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マギアクエスト!  作者: 友坂 悠
マギアクエスト!
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異世界転生?

 長い夢を見ていたような気がした。

 真っ白な空間を、いっぱいの泡の中を漂って。

 そんなイメージ。


 世界のことわりの全てを理解したような気がしたところで。


 それが霧散し。


 霧の中を抜け、光の壁のようなものを通り抜けた。




 ☆☆☆



 ハッと気がついたとき。

 あたしはポカポカと温かい日差しの中、ふわふわな緑の草原の中で横たわっていた。


 え?

 っと思って起き上がり、周囲を見渡すけれどその光景には見覚えが無い。

 っていうか、ここはどこ? あたしは誰?

 もしかしてあたしって、記憶喪失!?


 頭に浮かんだ最初の言葉はそれだった。


 もやに包まれたようになっていた意識がだんだんとはっきりするにつれ。

 目の前の景色の不可解さにもう訳がわからなくなって。


 自分がどうしてこんなところで寝ていたのか。それが不思議で。

 怪我、はしていない。

 どこも痛いところは、なさそうだ。

 おかしいところ、といえば。

 違和感。そう、自分の体のはずなのに自分の身体じゃないような、そんな違和感が先に立つ。


 というよりも。


 記憶喪失?

 なにそれ?


 常識的なことは覚えている。

 あたしが人間で、日本人で、そして。

 記憶喪失なんていうシチュエーションがまさか自分に訪れるなんて。

 ああ、ミステリの中だけの出来事じゃなかったんだな。

 記憶喪失って、こんな感じなのかな。ってそんな感想が浮かんでくる。


 わからないのは自分の名前とか今までどうしていたかとかそんな記憶だけで、この空の青さとか草原の気持ちよさよかそういうのはちゃんとわかる。

 なのに。


 まあしょうがないか。

 時間が経てば何か思い出すかもしれないし。

 そう思って立ち上がってみると。


「始まりの庭」

 そんなセリフが頭をよぎる。


 はい?


 樹々に囲まれた小さな草原。

 あたしが倒れていたすぐそばには小さな泉があって。


 嘘! ここってまさか?


「マギアクエスト」

 のスタート地点。自分のアバターをクリエイトした時のあの始まりの庭に酷似したシチュエーションの、そんな小さな草原。そんな場所、だ。


 っていうかもちろんゲームの世界はいくら立体的とはいえあれはあくまでCGだ。

 こんなに実際の世界のような自然ではない、けれど。


 驚愕に目を見開いたあたし。

 連鎖的に自分のことを段階的にではあったけれど思い出していた。


 自分が日本人野々華真希那(ののはなまきな)であったこと。

 そして、どうやら車にはねられてしまい、そこで意識が途切れたことも。


 #####################


 呆然としたままフラフラと歩いていると、どうやら最初の草原から出てしまったようで。

 振り返ってみてもどうやってそこに戻ったらいいのかわからなくなっていた。


 あたしは死んでしまったのだろうか?

 ということはここは死後の世界?


 ぼんやりと光の壁のようなものを潜った記憶が蘇る。


 それとも、死んじゃった拍子に世界を転移してしまった?



 空に高く輝くお日様は、地球の都会で見ていた時よりも大きく見える。

 それに。


 途切れた樹々からその外の世界を見たあたし。

 小高い丘のようなそんな場所から見た平地はどこまでも広く。

 都会のビルはそこには全く見当たらなかった。


 電線ももちろん、近代的な建物や建造物はカケラも見当たらないそんな光景に。


 まるで、異世界の、RPGのような世界にあたしは来てしまったのだろうか?

 そう思いあたって。




 まあでもそんなの、おはなしの世界の中だけでしょー?

 理性はそう訴えている。

 だけど。

 もし本当に異世界転移でもしちゃったのだとしたら。


 ふふ。


 大好きだったおはなし世界。

 大好きだったゲームの世界。


 まあね。生きていくのはどんな場合でもそう簡単じゃないだろうっていうのは思う、けど。


 なっちゃったものはしょうがないよね?


 だとしたら少しでも楽しまなきゃ、損だ。


 そう思って、あたしは眼下に見える街に向かって駆け出した。


 はは。身体が軽い。

 元の世界のあたしは運動が苦手で眼鏡がないとなにも見えないそんなふうだったけど。

 そういえばあたし眼鏡かけてない、よね?

 だけれど世界がこんなに綺麗に見えるんだもの。


 まるであたしのゲームのアバターマキナになったみたいに。

 どれだけ走っても息切れのしないそんな身体能力に、飛び跳ねても大丈夫な運動神経に。

 あたしは少し浮かれて。

 生まれ変わったようなそんな気分を味わっていた。

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