第14話 『おとりの配達』
「作戦開始」
早朝の街はまだ薄暗い。ポップがいつもの配達ルートで出発する。荷物を背負った青いスライムの姿は、もう街の風景として馴染んでいた。
「本当に来るかな?」ミストが通信魔法で心配そうに。
「来るさ」翔太は自信を持って答えた。「商人ギルドも、もう我慢の限界のはず」
事務所では、翔太とフィリアが地図を広げていた。街のあちこちに配置された仲間たちから、次々と報告が入る。
「商人ギルドの見張り、いつもの場所にいるッス」リーフが分析する。「行動パターンから計算すると、確率は94.3%で...」
「うるさいわね」ルナが制する。「静かに見張りなさい」
全て、予想通りの動き。
「そろそろかな」
翔太が呟いた時、最初の一手が打たれた。
「おい、通れないぞ!」
ポップの行く手に、突然の障害物。"偶然"倒れた荷馬車が道を塞いでいる。
「困ったなぁ」
ポップは、どこか楽しげに跳ねる。
「なら...遠回りするしかないよね!」
スライムが別路地へ消えていく。「追いかけてきました」ミストの静かな報告。
作戦は順調に進む。おとりのポップが敵を誘い出し、その間に...
「フレア、ルナ、行って!」
本命の配達部隊が、別ルートで出発する。荷物を最小限に抑え、フィリアの新開発の軽量化魔法で、スピードを上げていた。
「熱いぜ!」フレアが興奮気味に。
「ちょっと、声が大きいわよ」ルナが溜め息。
「待て!」
追っ手が気づいた時には遅い。二匹のスライムは、市場の路地を巧みに抜けていく。
「くそ、分断する気か!」
追っ手は混乱に陥る。どちらを追えばいいのか...
「リーフ、状況は?」翔太が通信魔法で確認する。
「計算上、成功率96.5%です!このまま...あ」
「どうした?」
「理論的な想定外の事態が...!」
市場の反対側から、武装した集団が現れる。明らかにプロの冒険者たちだ。
「まずい」フィリアが杖を構える。「この戦力は想定外...」
しかし、その時。
「まあ、落ち着きなさい」ルナが冷静に指示を出す。「私たちには、"保険"があるでしょう?」
市場の露店から、次々と店主たちが飛び出してきた。
「うちの野菜売り場、通っていいよ!」
「裏道なら知ってるぜ!」
「この路地を使いな!」
予想外の援軍に、冒険者たちが戸惑う。
「理論値を超えた展開です!」リーフが興奮気味に。
「うるさいわね」ルナが微笑む。「でも、今回は特別よ」
「やったよ!」ポップの元気な声が通信に響く。「第一目標、無事配達完了!」
続いて、次々と報告が入る。
「こっちも上手くいったぜ!」フレアから。
「計画通りね」ルナから。
「予想的中です!」リーフから。
「無事完了しました」ミストから。
作戦は、見事に成功した。
翔太とフィリアは顔を見合わせる。きっと商人ギルドは、まだまだ手を緩めないだろう。
でも、彼らには確かな味方がいる。
「さて」翔太は立ち上がる。「次は、集めた証拠を使って...」
反撃の準備が、始まろうとしていた。
(続く)




