第11話 『雪山越えの緊急配達』
「雪山の向こうの村から、依頼です」
事務所にかかってきた通信魔法の声は、切迫していた。
「解熱薬が足りないんです。この大雪で、商人ギルドの馬車も通れなくて...」
翔太は即座に地図を広げる。目的地までは険しい山道。通常なら二日以上かかる道のりだ。
「こんな極寒でも、配達できるって証明しろってことね」フィリアが呟く。「メリッサさんの仕掛けた試練」
通信魔法の向こうで、子供の咳が聞こえる。
「僕が行く!」ポップが即座に飛び出そうとする。
「待ちなさい」ルナが冷静に制する。「この気温じゃ、一人じゃ危険よ」
「理論的に分析させていただきますと」リーフが真剣な表情で。「気温マイナス15度、視界10メートル未満。成功率は...」
「黙れ!」フレアが熱く叫ぶ。「計算なんかより、とにかく行くしかねぇだろ!」
「皆さん」ミストが静かに前に出る。「私に、考えがあります」
全員が耳を傾ける。普段は控えめなミストが、珍しく積極的に意見を述べる。
「私たち、一人一人は小さな力かもしれない。でも...」
その時、ミストの体が淡く光り始める。
「昨夜の魔力共鳴を、もう一度」
「そうか!」フィリアの目が輝く。「スライムたちの力を一つに...!」
五匹のスライムが円陣を組む。それぞれの色が溶け合い、新しい魔法陣が形成されていく。
「僕の冷気耐性!」
「オレの体温!」
「理論的な航路計算を!」
「安定性の確保を」
「そして...私の霧による防御を」
フィリアの杖が共鳴する。
「これが、私たちの本当の姿」
結衆社の面々が息を合わせる。まるで一つの意思を持つかのように。
「行きましょう」フィリアが杖を掲げる。「みんなの力で、必ず届けます」
吹雪の中、光の帯が伸びていく。スライムたちの魔力が溶け合い、フィリアの保存魔法が包み込む。完全な調和。
翔太は、通信魔法を通して状況を見守る。
一時間...二時間...。
時折、通信が途切れる度に、全員がひやりとする。
「気温が下がってきました」
「風が強くなってきたぜ」
「高度1200メートル地点」
「視界、悪化」
「しかし...前に」
そして——
「届きました!」
フィリアの声に、続いてスライムたちの歓声が響く。
「やった!」
「熱い成功だぜ!」
「理論値を超えました!」
「完璧ね」
「皆さん、ありがとう...」
事務所に歓声が上がる。と、その時。
「さすがね」
振り向くと、メリッサが立っていた。
「これで証明できたかしら?結衆社の本当の力が」
「はい」翔太が答える。「私たちは、どんな試練も乗り越えます。みんなの力で」
メリッサは深いため息をつく。
「首都で、もっと大きな試練が待っているわ」
「覚悟はできています」
「そう」彼女が微笑む。「じゃあ、次は本物の戦いを」
その言葉が意味するものは、まだ誰にも分からない。
ただ、結衆社の面々には確信があった。
どんな困難も、この仲間となら——
(続く)




