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夫に愛されない公爵夫人はブラコン姫騎士と王国を守ります!  作者: ゆきんこ


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25/33

#25 あなたは何者?

 身体のラインが出ない長袖のふんわりした木綿地のワンピースに、同じ素材のヴェールを頭から被ったディアナ。

 この簡素だけど慎ましやかな格好は、一般庶民の女性の普段着だ。


(ちょ、何を着ていても、美しさと所作でディアナだって分かっちゃうんですけどーーー!)


 特徴的な王族特有の金髪や燃えるような赤い瞳を上手く隠してはいるけど、やはり王家のオーラは一般のモブキャラとは一線を画していて、限界ヲタクの私には別次元の人間に映るのよ。


 でも、いつものようにメンズっぽさがないのは新鮮ね!

 お祈りをしている様子はとても真剣で、普段から親しくしている私でも、声をかけていいのか迷うくらいの熱量だ。


 礼拝堂のお花を活けていた白い制服を着た修道女が、入り口の近くに佇む私に気づいて、軽く会釈をしてくれた。

 そしてそのまま横を通り抜けようとしたので、私は慌てて彼女を呼び止めたの。


「あの、スミマセン。ディアナさまは、いつからここに来ていたのですか?」

「あら、よく姫殿下だとお気づきになられましたね、公爵夫人。

 姫殿下は最近、いつも決まった曜日と時間に礼拝なさるんです。」


 最近? ディアナにそんな習慣があったとは知らなかったわ。

 でも確かマンガでは、リリィは騎士になった後も教会で礼拝に参加しているというコマがあったわね。


「まるで聖女みたいですね。」


 私が呟くと、修道女はパアッと目を輝かせた。


「そうなんです! お二人とも背格好は違いますが、 なぜだか持っている雰囲気が似てますわね。

 私は姫殿下のお祈りをしている姿に、毎週、癒されています。」


 修道女は親のような温かい目でディアナを見守っている。

 シャーロットが憑依して性格が豹変したリリィをこの人には見せられないわね。


「どうか、ヘリオスさまの身をお守りください。」


 静かすぎる礼拝堂で、ディアナの呟きが高い天井に反響して聞こえる。

 あぁ、やっぱりディアナは、いつでも愛しの兄・ヘリオスの心配をしているのね!


 叶わない禁断の恋。

 その末路を知る私はディアナの姿に切なくなって、見ているだけでグッときちゃう!

 最近、ウレルの溺愛の津波に飲み込まれていたから推し活が疎かになっていたけど、推しのディアナにはぜーったいに幸せになってほしいのよ!


 こんなに純粋で美しくてカッコイイ女性なら、私が男キャラに憑依していたら絶対に恋するのになぁ!

 礼拝堂に設置されている長椅子の陰まで忍び寄ってディアナの綺麗な横顔を堪能していると、つい前のめりになりすぎて長椅子を前に動かしてしまったの。


 ギィ、と床が引っかかれるような音が響いて、私は肩をすくめた。


「誰かいるの?」


 ディアナが周りを見回した。


 き、気まずい・・・けど、こうなったら名乗り出るしかないよね!

 私は照れ笑いをしながら長椅子の陰から祭壇に伸びる通路に出た。

 

「わ、私です!」

「シャーリー? 」


 驚いた顔のディアナは、すぐに破顔して私の側に来た。


「もしかして、司教に会いに来たの⁇」

「うん。いきなり聖女の祝福を発現したものの、どうやって使うのか分からなくて。

 司教さまにヒントを貰えたらと思って神殿に来てみたんだけど・・・難しいみたい。」


 目を伏せる私の肩に、ディアナが微笑んで手を置いた。   


「そうか・・・具体的には何が分からないの?

 前にも言ったけど、兄や私は小さい頃からリリィと会っていたから、力になれることがあるかもしれない。」


「えっと、例えば回復できる金色の光の出し方とかかな?

 やっぱり聖女の仕事は怪我人の救済だから、一刻も早く習得しなきゃと思っているの。」

「それなら、私にも教えられるかも。」


 ディアナは私の後ろに回ってピッタリと背中に寄り添った。


「目を閉じて。」


 普段は鎧で覆われていたから分からなかったけど、ディアナって幼児体型のシャーロットにはない、発育の良い体型だったのね!

 ディアナの感触と体温を背中に感じて、目を閉じた私は急に恥ずかしくなってドキドキした。


 げ、原作者さん、何回も聞くけどレーティングは百合ものじゃないのよね?

 私が来てからこのマンガの主軸がブレッブレな気がするんだけど!?

 

 背後から私の手を取り、操り人形のように両手を胸の前で交差させるディアナ。温かい息遣いが火照った私の耳にかかる。


「心で念じて。口にしちゃダメ。

『この手の中に神を宿す』と。手の中に暖かい金色の光が生まれる瞬間を想像してみるんだ。

 君がお母さんのお腹にいた頃を想像してみて。」


 私は囁かれるままに私の母を思い浮かべた。温かくて優しいまなざしを。

 自然と涙があふれて、ひと粒の涙が顎に伝う頃、まばゆい金の光が自分を包んでいた。


「ディアナ・・・あなたは何者?」

 

 私は温かな波動に震えながら、背後のディアナの袖をキュッと握った。


「司教さまがこう言っていたの。『自分にできないことを人に教えられるはずがない』って。

 聖女の祝福は、聖女にしか教えられない。

 あなた、まさか・・・?」


 ディアナは金の光に目を細めながら吐息をついた。


「シャーリー、信じられないかもしれないけど、どうか聞いてほしい。

 私は聖女・リリィなんだ。」

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