万能感に満たされ。
どうして!?
って、ノワ、なんで? どうして? どうやってあたしの魂に入ってこれたの!!?
——んー? なんとなく。出れたんだから入れるかなって?
えー?
そんなの。
だって、だよ?
普通他人の魂の中なんかそう簡単に出入りできるもんじゃないでしょー?
それとも、あたしの心ってガバガバなの!?
ああそれもちょっと嫌。
ああ、ううん、ノワがあたしの中に入ってくるのが嫌とかそういうわけじゃないんだよ?
だってそうでしょう?
普通、他の人に自分の心の中に勝手に入ってこられたらおかしいって、そう思うもの。
あう、ノワが入ってくるのがイヤなんじゃ、ないけど?
(ここ大事。ノワを拒否してるわけじゃ、ないの)
——ああ、ごめん。でもきっと俺は特別なんだと思う。何度も君のレイスに触れているうちに、きっと少しだけ君のレイスが溶けてちょこっとだけ混ざったみたいな?
えーー〜?
そんなの!?
——だから、これは本当にごめん。俺、少しだけ君の記憶も見えたりしたんだ。ああ、全部じゃないよ? ほんの少しだけ。
カーーーーっ
あたしの顔が真っ赤になるのがわかる。
はうあう、心臓の鼓動が激しくなって止まらない。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
だってだってだって、そんなの!
——ほんとごめん。でも、そのおかげで君が俺のこと本当に好きでいてくれたのもわかって。すごく嬉しかった。
ああ、ああ、ああ。
ほんわかした心の温かさが伝わってくる。
あたしの中にいて、多分少し繋がってる?
レイス同士がほんのちょこっとだけど、赤い糸みたいなので繋がった。そんな気がして。
ありがとう。ノワ。
あたし、なんだか少し、元気が出た。
きっと。
あたしという存在の境界と、ノワという存在の境界はまだちゃんとある。
でも。
そこにほんの少しだけの糸みたいなもので、優しく繋がっている。
そんな幸せ。
ありがとう、ノワ。
あたし、頑張れそうだ。
——君はもうそれだから。俺は、君が一人じゃないよって、俺もついてるって、そう言いたくてここまできたんだよ? 一人で頑張るんじゃない、一緒に頑張ろ? 絶対に君は俺が守るから。
あうあう。
あたしの心はいっぱいいっぱいに膨らんで。
うん、これは、マナ?
ううん、これは、あたしの幸福の、気持ち。
ノワを大好きだって思う感情。
幸せだって思える、そんな感情の塊が、あたしの魂いっぱいに満たされて。
清浄な金色のそんな粒子があたしのゲートから溢れる。
ああ。あたし。
身体中から力がみなぎる。
もう、なんでもできそうな万能感に満たされて。
あたしは悪魔レヒトに向けて飛んだ。
空間を泳ぎ、縫って、何枚もの膜のようなものを抜けたその先に。
奴がいた。
「はは。ここまでくるとはな。やはりお前、人ではないな」
真っ赤なその口が開き、そう音が漏れた。




