社畜、気絶する
「もう朝か……はぁ、肩いてぇっ」
昨日はなかなか寝付けなかった。
何せ、壊れたラジオが喋り出したんだ。
しかも、俺のことを勇者だなんだと言っていた。
勘弁してくれ。ただの社畜にゃそんなの荷が重すぎる。
『今日のアイテムボーナス』
「ラジオからまた……ぐえっ!?」
ラジオから機械的な淡々とした声が聞こえ、鞄の前に体を動かすと突然頭に何か強い衝撃を受けて俺は倒れた。
――――――――――
「はっ!……痛ってぇ……なんだよ。」
目を覚ますともう明け方から昼に変わっていた。
頭が痛い。俺の横には一部がひしゃげた段ボール箱が落ちている。
これが頭に当たって気絶してたらしい。
「開けてみるか」
痛む頭を摩りながら、段ボール箱を開けてみる。
中にはニンジンが入っていた。
「そういやアイテムボーナスって言ってたっけ。こんなに食事のタネばっかりじゃ、アイテムってよりやっぱり仕送りだな。」
箱から出したニンジンを眺めていると笑いがこみ上げてくる。
「ん?足音か?」
ニンジンを仕舞おうとした瞬間、遠くから何かの足音が聞こえた。
こちらに近づいてきている。
ドスン、ドスン、とやけに重たそうだ。人じゃなさそうだ。
何かヤバそうな気がして取り敢えず草むらに身を屈める。
その予感は正しかった。
「グォォォォォォ!!!!!」
背から棘の無数に生えたティラノサウルスみたいな化け物が大きく唸り声を上げた。
「おいおい……嘘だろ」
こんな化け物居んのかよ。聞いてねえぞ。
ここは息を潜めてやり過ごそう。
そう思った瞬間、運悪くパーソナリティの賢者が意気揚々と喋り出した。
『こんにちは勇者くん。昨日は急に話が途切れてしまってすまなかった!今日はだね』
「グォッ!!」
「くっそ、馬鹿やろ!箱といい、ラジオといい、何でもかんでもタイミング悪すぎだ!!」
気づかれた俺は急いで草むらから飛びだし、逃げ出した。