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第23話 『動き出す歯車』

「なんだか様子が変だよ」


首都での配達を始めて一ヶ月。ポップが不安げに空を見上げていた。


「どうした?」翔太が声をかける。


「魔力の流れが...」フィリアも同じことに気付いていたようだ。


「理論的に分析させていただきますと」リーフが慎重に。「街全体の魔力濃度が、通常値より23.7%低下しており...」


「うるさいわね」ルナが遮りかけて、しかし口をつぐむ。「でも、今回は同意見よ」


「俺も感じるぜ」フレアが珍しく真剣な声で。「なんか...重たい空気」


「私が調べてきます」ミストが静かに姿を消す。


翔太は地図を見直していた。確かに、最近の配達は妙に手間取ることが多い。まるで誰かに...。


その時、事務所のドアが開く。


「困っているようね」


メリッサが、いつもの優雅さで入ってくる。しかし、その表情には焦りの色が見えた。


「実は、警告しに来たの」


「警告?」


「魔法省が動き出したわ」


フィリアが息を呑む。


「まさか...封印令が?」


「ええ」メリッサが頷く。「特定の魔法使用を制限する法令。表向きは"魔力の安定化"が目的だけど」


「保存魔法も、対象に?」翔太が問う。


「そうはさせない」


振り向くと、グランヴィルが立っていた。


「商工会議所も、黙ってはいませんよ」老紳士の声には力が込められている。「保存魔法は、もはや首都の生活に欠かせない」


「でも」メリッサが続ける。「魔法省の背後には、もっと大きな力が...」


その時、ミストが慌てて戻ってきた。


「大変です!魔法研究所が...」


言い終わる前に、街全体に魔力の波動が走る。スライムたちの体が、わずかに震える。


「これは」フィリアの顔から血の気が引く。「魔力制御装置...研究所が禁止していたはずの」


「始まったわね」メリッサが呟く。


翔太は事態を把握しようとしていた。魔法省、研究所、そして商人ギルド。それぞれの思惑が、目に見えない糸のように絡み合っている。


「どうする?」ポップが不安そうに。「僕たち、まだ配達続けられる?」


「当たり前だ!」フレアが熱く。「このくらいの魔力低下、なんてことね!」


「理論的に対策を...」


「黙りなさい。でも」ルナが真剣な表情。「何か、裏がありそうね」


「調査を続けます」ミストが静かに。


翔太とフィリアは顔を見合わせる。


「私たちの配達は」翔太が静かに、しかし強い声で。「誰にも止めさせない」


フィリアも杖を握り直す。


「魔法には、魔法で答えましょう」


メリッサとグランヴィルは、そんな彼らの様子を見つめていた。


首都の空に、重たい雲が垂れ込めている。

まるで、これから起こる嵐を予感させるように。


(続く)

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