レイスの中に。
エンジェルフェザーを羽ばたかせ、窓から飛び立とうとしたその時だった。
「にゃぁ!」
キイと部屋のドアが開き、入ってきたのはティファとそのティファに抱かれたノワ。
ああごめん、何にも言わずに行くことにしちゃって。
「ごめん、ノワ。あたし、行ってくる。ティファごめん。ノワを預かってて」
絶対に帰ってくるから。お願い。
そう最後の言葉は心の中で叫んで。
あたしは前を向いて窓の外に飛んだのだった。
「あ、だめ、ノワ」
ティファの声に、えっと思って振り返るあたし。
いやだ、だめ、ノワ!
にゃー!
って叫びノワが窓から飛んで、落ちる。
あたしを追いかけ窓から飛んだ!?
もう! ばか!
あたしは心のゲートからマナの手、見えざる手を伸ばし、ノワを受け止めた。
お部屋は2階。まあ小さくても猫の魔獣なわけだしノワ死んじゃうとかそういうわけではないだろうけどそれでもね。
まだ小さいのに。怪我でもしちゃったらどうするの!
ほんとにもう。
ふんわりと見えざる手で掴まれ宙に浮かぶノワ。ちょっと不思議そうな顔をして「にゃぁ」と鳴いた。
もう、どうしよっか。
小さくてもノワ、あたしだけをあいつらのところに行かせるのが嫌だったの? 許せなかったの? 無理やりにでもあたしを追いかけようと思ったの?
あとさきも考えずに。
しょうがないなぁ。
ノワを拾いながらもあたしは大空に飛び上がって行くのをやめなかった。
山猫亭がもうけし粒くらい小さく見える。
引き寄せ抱き上げると、ノワ、あたしの頬に頭を擦り付けてくる。
「にゃぁぁ」
悲しそうな声でそう鳴くノワに。
あたしも。
「ごめんねノワ。置いていこうとして。だけどさ、ほんと危険なんだもん」
そう言って頬擦りする。
ちょっと滲んだあたしの涙をぺろっと舐めるノワ。
「ふふ。ほんとノワには叶わないなぁ。でも、一緒にいくならノワにはあたしの魂の中に入っていてもらうからね?」
「にゃぁ?」
「あたしにだって、どうしてもっていうラインがあるの。今のままのノワをそのままじゃあいつらの前には出せないわ」
「にゃ!」
あたしはノワを掴んだままだった見えざる手をそのままゲートに引っ込める。
ノワごと、魂の中に引き込んだのだ。
丘に向かって飛ぶ。
二つの月の光が降るように瞬いて。
あたしの魂にマナが満ちてくるのを感じていた。
月の光はマナの光。
大気に溶けるマナは満月の夜に一番に満ちるのだ。
——わがまま言ってごめん。マキナ。
ううん。あたしの方こそごめんなさい。ノワ。
あたしの魂の中でマナの海に浸かって。
少し? ううん、随分と大人びて、多分素のノワールの意識に近いノワがそう心の声で話しかけてくれた。
っていうか、流石にこういうのは想定していなかったから少し恥ずかしい。
——でも、これで一緒に行ける。
うん。二人であいつらと対決しましょう。
ね。ノワ。




