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34話

「えっ?」



血を弾くと思われた水晶は、血が落ちたところからまるで水の中に落ちたように、綺麗な波紋を描いて飲み込んでいった。


そして、次の瞬間には扉がゴゴゴゴゴ、と大きな音を立てて開いた。


いきなりのことで、状況がよく分からず突っ立っているだけの私に精霊が言う。



『ティーナ様、開いたよ!僕達はここで待っているからいってらっしゃい!』



それだけ言い残して、精霊達は飛び去っていった。



「え、えぇ?」


「開いたね………」


「開きましたね………」


「取り敢えず行ってみるか……」



中を照らしてみるとそこも広い部屋だった。


おかしなところは何もない。


ただ床いっぱいに何かの魔法陣が描かれ、中心に三メートルほどの紫の水晶の柱が立っている事を除いて。



「ここ……何の部屋?」


「さぁ……」


「ティーナ。ここに書かれている魔法陣が何の魔法なのか分かるか?」



床に書かれている魔法陣はとても細かくいくつかの魔法が組み込んであって、一目見ただけでは分からなかった。


それにしても………



「あの……皆さん……皆さんは感じないんですか…?ここなんか嫌な感じがするというか………」


「ティーナもか?実は俺も……」


「私もだよ」


「みんなもなの?」



どうやらみんな口には出さなかったが、同じ事を思っていたようだ。



「でも、一体何処から?」


「そうねぇ〜、怪しいのはこの魔法陣とあの紫色の水晶の柱みたいのだけど………って、あれ?ねぇあの水晶の柱の中何かない?」


「何かって?」


「いや、信じられないけど………人っぽい?」


「いや、そんな訳………」



念のため見やすいように、照明の魔法を水晶の近くまで移動させ見やすくする。



「おい………嘘……だろ……」


「あれは……男の……人?」


「何が…どうなってるのよ………」



水晶の中にあったのは人の姿だ。


とても豪華そうな服を着ていて、真っ黒な闇のような髪を腰のあたりまで伸ばしている美しい顔をした男。目は閉じているけれど、私は彼の瞳が緑金で優しい眼差しで私を見るのを知っている(・・・・・)


心臓がバクバクと早くなり、息も早くなって呼吸ができない。


頭痛が酷い。何かの映像が頭にちらつく。いや、これはきっと私の記憶なのだろう。思い出さないといけない。


だめだ。もう立っていられない。


私はばたりと床に倒れる。


私が倒れたのに気づいた三人が何か言っているが、意識が遠のいて何も聞こえない。


そのまま私は、意識を失った。













***














(ここはどこなのかしら?)



気がつくと私は何処かの森の上を飛んでいた。いや、空いていると言った方が正しいのかもしれない。


自分でここはどこと言いながらも何処か懐かしい気もする。


その時、少し離れたところから歌が聞こえてきた。


私が知っている言葉ではないけれど、何故だか歌詞の意味がわかる。


それに、歌詞だけじゃなくて、私はこの歌を知っている気がした。


そのまま歌に誘われてついたところは綺麗な湖だった。


湖では沢山の精霊達と大きな白い狼、そして銀髪の少女が舞いながら歌っている。


私と同じくらいだろうか?


(銀髪……私以外にもいたのね……って、え?あれって……私?)



自分と同じ銀髪の人がいたのかと思い、よく見てみると、少女は私と全く同じ顔をしている。



(ど、どういう……こと?)



それに私の事に気づいていない。どうやら私のことが見えていないみたいだ。これは夢なのだろうか?


そんな事を思っていると突然私とそっくりの少女は、涙を流したかと思ったら、慌てたように湖に飛び込もうとした。



(えっ?何?どういう事?)



私が動揺していると少女を呼び止める声がした。



「ま、待ってくれ!」



その声に少女が動きを止め、恐る恐る振り返った。


だが、私は少女を呼び止めた相手を見て目を見開いた。


長い黒髪に緑金の瞳。間違いなくそこにいたのは先程水晶の中にいた彼だった。


また頭痛がする。


だが、二人から目を離せない。離してはいけない気がしたのだ。



「と、突然呼び止めてしまってすまない……。聞いたことのない言葉だったが、とても美しい舞と歌だった。私の名はノアという。良ければもう一度歌ってくれないか?」



ノア、という名にドクンと心臓が今まで以上に大きな音を立ててなる。


そんな時、少女が口を開いた。



「………私は、ルティファーナと言います……そんなに、今の歌が良かったのですか?」



ルティファーナ……そうだったのね………


少女の言葉に全ての合点がいき、思わず崩れ落ちる。


貴女は私そっくりの少女なんかではなくて……



「あぁ、私は君の歌が聴きたい」



彼のそんな言葉に顔を赤くする少女。



そんな貴女は………




貴女は……………







…………私だったのね。

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