転生した先は乙女ゲームの世界でした。
初投稿です。
「ディアンヌ令嬢!貴様のエマに対する数々の嫌がらせ!これ以上は見逃すことは出来ない!」
待って!
「この場を持って」
やめて!
「貴様との婚約を解消する!!!」
「だから違うんですって!!!」
ある日、夢の中で私は自分の前世を見た。
会社に向かうスーツ姿の私。友達と遊ぶ私。ゲームを楽しんでいる私。いろんな私を見てきた。
最後に見たのは1番好きだった乙女ゲームの続編を買おうと出掛けて居眠り運転により事故に遭う私。これが最後だった。
そして私がいるこの世界は前世での私が好きだった乙女ゲームの世界、その主人公に生まれ変わった。
「エマ」
「はい、お父様」
「明日からついに学園に入学だね。寮生活になってしまうのがとても心配で寂しいよ」
「大丈夫ですよ。お手紙は毎日書きますし、そんな心配するような事はありません」
「それでも心配なんだ」
「もう、お父様ったら」
そこから母の話をしてくれた。どう出会ったのか、今も忘れられずにずっと独身を貫いていることを。この話はよくしてくれる。
私は幼少期に母を亡くし、男爵家であるお父様に養子として引き取られた。両親は互いに惹かれ合っていたが周りが許さず、一夜を共にしたあと母はお父様から去っていった。その後母は私を身ごもり、お父様には何も言わずに私を産んで育てた。
お父様は母の事を調べたのだろう。母にたどり着いたのは亡くなってからだった。
「リラの事は今も愛してる。彼女に一目惚れだったが、私達は平民と貴族だからね。許されなかったし、彼女は例え何か悩んでいても何も言わなかった。エマもそこがよく彼女と似ているから」
「大丈夫ですって。もう、心配性ですね」
「大事な娘だからね。こればっかりはしょうがない」
ついに明日から私の学園生活が始まる。
つまりそれはゲームのシナリオが始まるのと一緒。
私は確かにこのゲーム好きだし、キャラクター達も好きだ。全エンディングをクリアしたし、グッズだってたくさん集めたくらいだ。
このゲームのシナリオでヒロインは危ない目にあう展開だってある。
でもそれは"見ている側"だから楽しめた。実際に危ない目に合うのはごめんだ。
こればっかりはお父様に言えない。自分が前世の記憶があること、ここが前世ではゲームの世界だったこと。
けど、大丈夫。前世の記憶を頼りにシナリオを避けて無事に何事もなく平凡に学園生活を終えるんだ。
そう決意したのが数ヵ月前。
この世界の強制力なのか、主人公補正でもあるのか。キャラクター達と関わってしまった。
どうにかこうにか関わりを断とうとしたがうまく行かず。ルシアン様ルートに入ってしまった。
「見てあの人」
「まぁ、あの人って…」
「噂の男爵令嬢よ」
「ルシアン様を誑かした女ね」
「ディアンヌ様おかわいそうに」
ヒソヒソとご令嬢方が中庭のベンチで1人座っている私を見て話している。
そう、問題なのはルシアン様だ。ルシアン様は王族で伯爵令嬢であるディアンヌ様と婚約している。
ゲームではルシアンルートに行くと婚約者からの嫉妬で嫌がらせを受ける。エンディングで彼女はダンスパーティで彼女の悪事がバレて婚約破棄を言い渡され、ディアンヌ様は協会で幽閉エンドを迎える。
彼女の気持ちもわかる。今まで慕ってきた人がぽっと出の女に現を抜かしているんだからそりゃ嫉妬だってする。
「……あれ、てか私ディアンヌ様から嫌がらせなんて受けてなくない…?」
よくよく思い出していると、直接会ったことない。嫌がらせをしてくるのは私の事を気に食わないと思っている人達からだ。
「…そういや続編がどんなストーリーかは知らないからわからないけど、え、もしかしてこれって冤罪…」
「なにブツブツ言っているんだ?」
「え、あ、ルシアン様!?」
「エマ。何故1人で中庭に?……ん?その手に持っているのは教科書か?」
「あ、い、いえ…その…」
ルシアン様は私の隣に座り、私の手にあるボロボロになった教科書を見て眉間にシワを寄せる。
「また嫌がらせを受けてたのか。……もしかしてディアンヌか?」
「え?」
「ディアンヌは俺の婚約者だからな。嫉妬してやっている可能性も」
「いえ、違います」
即答した。それはもうビシッと。
実際に違うからだ。これはクラスメイトにやられたものだから。この教科書を見た時こっちを見てニヤニヤしていたからきっとあの令嬢だろう。
「きっと今までのもあいつがやったんだろう。それかあいつが指示して周りにやらせてきたのかもしれん。何故何も言わなかった」
「別にディアンヌ様からは何もされてませんよ。会ったことありませんし。あと多分指示もされてません」
「もしかして俺に気を遣っていたのか?そんな事しなくてもいいのだぞ?」
「全然気を遣ってもいませんし全く違います」
え、話聞かなすぎヤバイ。こんな人だったっけ?
「安心しろ、エマ。これ以上は見過ごせない。今度パーティが開催される。その日ディアンヌとの婚約を破棄し、お前と婚約を皆の前で宣言する」
「は?」
いけない、王族相手に「は?」と言ってしまった。だけどルシアン様は気にしてないようで上機嫌にいろんな事を話をしている。
いや、それよりも。
「あ、あの、今、なんと…?」
「なにがだ?」
「い、今…婚約って…」
「ああ、ディアンヌとの婚約破棄をしたらお前と婚約を皆の前で宣言する」
聞き間違えじゃなかった!!!!
てかなんで!?!?
「どうして私との婚約だなんて…っ」
「どうしてって…俺とお前との仲だろ?」
どんな仲なの!?私むしろ避けてきたのに、ルシアン様の中ではどんな仲になってるの!?
「それにディアンヌがやったと証言した者もいる」
「え!?」
「もう大丈夫だ、安心しろ」
全く安心できない。ていうか……
「誤解です!!!」
それからと言うものルシアン様は全く聞いてくれず、「ディアンヌをかばっているのか?優しいやつだな」と言って去ってしまった。
ヤバイヤバイどうしよう。全然話聞いてくれない。
とにかく誤解を解かなくちゃと頑張ったが、パーティ当日になってしまった。ルシアン様に連れてこられ、隣に立ってしまった。肩を抱かれているからこの場から離れられない。
そしてあの婚約破棄宣言である。
「何が違うんだ?」
「だからディアンヌ様からは何もされていません!!」
「だが証言が…」
「それ嘘ですからっ!!!とにかく、婚約破棄を撤回し」
「ルシアン様」
凛とした声が聞こえた。ディアンヌ様からだ。初めてお声を聞いた。
「わたくしエマ様を嫌がらせをした事も、婚約破棄される覚えがございませんわ」
「フン、それは貴様が1番よくわかっているはずだ。どうせ指示をだして自分の手を汚さないようにしたんだろう」
「はて…?」
「そして俺の隣にいるエマと婚約を宣言する!!」
周囲がざわついた。ディアンヌ様は一切表情を崩さなかった。
「……一応お聞きしますが、エマ様とのご関係は?」
「恋人だ!!」
「違いますっ!!!」
更にざわついた。ルシアン様とディアンヌ様は驚かれた表情をしている。
「な、え、エマ?」
「私、ルシアン様とまっっっったくなんの関係もございません!!!寧ろ付きまとわれて迷惑していました!!!」
「なっ」
「あらまぁ」
「だから私、本当に何も関係なくて…!!ディアンヌ様信じてください!!」
感情が溢れ、ボロボロ涙がこぼれる。ルシアン様は私の発言に固まってしまった。
「エマ様、泣くのはおよしなさい。綺麗な目が溶けてしまいますよ」
ディアンヌ様が私に近づきそっと私の目にハンカチを当ててくれた。ハンカチからとてもいい匂いがしたし、ディアンヌ様からはもっといい匂いがした。
「ルシアン様が貴女の事を好いているのは知っていましたわ。だけどほっといたわたくしにも責任があります。ごめんなさいね」
「い、いえ!そんな…!」
「けど、本当に何も関係ないの?」
「友達でもありません!!」
「うぐっ」
ルシアン様は項垂れてしまった。けれど私は本当の事を言ったまでだ。やっと手を肩から離してくれた。
「では婚約は?」
「もちろんしません!!」
元気よく返事をした。ディアンヌ様はクスクス笑ってこう言った。
「安心して、これからはキチンとルシアン様のリードをしっかり握ってこれからは管理します。もうエマ様にご迷惑をかけるような事もさせませんわ」
「本当ですか!!」
「ええ、いずれはこの国を支えるんですもの。彼の婚約者として当たり前ですわ」
すごく輝いて見える。もう私には彼女が女神様に見える。
その後パーティは無事に終わり、この出来事は他言無用になった。
ルシアン様はディアンヌ様に尻に敷かれているらしい。卒業してからはもう会うこともなくなったけど、ディアンヌ様には感謝しかない。
無事に数々の嫌がらせの真犯人を見つけ、ディアンヌ様が犯人だと虚言を吐いた人も見つけた。
その犯人は私の私物を壊そうとした時にディアンヌ様に見つかり注意を受けたそうだ。その時の恨みででっち上げの証言をしたと言う。その人達は退学や休学処分になった。
あの冤罪がなくなって本当に良かった。
私はあれから好きな人ができてアタックしまくった。お父様も応援してくれている。その頑張りがついに実を結び、ようやく彼と結ばれた。
長い交際期間を迎え、数ヶ月後には結婚式に向けて準備中。私は今幸せです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
少しでも楽しめたら幸いです。




