第26話 『未知なる海路』
「見て見て!飛魚!」
船上のデッキで、ポップが興奮気味に跳ねていた。航海を始めて5日目、スライムたちは未知の風景に目を輝かせている。
「理論的に考察させていただきますと」リーフが得意げに。「魔力を帯びた飛魚は通常の個体より32.7%飛距離が...」
「うるさいわね」ルナが溜め息。「でも、確かに不思議な光ね」
飛魚の群れが放つ淡い光は、明らかに魔力を帯びていた。
「西に近づくにつれて」フィリアが観察ノートに記録を取る。「魔力の性質が変わってきているわ」
「オレにも分かるぜ」フレアが真剣な表情。「なんつーか...固い感じ?」
「私も違和感を」ミストが静かに報告。「より...機械的な印象です」
翔太は船長から借りた海図を広げていた。メリッサの示した研究所の場所は、西大陸の東岸。しかし、そこに至るまでの情報は極めて限られている。
「ショウタさん」
デッキに出てきたフィリアが、研究ノートを見せる。
「これ、見てください」
ノートには、飛魚の魔力と保存魔法の相互作用が記されていた。
「西方の魔法は、より...産業的なんです。魔力を制御し、蓄積して...」
「まるで、機械のように?」
「はい。そして、私の保存魔法も」彼女が杖を掲げる。「本来は"力の保存"が、本質だったのかもしれない」
その時、船が大きく揺れる。
「なんだ!?」
「嵐じゃない」船長が甲板に飛び出してきた。「魔力の渦です!」
船の周囲で、海水が渦を巻き始めていた。その中心に、見覚えのある魔法陣が...。
「あれは!」フィリアが目を見開く。「首都で見た魔法陣と同じ...」
「理論的に危険です!」リーフが警告。「この魔力波動は...」
その時、予想外の出来事が起きた。
スライムたちの体が、自然と輝き始める。朝とは違う、より深い光だった。
「これ...」ポップが驚いて。
五匹のスライムの魔力が溶け合い、新しい魔法陣が形成されていく。
「西方魔法に対抗する...東方の力?」フィリアが呟く。
渦が収まっていく。しかし、この出来事は新たな疑問を残した。
「ねぇ」ポップが不安そうに。「僕たち、本当はなんなのかな」
誰も、即答できない。
「分からないことだらけだ」翔太が静かに言う。「でも」
「でも?」
「それを探りに、行くんじゃないか」
スライムたちの表情が、少し明るくなる。
「そうだね!」
「熱い謎解きだぜ!」
「理論的に解明を!」
「楽しみね」
「頑張りましょう」
フィリアは、研究ノートに新しいページを開く。
東と西。
魔法と機械。
そして、スライムたちの秘密。
全ては、繋がっているのかもしれない。
(続く)




