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31話

「それにしてもまた、とんでもねぇー大きさの扉だな」


「この扉に描かれているのって、女の子とドラゴン?それとなんかすごくやばそうなのがいるわね。なんか禍々しいというか……」


「ま、取り敢えず開けられるかやってみようぜ」



ディルが自分の何倍もの大きさの扉の取っ手に手を伸ばす。だが、やはりというべきか扉はびくともしなかった。



「まぁ、そうなるだろうとは思ってたよ………」


「そうね。ティーナがやったらもしかしたら、さっきみたいに開くかも?」


 

皆んなの視線に期待がこもる。


いやいや、無理ですって!さっきのは偶然かも知れませんし!……まぁ、でも確かに偶然にしては必ず私の時しか開きませんでしたけど………


………。



「わ、分かりましたよ!やればいいんですね!」



い、言ってしまった……でも、やすがにあれは耐えられません………



「おう!その意気だ!」


「頑張れー!」



皆んなは呑気に応援しているだけだ。少しだけ恨めしく思う。


だが、やると言った以上やるしかない!


私は気合を入れてがむしゃらに扉に手を伸ばし、そして思いっきり扉を引いた。



…………。



気まずい……。


まさか、あそこまでやっておいて開かないだなんて!



「ま、まぁ、気にする事ないよ!ディルだって開けられなかったんだから!それにさっきの扉を開けられただけで十分だよ!」



フレイン……なんかそれでは、余計に虚しくなってきます。それに、ディルの胸に言葉の矢がグサグサ刺さってますよ………。



「ほ、ほら!こっちの壁がここを開けるヒントかも知れないわよ!」



そう言ってアルカナが壁を指さした。


皆んなも壁に目を向ける。



世界は……包まれた?滅びの時?これは…眠りし……王かしら?全く意味がわからないわ………



壁に書かれている文字は劣化が激しくなんて書いてあるのかがまるでわからない。


私がそんなことを思い、一人頭を抱えている時だった。



「……全くわからんな………」


「そうね。古代語とかなのかしら?」



二人の言葉に私は耳を疑った。


確かに劣化が激しく文字は読みにくいが全くわからないということはないだろう。


私は思ったことをそのまま口に出す。



「あの、確かに劣化が激しくて読みにくいですけど、全く読めないということは無いと思うんですけど……」



私がそういうと、三人の表情が固まった気がした。



「……おい、ティーナ?これが読めるのか?」



私はディルの言っている意味が分からず頭にはてなを浮かべる。



「えぇ、まぁ一部ですけど………」


「こんな見たこともない文字が読めるってことは、やっぱどっかのお嬢様とかなんじゃないのか?」



いやいや、私がお嬢様だなんて………って、見たこともない文字?



「違うよディル」



フレインがディルの言葉を否定する。良かったわ。やっぱり私はお嬢様なんかじゃないのね。



「なんでだ?こんな文字が読めるってことは教養があるってことだろ?」


「そうじゃなくて、こんな文字見たことないんだ。僕は殆どの国の文字や古代語を読むことができるけど、文字通りこれは全く見たことがないんだよ」


「ええっと、つまり?」


「そもそもこんな文字は見つかっていないから、ティーナが読めるのはおかしいってこと」


「私……おかしい?」



私がそういうとフレインは何故か、とても焦った様子で私に詰め寄ってきた。



「ごごごごご、ごめん!君がおかしいとかそういう意味じゃなくて!」


「へっ?えっと……はい?」



普段の様子からは想像もできないような、フレインの様子に私は内心かなり驚いた。


まさかいつも、一切感情を乱さずにディルとアルカナの言い合いを止めているフレインが………でも、どうしてあんなに焦っているのかしら?



「まさかフレインがこんなになるなんて、驚いたわ………恋って怖いわね。相手のティーナは全く気付いてないみたいだし……」


「アルカナ?今、何か言いました?聞き取れなかったのでもう一度言ってもらえませんか?」


「……うぇっ?!もしかして声に出てた?!ごめん、なんでもないわ!」



そこまで言われると余計気になるのだけれど………



「それより、これが何語かは分からないけれど、取り敢えず読めるならティーナ、読んでくれない?」



なんか若干話を逸らされた感がないでもないが、取り敢えず何故みんなに読めないのかは分からないけど、私が読むしかないわよね。


私は改めて壁の文字に目を向けた。

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