今夜、満月の微笑みに
少しずつ澄んでいく
風の気配の中で
しばし瞳を閉じて
耳を澄ませて
聴こえてくるのは
鳴り響く虫の鈴音と
木の葉のそよぎ
夕星輝くこの丘で
柔らかな風に
包まれながら
満ちては欠けていく想いは
潮の満ち引きのように
移ろい続ける世界が
少しだけせわしく思えて
開いたまぶたの先で
気づけば
大きな満月が
こちらをみつめていた
この昏い夜をなぜ、
ひとり照らし続けるのですか
月にそう、尋ねたら
自分はひとりじゃない
大きな星も小さな星も
様々な色をした星々も
空にはたくさんの星がいて
自分はただ
この地球のそばに
いたいから
月が、そう言った気がした
ではなぜ、
そんなに輝いているのですか
月にそう、尋ねたら
自分もまた
誰かの光に照らされているから
その光に感謝して
また誰かへの光で応えられたら
真っ暗なこの宇宙にさえ
光があるから
どんな暗闇にも
光がきっと、届くと信じて
月が、そう言った気がした
月の光は
どれだけ明るくても
太陽のように
眩しく瞳を刺すことはない
だから月は
ずっとみつめることができる
なぜ、そんなにやさしいのですか
月にそう、尋ねたら
月はただ、静かに
まんまるく微笑んでいた
欠けることの哀しみも
満ちることの喜びも
どちらもあるから
きっとやさしくなれる
満ちているときも
欠けているときも
月は月だから
そして
自分は自分だから
月が見えなくなる夜は
新しく生まれ変わる夜
新月があるから
満月に向かってまた
時が満ちていく
もし君と
月が綺麗、と言えるなら
これから満ちゆく
三日月にしよう
その欠けた歪さを
互いのやさしさで
埋め合いながら
いつか今宵の
満月になれるように
そう、心に囁きながら
見上げた夜空に
月は、静かに
まんまるく微笑んで