悪役令嬢に転生しても、王子には婚約破棄されたけどまったく後悔はない。
私は出勤途中、マンホールの蓋が開いているのに気付かず落ちてしまった。別に体は痛くはないし、気を失っただけの様だ。良かったと思って目を開けたら、お屋敷の中だった。お金持ちの人に助けられた。もしかしたら運命の出会いかもと心弾ませた。
「お嬢様、大変です」と初老の見るからに執事って感じの人が部屋に入って来た。
「セバスチャン、何事ですか」執事と言えばセバスかセバスチャンだろうとつい言ってしまった。
「お父上様が王子との婚約の事で聞きたい事があると、かなりお怒りの様です。言葉遣いにはご注意ください」
よくわからないけど、助けてもらったお礼もしないといけないしって、姿見を見ると、絶対に私ではない女の子がそこに映っていた。私はまだ気絶しているみたい。ラノベの読み過ぎだわ。
お父様とやらのいる部屋に執事のセバスチャンに連れて行かれた。本人も否定しないからセバスチャンなのだろう。
部屋に入るなり「このバカ娘が」と怒鳴られた。実の父親にも怒鳴られた事がないのに、じつに不愉快だ。
「部屋に入るなりバカ娘とは言い過ぎではありませんか」と抗議をしてみたら「バカだからバカ娘と言って何が悪い」と更にヒートアップさせてしまった。
「私が何をしたと言うのですか」
「第二王子様から婚約を破棄をしたいと言われた。お前、王子に何をした」
ふむふむ、この女の子の記憶を探ってみた。
「王子様が座る腰掛けのクッションを座るとオナラの音がするクッションに替えました。王子様が座るとオナラの音がしたので、『ウケる』と言いました。それからお食事中に『手品をします』と言って王子様が大嫌いなカエルのオモチャをだしました。それから王子様に『第二王子様ではなく第一王子様と婚約したかった』と面と向かって言いました、思い出せるのはそんな所です」
「なぜそんなバカな事を言ったり、したのか」とさっきの勢いはどこへヤラ、力なく尋ねて来た。
「第二王子様ってマッチョ系だったので、気持ち悪いです。私は体育会系より文化系の人が好みです」と言うと父上と言う人が「わざとやったのか」と言うので「はいもちろんです。私もそこまでのバカではありませんから」と朗らかに笑ってしまった。
「メアリー、命令だ、第二王子様の元に行き謝罪せよ」
「謝罪しても婚約破棄だと思います」
「ツベコベ言わずに謝ってこい」と言われて屋敷を追い出された。歩いて行くにしても王城は遠いなあと思っていたら、執事のセバスチャンが「馬車の用意が出来ております、お乗りください」と言う。さすがセバスチャンです。
王城に着いて第二王子の部屋に案内されて、私は「これまでのご無礼申し訳ございません」と棒読みで謝罪の言葉を述べた。
「謝罪したから婚約破棄を撤回してほしいという事か、公爵にそう言われたか」
「婚約破棄については父は受け入れております。そして私もその方が良いです」
「面白いことを言うなぁ。それで良いと言う理由が聞きたい」
「王子様が私の好きなタイプの男性ではありません。第一王子様も私の好きなタイプの男性でもありません。そうですね、あちらのお付きの方の様な人がタイプです」
「ピエトル、だそうだ。お前はメアリーをどう思う」
「一緒にいると毎日が楽しそうですね」
「ではピエトル命令だ、メアリーと付き合う事にせよ。これで子どものイタズラに怒って婚約を破棄をした器量の小さい王子と言われなくてすむ、そうだ二人がお互いに惹かれている事に気付いて身を引いた事にしよう」
「私は王子様の望むままに、それにピエトル様ならたぶん私はイタズラはしないと思います」
「ご命令なら従いますが、最初にはっきりさせておきますが、私には想い人がいますので、メアリー様と婚約とかはありませんから」
「私も王子様の面子、父の面子が立てばそれで全然構いません」
ピエトルは思った。私は第二王子様以外を愛することはあり得ない。メアリーはうるさく婚約とか結婚する様にと言って来る連中の「虫除け」に丁度良いと。