」
「真実?」
「ええ。魔法の本質について」老人はスライムたちを見つめる。「そして、あなたたちの起源について」
一同が息を呑む。
「私たちの...起源?」ポップの声が震える。
「東の魔法は自然との調和を、西の魔法は効率と制御を」老人が続ける。「しかし、本来の魔法は...」
その時、遠くで警報が鳴り響く。
「話は短く」老人が急ぐ。「あなたたち、"特別な"スライムの存在は、東西の魔法を繋ぐ鍵なのです」
「待って!」フィリアが食い下がる。「どういう意味ですか?」
「保存魔法の真髄は」老人が意味深に。「"力の在り方"を保存すること。そして、あなたたちスライムは...」
再び警報。今度は、より近くで。
「この地図を」老人が一枚の羊皮紙を差し出す。「西方最古の研究所、"創織の塔"へ。そこに...」
言葉が途切れる中、足音が近づいてくる。
「行きなさい」老人が急かす。「真実は、あなたたちを待っている」
「でも!」
「私は大丈夫」老人が微笑む。「昔の...仲間たちが来ただけです」
一行は急いで倉庫を後にする。
振り返ると、老人の姿は既に見えなかった。
「創織の塔...」フィリアが地図を見つめる。
「スライムの起源」翔太も考え込む。「そして、東西の魔法を繋ぐ鍵...」
「なんだか」ポップが小さく呟く。「僕ら、ただの配達屋じゃなくなってきたね」
「そうだな」フレアが珍しく落ち着いた声で。「でも」
「理論的に導き出される結論としては」
「うるさいわ。でも」
「皆さんと一緒なら」
全員の声が重なる。
「行こう!」
西の空が、夕陽に染まり始めていた。
(続く)




