美しい朝陽
身体を横たえた布団はひんやりしている。だが、そんなことも気にならないくらいに、私は疲れきっていた。
長い一日が終わる⋯⋯そう信じて、祈るように目を閉じた。
傍らには、すやすやと眠る息子。その向こうに、死んだように寝こける夫。
現在、深夜零時を回った頃。まだ幼い息子を寝かしつける役目を夫にお願いしたのは、四時間ほど前のこと。
さぁ、息子が寝たらなにをしよう。休日を朝に控え、私の胸は期待に満ちていた。
まずは食器洗い。朝干した洗濯物を畳んで、ゆっくりお風呂に入りたい。上がったらアイスでも食べようかな。先週買ってきた本を読むのもいい。録り溜めていたドラマを一気見するのも悪くない。夫と晩酌するのも楽しいかもしれない。
⋯⋯などと考えていたのだが。
食器洗いも終わりかけの頃、寝室の戸が開いた。
夫が戻ってきたのだろう、寝かしつけお疲れ様、と言おうとして笑顔を向ける。
その顔が固まった。
「寝たよ〜」
おめめパッチリの息子が、はしゃぐように言った。
「パパ寝ちゃった!」
その後がつらかった。
夫は、寝る前に童話集を読み聞かせしていたようだが、自身が途中で眠ってしまったらしい。
食器を終えて、息子と寝室へ。彼のねだるままに童話集を次々に朗読する。けれども幼子の体力は凄まじい、眠気がやってくる気配がない。
動画サイトから、子供が寝やすくなる音楽を探して流すなど試行錯誤の結果、彼が寝入ったのは十時手前のことだった。その間、起きることなく寝続けていた夫が恨めしい。
私は眠気と戦いながら喉の渇きを癒した。息付く間もなく、洗濯物を畳んで片付ける。ゆっくりバスタブに浸かる時間などなく、シャワーを済ませて寝支度を整える。
そして、夫と息子を起こさないよう、寝室に行き、布団に潜った。
どうか息子が夜中に起きませんように。夫がいびきをかきませんように。ゆっくり寝かせてくれますように⋯⋯。
祈るように目を閉じた。
それから何時間経ったのだろう。
体感では数分だった。
「ママー、ママー! テレビ見るー!」
元気のいい息子の声で気がついた。
のそのそと身体を起こしたが、瞼が重く張り付いている。夫のいびきが聞こえた。息子を起こしやがって、と腹が立つのをなんとか抑える。
「えぇ? テレビ⋯⋯テレビこんな夜中にやってないよ⋯⋯」
「夜中じゃないよ、朝だもん!」
「えー⋯⋯?」
手探りでスマートフォンを取った。閉じようとする瞼を必死に持ち上げ、時刻を確認する。
六時半になろうとしていた。
嘘でしょ⋯⋯?
頭の中に、絶望的な呟きが響き渡って覚醒した。
窓から美しい朝陽が差し込んでいる。
⋯⋯休日の子供向けアニメって、なんで早朝からやるのだろう、とイライラしながら息子とリビングへ出ていった。
2020/10/19
子供ってなんで日の出からトップギアで動けるのでしょう?