第25話 『西への船出』
首都キングスロードの港で、早朝の太陽が海面を染めていた。
「ねぇ、本当に行くの?西大陸って」
ポップが不安げに船を見上げる。港に停泊する大型帆船は、彼らがこれまで見たこともないほど巨大だった。
「理論的に分析させていただきますと」リーフが慎重に。「西大陸までの航海は約12日間。気象条件と海流パターンから、成功率は...」
「うるさいわね」ルナが遮るが、その声には普段の冷たさがない。「でも、今回は私も少し不安ね」
「なあなあ」フレアが熱さを押し殺したような声で。「西大陸って、魔法が違うんだろ?オレたち、大丈夫かな」
「私が情報を集めてきました」ミストが静かに報告を始める。「西大陸の魔法は、より...工業的だそうです」
翔太は黙って地図を見つめていた。首都の上空には今も、あの不気味な魔法陣が浮かんでいる。
「行くしかないわ」
フィリアが強い口調で言った。彼女の瞳には、研究者としての探究心と、裏切られた者としての怒りが混じっている。
「保存魔法が、どんな力を秘めているのか。そして、なぜ研究所は...」
その時、港に馬車が到着した。
「お待たせしましたわ」
メリッサが降り立つ。しかし、その表情には普段の余裕がない。
「これを」彼女が一枚の古い羊皮紙を差し出す。「西大陸の、とある研究所の場所よ」
「どうして、あなたが?」フィリアが訝しげに。
「私にも、知りたいことがあるの」メリッサの目が鋭くなる。「なぜ西大陸の勢力が、東の魔法に介入するのか」
船の汽笛が鳴る。出港の時間が近い。
「みんな」翔太が仲間たちに向き直る。「強制はできない。これは配達とは違う、危険な旅になる」
静寂が流れる。そして...。
「えへへ」ポップが元気を取り戻したように笑う。「そんなの決まってるじゃん!」
「そうだぜ!」フレアが熱く。「熱い冒険、待ってるぜ!」
「理論的に考察すると、この旅には重要な意味が...」
「黙りなさい。でも」ルナが珍しく微笑む。「私も行くわ」
「皆さんと一緒に」ミストも静かに、しかし確かな声で。
フィリアは、スライムたちの決意に目を細める。
「私の研究は」彼女が杖を握り締める。「みんながいるから、輝ける」
出港の二度目の汽笛が響く。
「行きましょう」翔太が微笑む。「新しい配達の形を、探しに」
メリッサは、そんな彼らの後ろ姿を見つめていた。
「気を付けて」彼女は小さく呟く。「西大陸は、私たちの想像以上に...危険だから」
朝日に染まる海原に、白い帆が広がっていく。
結衆社の新たな冒険が、今、始まろうとしていた。
(続く)




