第10話 『評判の広がり』
「すごい!スライムさんたちが空を飛んでる!」
市場の通りで、人々が空を指さしていた。ポップが新しい配達魔法の実験中で、短距離なら空中移動が可能になっていた。
「へへ、見てて!」ポップが嬉しそうに。「この高さなら安全だよ!」
「気を付けろって!」フレアが心配そうに。「まだ実験段階なんだぜ!」
「理論的に申し上げますと」リーフが跳ねながら。「現在の成功率は92.7%で、さらに風向きの影響を考慮すると...」
「うるさいわね」ルナが溜め息。「でも、確かに成長したわ」
「私が記録を取っています」ミストが静かにメモを取る。
事務所では、翔太とフィリアが新しい配達記録を確認していた。魔法配送会員の数は100人を超え、依頼は日々増加の一途を辿っている。
「この調子だと」翔太が地図を広げる。「もうすぐ配達範囲の拡大も考えないと」
「はい。でも...」
フィリアが少し心配そうな表情を見せる。スライムたちの能力は確実に成長しているが、それでも限界はある。
その時、事務所のドアが開く。
「大変です!」
市場の八百屋が息を切らして駆け込んでくる。
「隣町で大雨が降ってるらしいんです。せっかくの野菜が腐っちまうって!」
翔太は即座に地図を広げる。フィリアも杖を構える。
「みんな、準備を!」
「了解!」
「熱い仕事だぜ!」
「理論的な最適ルートを...」
「急ぎましょう」
「私が後方支援を」
その時、思いがけない声が響いた。
「あら、大忙しのようね」
優雅な声の主は、エレガントな装いの女性。商人ギルド副総裁、メリッサ・ヴァンドール。
「こんな田舎の配達屋が、随分と評判になってきたようですわ」
場の空気が一瞬で張りつめる。
「まさか」メリッサが意味ありげに微笑む。「首都進出なんて考えていません?」
「!」
「冗談よ」彼女は軽く笑う。「でも、その前に...」
彼女は立ち去り際、低い声で告げた。
「少し、試させていただきますわ」
静寂が流れる中、八百屋が小さく呟いた。
「大丈夫なのか...?」
「はい」フィリアが杖を握り直す。「私たちには、守るべき人たちがいます」
「そうだよ!」ポップが元気よく。「僕たち、みんなの笑顔のために頑張ってるんだ!」
「熱い想いは誰にも負けねぇ!」
「理論的勝算は十分です!」
「やるだけよ」
「全力を尽くしましょう」
翔太は、仲間たちの決意に頷く。
商人ギルドという巨大な存在。そして首都という大きな目標。
でも今は、目の前の依頼に全力を。
それが結衆社の誇りだから。
外では雨が降り始めていた。
これから向かい風は強まるだろう。
それでも、彼らは前に進む。
(続く)




