36話
「そんな事を……一人でやろうってのか?」
「私だけじゃありません。協力してくれる仲間はいるはずです」
かつて一緒に戦った彼らなら協力してくれるはずだとティーナは信じていた。
そもそも……これは元々私がやりきれなかったのが原因で………
「じゃあ、現状でその人たちがどこにいるのかとか分かるのか?」
「っ、それは………」
なかなか、痛いところを突かれてサッと左斜め下に視線を落とした。
記憶を思い出してもあの戦いが何年前に起こったものなのかは分からない。ただ遺跡の水晶の中の彼の状態を見るにかなりの時が立っているのが分かる。その間に仲間達はどこか別の場所へ行ってしまったかも知れないし、もしかするともう生きていない人もいるかもしれない。
「俺たちだってSランク冒険者だ!それなりに役に立つと思うし、俺たちは仲間だろ!それともティーナにとって俺たちは、ティーナの言う仲間の中には入ってないのか?!」
「わ、私はただ………」
皆んなに怪我をさせたくなくて………。と続く言葉を口から出るすんでのところで飲み込んだ。
「大丈夫だよ、ティーナ。僕達だって覚悟はできてる。仲間一人が危険な目に遭うのを黙って見てる方が辛いしね」
「そうよ!私がティーナに助けられたように、私だってティーナを助けるんだから!」
アルカナが胸を張ってグーにした右手でその胸をドンと叩いて宣言した。
あぁ、みんなには敵いませんね……とそう思い、目に涙が滲む。やがて顔を上げた私は笑顔でみんなに尋ねた。
「ありがとうございます……!私に協力してくれますか?」
「おうよ!」
「もちろん!」
「ええ!」
この瞬間、私はこれからもみんなといられる事を嬉しく思った。
***
「じゃあ、行きましょう」
四人となった私達は、昨日と同じように私が扉を開けた。
『あ!ティーナ様だ!また来てくれたんだね!』
『昨日の人間も一緒みたいよ!』
私達が入った瞬間に精霊達が集まってくる。これから皆んなに協力してもらうことになったので、もう聖霊と話すときに言葉を声に出さないようにする必要はないだろう。
「昨日はありがとう。お陰で思い出せたわ」
『本当?!思い出したの?よかったぁ〜』
「……ティーナ?貴女誰と話しているの?」
視線を戻すと三人とも目を丸くして私を凝視している。
「実は、私精霊と話せるんです。今まで黙っていてごめんなさい。詳しいことは後で話します。今は時間がないので先を急ぎます」
「「「は、はぁぁぁぁぁああああ?!?!」」」
「せ、精霊と話せるって……一体……あっ、ごめん。急いでるんだよね」
「すみません」
私がそういうとフレインは「いいや」と言って視線を扉に向けた。
壁に書かれていたのはいつもの物かは分からないが、少なくとも私が記憶を無くす前に使われていた精霊語だ。文字だけで人間の言葉も精霊の言葉も変わっていなくて助かった。精霊は人間の言葉を主に使うが、それとは別に精霊語を使うのだ。読めなくとも詳しいというフレインが見たことがないというのなら本当にかなり前のことなのだろうと、少し悲しく思う。
私は扉に向き直り、以前は水晶に血を垂らしたが記憶を思い出した今ならもっと簡単な方法がある。
私は深呼吸をしてから、懐かしい精霊語を唱える。
「『我、月の女神ルティファーナの名において、この扉の魔法の解除を一時的に強制する』」
私の言葉に反応するように目の前の扉が、重々しく開く。
そういえば彼と出会った日に歌っていた歌も精霊語だったなと、思い出す。
少し後ろを振り返ると、三人が口を開けたまま固まっていた。
「みんな、どうしたの?早く行きましょ?」
扉を開けたところは昨日見ているはずなのに、何をそんなに驚いているのだろうか?
「い、いや、悪い。なんでもねぇ。ほら、二人も行くぞ」
「え、えぇ」
「…うん」
そして、完全に扉が開いたとき、部屋の奥に紫の水晶が見えその中に彼の姿を見つけ、私は三人のことも忘れて必死に走った。
近くまで行き水晶の中の彼の姿を近くで見ると、何故だか涙が溢れてくる。
その涙を溢さないように下唇を噛み締めるが、とうとう一筋の涙が頬をつたって落ちた。
「……ティーナ?」
その言葉にハッとして、早くしなければと思い三人に離れているようにいう。
震える手を堅く握って震える口を開く。
先ずは私が無意識に自分でかけていた力を抑える封印を解かなければいけない。
「『全魔力解放』」
私がそう言って魔法を解くと、私から銀色に輝く魔力が嵐のように発せられた。




