6話
「え?!ギルド長さんですか?!すみません、私………」
わ、私もしかして失礼な態度をとってしまったのでは?!
そう思い、勢いで謝ったがそんな私をギルド長のフィロルさんが落ち着かせた。
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。ギルド長と言っても肩書きみたいなもので、特に何もしていないからね」
フィロルさんが優しい良い人で良かった、とティーナは安堵の溜息を誰にも気づかれないようについた。
「えっと、それでギルド長のフィロルさんは一体なんのようで私のところに?」
あぁ、それなんだけどね。そう前置きをしてからフィロルさんは話し出した。
「実はティーナさん、君のランクを上げるために来たんだけど.........」
ランクを上げるため?嬉しいけれど、そんなことで毎回ギルド長が来るのかしら?冒険者一人一人のランクを上げるたびに来ていたら忙しいんじゃ.........
そんなことを思っていると、私の考えを見透かしたようにフィロルさんが言った。
「普通は冒険者のランク上げに私が来ることはないけれど、何しろGランクの冒険者が初依頼でブラックローウルフをそれも三十体も狩ってきたんだから、色々問題もあるのさ」
問題、と聞いてティーナはなんかすみません...と、心の中でフィロルに謝った。
「で、ここからが本題なんだけど君のランクをCランクまであげようと思うんだけど、それで良いかな?」
「え?」
私は驚いてフィロルさんと近くにいたメルさんを見たが、フィロルさんはニコニコと笑っていて、メルさんは何も言わないが私同様驚いているようだった。
「本当は実力的にBランクでも良いんだけれど、まぁ、君ならすぐにもっと高ランクの冒険者になれるだろうし、それに本人の前で本音を言うとティーナさんって少し怪しいんだよね」
私は思わずその言葉にピクッと反応してしまった。別にやましいことがあるわけではないけれど.........
「ティーナさんが悪い人って言ってる訳じゃないんだけれど、まだ街に来たばかりなんだよね?それにギルドカードも作ったばかりで身元もよく分からない。それにローブをこれでもかっていうくらい深く被っていて髪も瞳の色もわからない。分かるのは若い女性ってくらいで種族もわからない。だから..........」
ごめんね。とフィロルさんはバツの悪そうな顔をして私に言った。
違う、悪いのはフィロルさんのせいじゃない。そんなのは私の自業自得。身元もわからず顔も見せない、そして強大な力を持っている。そんな人がいたら誰だって怪しいと思うだろう。
そもそも、ここに来る前にあった川で自分自身を見た時には特に髪色以外はおかしなところもなく、髪色を変えた後は、ローブのフードもいいかと思っていたのだが、精霊達にやめておいた方がいいと言われ、訳もわからないまま精霊達のいう通りにしているだけだった。
それに、ここまで私のことを心配してくれているフィロルさんやメルさんに本当のことを隠したくなかった。
私は、勇気を出してベッドで目覚めたということと、精霊と話せるということ以外を説明した。
***
「.........ということなんです」
「......そうでしたか........」
「そんな.......」
私が今までもことを話し終わると話を聞いていた二人は、悲痛な表情を浮かべて私を見た。
「あの、私別にそんなに辛いと思っていませんよ?確かに知り合いがいたら会いたいなとは思ってますが......」
「......そうですか、すみません。あの一つ聞いていいですか?」
「はい。いいですよ」
「あの、非常に失礼なことだとはわかっているのですがフードをそんなに深く被っているのは何故ですか?いやっ、あの言いたくなかったらいいのですが......」
「いえ、そんなことはないです!ただ、目の色が少し目立つ色なので.........」
本当は精霊に何故か被れと言われただけなのだが精霊と話せることは教えられないためこう言った。目立つ髪色は変えているはずなのに.........。
だけど、目の色が珍しく目立つのは間違っていないため嘘は言っていない?はずだ。
「あの......嫌でなければ、フードを取って顔を見せていただけませんか?記憶を失っているのなら、何かわかることもあるかも知れませんし.........もちろんこれも嫌だったらいいのですが............」
「分かりました」
そう言って私はローブを外した。
そこで真っ先に私の目に映ったのは、こちらを見て顔を赤くし固まっているフィロルさんとメルさんだった。
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