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夫に愛されない公爵夫人はブラコン姫騎士と王国を守ります!  作者: ゆきんこ


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30/33

#30 最期の希望

「な、なによコレ?」


 気がつくと、私の身体は礼拝堂の宙に浮いていた。

 魔物に破壊された天井のステンドグラスと採光窓の間に浮遊して、ウレルに手を握られる青白い顏のシャーロットを見下ろしている。


 バッコスの魂変換の術で魂を元に戻され・・・ていないのはなぜ⁉


 確かバッコスの話では、私の魂はディアナに吸収されるって言ってなかった⁉

 私は焦って口に手を当てた・・・つもりだけど、身体が半透明で口に手が当たらない。


(わーん、これじゃまるでユーレイみたい!

 足もとがフワフワして、身体はスカスカで、心もとないことこの上ないッ‼)


 慣れない浮遊体を腰からグルッと動かして周囲を見渡すと、すっかり礼拝堂の暗い魔物の闇は消えていた。そして祭壇の前に視点を変えた私の目に、バッコスがうつ伏せに倒れているのが見えたの。


 しかも、背中からウレルの剣が生えている。


 ゴクリ・・・。

 これってつまり、ウレルがバッコスを倒したってことでOK?


 バ、バンサーイ‼


 (きっと)私が黒魔法石を壊したことで隙ができて、ウレルがバッコスの背中に剣を突き立てたのよ(たぶんね)‼


 クゥー、さすがウレル! 私の推しで旦那さまッ‼

 その勇姿をぜひともリアルタイムで見たかったわ!


 視聴者の皆さま、誰でもいいから見逃し配信くださいッ‼


 頭が完全にハイになった私の目に、苦しそうな表情を浮かべるウレルが映る。

「私は心配ないわよ」って声をかけられない、今の自分が情けない。


 でも本当に、誰かマジメに教えて欲しい。

 いったいぜんたい、何がどうしてこうなっちゃったの⁉

 

 ※

 

 やがて、シャーロットと同じように倒れていたディアナとリリィが、意識を取り戻してゆっくりと動き出した。


「頭が・・・。」


 リリィが呻きながら上半身を起こすと、ディアナが自分の身体をしっかりと掴みながら興奮した声を上げた。


「この足は人間ッ⁉・・・私は、元の姿に戻れたのですね!」


 んんんッ?


「姫殿下さま、ご無事でしたか⁉

 私たちはてっきり、異世界に行ってしまわれたのだと思っていました。」 


 ウレルが急いでディアナに駆け寄ると、ディアナは恥ずかしそうに頬を赤く染めて顏を両手で隠した。


「違います。私はずっと、あなたたちのすぐ近くにおりました。」

「エッ、でも姫殿下にはリリィが入っていて、リリィにはシャーロット、シャーロットにはユイが入っていたのでしょう?

 今までどこにおいでになられたのですか⁇」


 ウレルが首をひねると、ディアナは耳まで真っ赤になって上ずった声を出した。


「ああ・・・私は・・・馬のブラックになっていたのです!

 もうッ、恥ずかしいッ!

 ウレル公爵、ヘリオスさまにだけは絶っ対に秘密にしてくださいねッ‼」


 ええええええええええええ‼

 じゃあ私はずっと、ディアナさまの背中に乗っていたの⁉


 恐れ多すぎて吐きそう!

 浮遊体だから吐けないけども‼


「姫殿下は問題ないようだな。―――リリィは喋れるか?」

「・・・大丈夫だ。心配をかけてすまない。」


 頭を軽く振ると、リリィは差し出したウレルの手は借りずにスクッと立ち上がった。

 うーん、男前!


 ディアナの時は思わなかったけど、この万人受けする愛くるしい姿に男勝りな物言いの不協和音よ。

 ギャップ萌えにトゥンクしちゃう♡

 

「私より、ユイは? シャーロットと入れ替わってしまったのか?」

「今はまだ眠っていて確かめる術がありませんが、おそらく・・・。」


 リリィは舌打ちをして額に片手を押し付けた。


「もし、ユイの魂が飛び出したあと、自分の肉体に帰れないとすれば、異世界に帰れずにどこかに彷徨っているのかもしれんな。」

「・・・。」


 ウレルは押し黙ってうつむいてしまった。

 二人が、私を心配していることが、心苦しい。


(オーイ、オーイ!)


 って叫んでも、誰の耳にも私の声は届かないようだった。


 それはそうよね。

 だって、私はもともと異世界の人間なんだもの。


 しかも、収まる身体がこちらに無いから、魂だけが分離しているってことでしょ?

 クッソ、バッコスのやつ、最後まで憎たらしいことしてくれるわね!


 ウレルの剣に刺さっているバッコスを睨みつけても、あとのまつり。

 誰の目にも留まらない私は、このままユーレイみたいにこの世界を浮遊するしかないのよね。


 ウッ、急に現実が牙を剥いて襲いかかってくるようでツライわ。

 その時、シャーロットの白い頬に生気が戻り低く呻いたの。


 すぐにシャーロットの元へ駆け寄ったウレルが、切なげに眉根を寄せた。


「シャーロット・・・いや、ユイなのか?」


 ウレルの声は悲壮感が漂っていて、礼拝堂全体に響きわたる。


 一度言った私の名前を何度も呼んでくれるなんて。

 私は、胸がどんなに苦しくなっても涙が少しも出ないことを嘆いた。


(ウレル、私はここよ!)


 ゆっくりと目を開いたシャーロットのお人形さんみたいな綺麗な顏が、一瞬にして鬼の形相になった。


「嫌ですわ、ウレル公爵。他の女の名を呼ぶなんて!」


 ハッとした形相のウレルがシャーロットから身を離そうとしたけど、シャーロットはウレルに馬乗りになると、すごい力でウレルの首を締めあげた。


「何をする⁉」


 驚いたリリィがウレルからシャーロットを引き離そうとしたけど、逆に壁に叩きつけられた。


「グッ・・・!」

「キャア! リリィ‼ 」


 ディアナが身動きできないほど、シャーロットの動きは迅速で恐ろしいほど強かった。


「あ``・・・おま・・バッコ・・ス!」


 バッコスですって⁉


「悔しかろう? 君が私を刺す直前に、魂変換でシャーロットと入れ替わったのさ。」


 てっきり私とシャーロットが入れ替わったと思っていたのに・・・それじゃあ、本当のシャーロットはバッコスの中に入ったの?


(本当なら、私がバッコスと入れ替わるはずだったのに・・・⁉)


 たくさんの情報が処理しきれなくて、頭がグルグルとおかしくなる。

 でも、今はどうにかしてウレルを助けなきゃ!


 私はディアナの側に降りると、一生懸命に耳元で話しかけてみた。


「もうあなたしかいないわ! お願いよ!」


「・・・。」


 ダメだわ。反応がない。

 その時私の目の端に、最期の小さな希望の光が見えた気がしたの。


 ダメでもともとッ!

 コレにかける‼ 


 私は、一筋の光になって急降下した。

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