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3分読み切り短編集

美しい朝陽

作者: 庵アルス

 身体を横たえた布団はひんやりしている。だが、そんなことも気にならないくらいに、私は疲れきっていた。

 長い一日が終わる⋯⋯そう信じて、祈るように目を閉じた。

 傍らには、すやすやと眠る息子。その向こうに、死んだように寝こける夫。

 現在、深夜零時を回った頃。まだ幼い息子を寝かしつける役目を夫にお願いしたのは、四時間ほど前のこと。

 さぁ、息子が寝たらなにをしよう。休日を朝に控え、私の胸は期待に満ちていた。

 まずは食器洗い。朝干した洗濯物を畳んで、ゆっくりお風呂に入りたい。上がったらアイスでも食べようかな。先週買ってきた本を読むのもいい。録り溜めていたドラマを一気見するのも悪くない。夫と晩酌するのも楽しいかもしれない。

 ⋯⋯などと考えていたのだが。

 食器洗いも終わりかけの頃、寝室の戸が開いた。

 夫が戻ってきたのだろう、寝かしつけお疲れ様、と言おうとして笑顔を向ける。

 その顔が固まった。

「寝たよ〜」

 おめめパッチリの息子が、はしゃぐように言った。

「パパ寝ちゃった!」



 その後がつらかった。

 夫は、寝る前に童話集を読み聞かせしていたようだが、自身が途中で眠ってしまったらしい。

 食器を終えて、息子と寝室へ。彼のねだるままに童話集を次々に朗読する。けれども幼子の体力は凄まじい、眠気がやってくる気配がない。

 動画サイトから、子供が寝やすくなる音楽を探して流すなど試行錯誤の結果、彼が寝入ったのは十時手前のことだった。その間、起きることなく寝続けていた夫が恨めしい。

 私は眠気と戦いながら喉の渇きを癒した。息付く間もなく、洗濯物を畳んで片付ける。ゆっくりバスタブに浸かる時間などなく、シャワーを済ませて寝支度を整える。

 そして、夫と息子を起こさないよう、寝室に行き、布団に潜った。

 どうか息子が夜中に起きませんように。夫がいびきをかきませんように。ゆっくり寝かせてくれますように⋯⋯。

 祈るように目を閉じた。

 それから何時間経ったのだろう。

 体感では数分だった。

「ママー、ママー! テレビ見るー!」

 元気のいい息子の声で気がついた。

 のそのそと身体を起こしたが、瞼が重く張り付いている。夫のいびきが聞こえた。息子を起こしやがって、と腹が立つのをなんとか抑える。

「えぇ? テレビ⋯⋯テレビこんな夜中にやってないよ⋯⋯」

「夜中じゃないよ、朝だもん!」

「えー⋯⋯?」

 手探りでスマートフォンを取った。閉じようとする瞼を必死に持ち上げ、時刻を確認する。

 六時半になろうとしていた。

 嘘でしょ⋯⋯?

 頭の中に、絶望的な呟きが響き渡って覚醒した。

 窓から美しい朝陽が差し込んでいる。

 ⋯⋯休日の子供向けアニメって、なんで早朝からやるのだろう、とイライラしながら息子とリビングへ出ていった。

2020/10/19

子供ってなんで日の出からトップギアで動けるのでしょう?

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