35話
(ティーナ!)
誰かが私を呼んでいる気がする。
「ティーナ!」
「え?」
今度は、はっきりと聞こえ目を開けるとそこはいつもの宿の天井で、傍ではアルカナが心配した目で私を見下ろしている。
「よかったわ!突然倒れたから驚いたのよ?!ちょっと待っててね!今みんなを呼んでくるから!」
そう言い残してアルカナは勢いよく部屋から飛び出して行ってしまった。
「わ、私………」
確か……みんなと遺跡に調査に行ってそれで…………そう……全てを思い出したのだわ。
気づくと沢山の思い出が蘇ってきて、意図しなくても止めどなく涙が溢れてくる。
でも、待て………と、私はあの時の遺跡を思い出す。
記憶を全て思い出した今だからこそ分かる。あそこで嫌な気配という風に感じ取っていたのは…………不味いわ……時間稼ぎだけでもしないと……!それに早くしないと彼も………!
そう思いベッドから出て立ち上がろうとした時だった。
不意に部屋の扉がノックも無しにバァンと大きな音を立てて開かれた。
「ティーナ!良かった!アルカナから聞いたよ!無事だったんだね!」
「何処か変なところはないか?!って、まだ起きたらダメだろ!横になってろって!」
二人の勢いに驚いたが、それを追うようにもう二つの足音も聞こえてきた。
「コラァ!女の子の部屋に許しもえずに入ってるんじゃないわよ!」
そう言って戻ってきたアルカナの横にいたルークが、駆け足で私の元にやって来る。
心配そうに私を見ているルークの頭を反射的に撫でてしまう。
「皆んな、心配させてしまってごめんなさい。私は大丈夫」
全てを思い出した今、私は早くあそこへ戻らなければならない。
それには今まで旅を一緒にしてきた彼らに理由を説明する必要がある。別に二度と会えなくなるわけでもないし会いたいと思えばいつでも会えるだろう。ただ彼らが私の話を聞いてどう思うか、それが心配なのだ。
「…………ごめんなさい」
それだけ言って私は窓から勢いよく飛び出した。この部屋は三階の為まあまあの高さがあるが、記憶を思い出した今、以前より魔法を上手く使える。
隣の建物の屋根の上に落ちる直前に詠唱も気にせずに風魔法で、ふわりと体を支え着地する。
「ティーナ!」と後ろから皆んなの呼ぶ声が聞こえるが振り返らずに屋根の上をつたい、あの遺跡を目指して走る。
飛んで行くことも出来なくはないが此処ではあまりに人が多く目立ってしまう為これぐらいしか出来ない。
もし、遺跡から帰ったら私はどうするのだろうか……
王都を出て魔法を使い、最速の速さで遺跡のある森に入る。しばらく走っていると目の前に大きな遺跡が現れた。
かなり遠く、前回来た時よりも五時間早く遺跡へと辿りついた。
さぁ、早く行かなければと遺跡の扉に手をかけた時だった。
「っ!ティーナ!」
此処にいるはずのない人物の声が聞こえ、まさかと思って振り返るとそこには息を絶え絶えさせている仲間の姿があった。
たとえ三人がSランクの冒険者だとしても、私が被害を抑えながら走ってきたといっても、追いつかれるとは思わなかった。
「どうして………」
思わず疑問を口にすると三人は少し怒ったように言う。
「っ、どうしてって……お前なぁ……はぁはぁ………いきな、り窓から、飛び出して、走り出したら……そりゃあ全力で、追いかけるだろ!」
「そうよ……心…配……したん、だから……!」
「何か…あったなら……っ…助け合うのが、仲間、でしょ!」
そこまで言われて私は気づいた。
元々彼らを巻き込まないために一人で来たのだが、逆にそれが彼らを心配させてしまったのだと。
彼らに私の事を話しても絶対に大丈夫だと、そんな自信が湧いてきた。
「わ、私、記憶を思い出したんです」
勇気を振り絞って言った言葉に彼らは驚きつつも、良かったと言ってくれる。
「そうか。でも此処にきたのとなんの関係があるんだ?それにいきなりなんの説明も無しに飛び出していくなんて………」
「そ、それは………」
今はこんな事を話している場合ではないのだ。早くしないと……
「まぁ、帰ったら聞かせてね。飛び出したということは急いでるんでしょ?」
「……!…ありがとうございます」
「ティーナ、私たちも貴女についていっても大丈夫?」
「それは………」
私は返答に困った。もし、今からする事を見て知ってしまったら三人は嫌でも巻き込まれてしまうだろう。もしかすると命をなくしてしまうかもしれない。
「とても、危ないので………もしかすると命も」
私がそういうと、三人は驚いたように目を見開いた。
誤字があったら、報告してくれるとありがたいです!
このまま完結目指して頑張ります!




