表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/75

第2話『運命の出会い』

「すみません、この宿ってまだ空室ありますか?」


夕暮れ時の宿屋で、翔太は店主のグレッグに声をかけた。転移してから丸一日。道案内の手伝いをして得た少額の銀貨を、宿代に充てることにした。


「通貨の価値も、やっと分かってきたところだ」


彼は内心で呟く。昨日から、まずは市場調査として様々な店を回り、配送料金の相場、取引の仕組み、そして何より、この世界の物流の現状を探っていた。


「ああ、あいてるよ。一泊銀貨3枚だ」


「ありがとうございます」


銀貨を支払い、翔太は二階の一室に案内された。小さな部屋だが、窓からは街の様子が見渡せる。何より、商人ギルドの配送取次所が目の前にある。


「よし、まずは...」


手帳を取り出し、これまでの観察結果を書き出す。


『配送システムの問題点:

・高額な送料(一般人の数日分の給料)

・ギルドによる独占

・地域格差

・配送時間の不安定さ

改善案:

・効率化による...』


「うーん…。効率化するには…」


呟きながら宿の外に出ると、一人の若い女性が配送取次所から出てきた。銀色の杖を持ち、同じく銀色の髪をした知的な雰囲気の女性だ。


どうやら何かトラブルがあったようで、彼女は困ったように書類を見つめている。


「この保存魔法では...研究所の基準に」


彼女の独り言が聞こえてくる。書類を見るのに没頭しているのか、周りも見ずに歩き始めた。


その時、彼女の持つ荷物がバランスを崩す。反射的に翔太は走り出した。


「危ない!」


「え? あ...!」


驚いた様子で振り向いた女性の背後から、荷物が落下――その瞬間、銀色の杖が光を放った。


「タイムストップ」


荷物が宙に浮いたまま、静止する。


「これが...魔法?」


「はい。保存魔法の一種です」


魔法使いは優雅な動作で荷物を受け取りながら、研究者らしい探求心に満ちた目で翔太を見つめた。


「私、フィリアと申します。魔法研究所の...」


彼女は少し言葉を濁す。


「あ、今は準研究員ですが。保存魔法の実用化研究をしていまして」


「保存魔法というのは、荷物を保管できる魔法なんですか?」


翔太の物流担当者としての直感が反応する。


「はい。物品の状態を一定時間、保持する魔法です。でも...」


フィリアは諦めたように肩を落とす。


「研究所では、こんな地味な魔法は軽視されて。戦闘魔法や派手な魔法ばかりが評価される中で...」


「いや、それは違う」


翔太の言葉に、フィリアが顔を上げる。


「その魔法は、世界を変えられる可能性がある」


「え?」


「生鮮品の配送、温度管理の問題、配達時間の制約...」

現場での経験が、次々と言葉となって溢れ出る。


「それを魔法で解決できれば...」

フィリアの目が、少しずつ輝きを増していく。

二人の出会いは、偶然ではなかったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ