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3話 飛行船で出発

「第一試験の結果を発表する! 受験生は各自、この掲示板で受験番号を確認するように!」


試験官がそう告げると、広場中央に設置された巨大な掲示板に、受験生たちの番号が次々と表示され始めた。


人々は一斉に駆け寄り、それぞれ自分の番号を探す。合格を見つけて歓喜の声を上げる者もいれば、肩を落として項垂れる者もいて、明暗がはっきりと分かれる場面だ。


「受験番号……ええと、自分は……」


ハルは人ごみの中、必死になって「3271番」を探す。先ほど受験票を見直したばかりなのに、緊張で頭が真っ白になっていた。しかし掲示板の下のほうで、その数字を見つけた瞬間、思わず膝から力が抜けそうになる。


「合格……してる……!」


声が震える。地味な能力だと馬鹿にされながらも、測定器の記録上ではそれなりの結果が出たのだろうか。


いずれにせよ、第一試験を無事に通過できたのだ――そう実感すると、誰かに肩をバンッと叩かれた。


「おー、お前! 合格したのか? そりゃおめでとう! ラッキーだな!」


振り返ると、金髪を後ろでくくった少年・ルークがニヤリと笑っている。ルーク自身も合格者のリストを確認してきたらしく、「俺の番号もあったぜ」と胸を張った。


続いて、賑やかな声が背後で響く。


「私もあったよー! イオ・トールノ、ちゃんと合格してた! ほんとによかったよー!」


元気いっぱいの少女・イオが弾む足取りで近づいてくる。雷の力を盛大に見せつけていた彼女も第一試験を通過したようだ。


「みんなも合格してたんだね……おめでとう!」


そこへ、眼鏡をかけたヴェルンも合流する。彼もまた合格を果たしたらしく、「番号が載っていたときは心臓が止まるかと思ったよ……」と胸を撫で下ろす。


ヴェルンは静かにハルへ向き直り、柔らかく微笑んだ。


「ハルさん、本当によかったですね。さっきは助けてもらってしまって……同じ合格者として、これからもよろしくお願いします」


「こちらこそ。まだ先は長いけど……お互い頑張ろう」


ハルは素直に喜びを分かち合う。まだ第一試験を突破しただけだが、今はとりあえず無事合格できたことを噛みしめたかった。


そんな中、ルークが辺りを見回しながら呟く。


「しかし、あのヒュレグ・エルヴェインとかいうヤツ……やっぱ余裕の合格だな。あんな“光の剣”見せられたら、そりゃ落ちるはずないか」


掲示板の近くには、ふんぞり返るように立つ青髪の少年ヒュレグがいた。

話しかける者もいるが、そのたびに「貴様ごときが」と冷たくあしらうので、すぐにみんな退散するのだった。その傲慢な態度は相変わらずだ。


「あの人、相変わらず自信満々だね……」とイオが半ば呆れたように首を振る。


さらにもう一人、銀髪のロングヘアで凛とした雰囲気を漂わせるアリア・シルヴァリーフの姿もあった。彼女は高い評価を受けていたとあって、合格は当然という風情で結果を確認している。風を纏う槍の使い手で、名門シルヴァリーフ家の血筋も相まって、周囲から“学院のエリート候補”と目されていた。


ルークが「ま、ともあれ第一試験は突破ってわけだ。次は何すんのかな~」と気楽そうに呟いたところ、広場に大きな魔法音声が響く。


「このあと、第二試験会場への移動を行います! 合格者は指定された集合場所へ移動してください!」


その声に合わせて、受験生たちが再びざわめき始める。ハルたちも自然と流れに乗り、広場の奥へ向かって足を運んだ。


***


広場の端には、巨大な飛行船が何隻も停泊するドックが並んでいた。


魔力の結晶が帆代わりに埋め込まれ、船体全体に飛行魔法陣が施された荘厳な造りに、ハルはただ圧倒されていた。


「えっ、まさかこの飛行船で……?」


イオが期待に満ちた声を漏らすと、近くにいた試験官がマジックメガホンを使って説明する。


「第二試験は学院から離れた“ラケシア島”で行う。そこは学園直轄のフィールドだ。各自、飛行船に乗り込むように。装備や物資は最低限のみ許可されるから、乗船前に必ず点検を受けるように!」


このアナウンスに、受験生たちからどよめきが起こる。“ラケシア島”という地名を耳にするだけでピンとくる者もいるのか「あの島って危険なモンスターが多いんだよな……」などと、不安と期待が入り混じった声が広がる。


「ハル、なんかワクワクしない? 空飛ぶ船に乗れるんだよ!」


イオは完全に遠足気分だ。彼女の目はきらきらと輝いている。


一方で、ヴェルンが少し真面目な顔をして言った。


「でも、無闇に浮かれていると痛い目を見るかもしれない。去年の試験ではいろいろと問題が起きたって噂だし……」


(いろいろと問題が起きた……?)


ハルも胸のあたりにざわつく不安を覚えながら、飛行船へと続く列に混ざった。


***


同じ頃、広場から少し離れたテントでは、学院の教師陣が合格者リストをチェックしていた。


「ヒュレグ・エルヴェイン……やはり家柄も実力も申し分ないわね。早くもトップ候補かしら」


スーツ風ローブを纏う女性教師、エリザ・ハークウィックが書類を読みつつつぶやくと、横にいる中年の男性教師マティアス・ラスコレインは鼻を鳴らす。


「ふん、態度こそ大きいが、実力には違いないだろう。学院の看板にできる人材なら歓迎だが……」


エリザは続ける。


「それからアリア・シルヴァリーフ。名門の血筋らしく、これも文句なしの上位合格ね」


マティアスは書類をめくり、「ふうん?」と顎髭を撫でる。


そこには「ハル・アスターブリンク」の名があり、彼は怪訝そうな表情を浮かべた。


「こいつはあの、笑い物になっていた1メートルテレポートの受験生か……なぜこんなのが残ってるんだ?」


「第一試験は魔力測定の数値で機械的に判定しますから。意外と魔力総量が多かったのかもしれません。あるいは測定器の誤作動か……でも記録上は問題なかったわ」


「ま、どうでもいいがね。次の試験からはごまかしはきかん。ヤツみたいなのはすぐに脱落するだろう。踏破力も戦闘力もない能力者は生き残れん」


マティアスは呆れたように鼻を鳴らす。


「しかし、今年も外部フィールドで試験をやるとはな……去年のこと、まるで忘れてるのかね、グレゴリ校長は」


「"受験生狩り"の一件ですね……」


エリザは眉をひそめる。


「"黒い化け物"に襲われたって証言こそあったけど、結局あれが人為的な魔法生物なのか、モンスターなのか、去年は何もわからずじまい。重傷者が相次いで、それが原因で諦めた受験生も多数……」


エリザの声には苦々しさが滲む。


「校長は『危険を乗り越えるのも実力のうち』などというが、今年また同じような事件が起きたらどう責任をとるつもりなのかね……まあ、今更言っても仕方がない。また変な怪物が出ないよう願うだけだな」


マティアスは気だるそうに背を伸ばし、椅子を軋ませた。

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