第24話 『見えない敵』
「これが、魔力制御装置...」
フィリアが研究所から入手した図面を広げる。円形に並んだ魔法陣が、まるで網のように街全体を覆う仕組みが描かれていた。
「この装置が、街の魔力を制御してるってこと?」ポップが不安そうに。
「理論的に分析させていただきますと」リーフが真剣な表情で。「これは単なる制御ではなく、特定の魔法だけを選択的に...」
「うるさい...と言いたいところだけど」ルナが珍しく落ち着いた声で。「今回は説明して」
「保存魔法を、狙い撃ちにしてるんだな?」フレアが怒りを込めて。
「私が調べたところでは」ミストが静かに報告。「装置の設置は、つい最近のようです」
翔太は、事態の整理を試みていた。
なぜ、研究所は禁止されていた装置を?
なぜ、保存魔法だけを?
そして、なぜ今...?
その時、事務所のドアが開く。
「お邪魔するわ」
メリッサが入ってくる。しかし今回は、いつもの優雅さはない。
「時間がないの」彼女が切り出す。「あなたたちに、話しておくことが」
全員が耳を傾ける。
「保存魔法には、もう一つの力があるのよ」
「え?」フィリアが目を見開く。
「それは...」
しかし、その時。突然、街全体に強い魔力の波動が走る。
「うっ!」スライムたちが体を震わせる。
「みんな!」翔太が駆け寄る。
「大丈夫...かな」ポップが弱々しく。
「くそっ、こんな魔力で...」フレアが歯を食いしばる。
「理論値を...大きく超えています」リーフが震える声で。
「耐えましょう」ルナが必死に。
「皆さん...」ミストも苦しそう。
フィリアが杖を掲げる。しかし、魔法が満足に発動しない。
「こんな...」
「やはり、間に合わなかったか」メリッサが悔しそうに。
その時、思いがけない声が響く。
「面白い実験データが取れましたね」
研究所の上級研究員が、皮肉な笑みを浮かべて立っていた。
「あなたたち!」フィリアが怒りの声を上げる。
「フィリア。お前の保存魔法の研究、実は大変参考になった」
「何ですって?」
「保存魔法は、実は"力の保存"にも応用できる」上級研究員の目が鋭くなる。「例えば...魔力の制御にもね」
「まさか」メリッサが声を震わせる。「あなたたち、西大陸の...」
言葉が途切れる中、街の上空に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
研究所の仕業ではない。
もっと大きな、見えない力の存在。
「行きましょう」
意外にも、翔太が静かに立ち上がる。
「え?」
「配達です」彼は微笑む。「待っている人がいる。それは、変わらない」
スライムたちの体が、わずかに光を放つ。
「そうだよ!」
「熱いぜ!」
「理論値なんて関係ない!」
「やるだけよ」
「はい」
フィリアも、杖を握り直す。
「保存魔法の真の力...必ず見つけ出してみせます」
窓の外では、不気味な魔法陣が首都の空を覆っていた。
しかし、結衆社の面々の目には、迷いはない。
これが、新たな物語の始まり。
そして、本当の戦いの幕開けだった。
(続く)




