29話
「何を言っているの?あの人はそんなことをする人じゃないわ」
「「「え?」」」
皆んなが目を丸くして私の方を見る。
待って。私は今なんで言ったの?彼はそんなことをする人じゃない?魔王が?
自分の発言に意味もわからず、意識せずとも呼吸が上がる。
私は、本当に何なのだろうか?何でそんなことを知っているの?どうして魔王のことを知っているの?
様々な考えが私の頭を支配する。
きっと今、私の顔は蒼白になっているだろう。
「だ、大丈夫?!ティーナ!」
「何言ってんだよフレイン!どこをどう見ても大丈夫な訳ねぇじゃねえか!」
ディルとフレインが話している声が聞こえるが、何を話しているまでかは、頭が朦朧として分からない。
「ティーナ!しっかりして!深呼吸よ!」
アルカナが私の背中をさすってくれているのが分かる。
「ふぅーはぁ、ふぅーはぁ、ふぅーはぁ」
私は徐々に呼吸を整えていく。
「し、心配を、っ、おかけして、すみ、ませんでした…っ」
「そんなことどうでも良いわよ!それより本当に大丈夫なの?!」
「はい………」
「さすがに焦ったぜ………それに、魔王のこと知っ…」
「何言ってんのよ!空気読みなさい!アホ!」
「痛ってぇ!」
ディルの頭にアルカナの鉄拳いや………女性らしい優しい拳が直撃した。
だが、ディルの言いたいことはもっともだ。さっきの私の発言………まるで魔王の事を知っているかのような言葉………私だってどうしてそんな事を言ったのか知りたい。
魔王は……魔族は人間や多種族を魔物と同じように無闇に殺すと聞いている。
「……ごめんなさいディル。私も自分で言っておきながら何が何だか………」
「い、いや、俺の方こそ悪かった。ティーナが今しがたあんな風になった理由がそれなのに、そんなこと聞いちまって………」
「本当よ!反省しなさいよね!ほら、フレインも何とか言いなさいよ!」
「あ、うん。ティーナが無事で良かったよ。もしティーナに何かあったら、僕は……」
「僕は?」
「な、何でもない!」
心なしか若干フレインの顔が赤くなっている気がする。
私に何かあったら何だろうか………何故かアルカナがニヤニヤしている気がすらのだけれど……
というか、アルカナはディルをもう許してあげて良いと思う。さっきのアルカナの言葉が決め手になって、普段ならアルカナに言い返すディルが、物凄く落ち込んでいるのを追い討ちをかけるように、また責めている。
「ね、ねぇ、アルカナ。そろそろディルも反省しているし、あれは私が原因のこともあるからそろそろ許してあげても」
「ん?何か言ったかしら?」
「い、いえ!何でもありません!」
アルカナは笑顔を私に向けてきたが、その笑顔に怒っているというのがありありと伝わってきて、今のアルカナには逆らってはいけないと本能的にそう感じた。
ディルの一瞬期待したような目も、直ぐに絶望の色に染まった。
ごめんなさいディル…………
***
今日は昨日のこともあり、私のことを心配してくれた皆んなが受ける依頼を最近見つかったある遺跡の調査にしてくれた。
まぁ、それでも危険な魔物が多く住む森で見つかったため、普通ではそこにたどり着くまでが出来ないから私達が代わりに調査に行くため危険という事には変わりない。
私達はいつも通り、うまく連携をとって危険な魔物を倒しながら、目的の遺跡が見つかったという森に入ってから四時間が経過した。
それでもやはり皆んな私のことを気にしてくれているのか、いつもより私一人が倒す魔物の数が少なかった気がする。
「ねぇ、あそこに見えるのが依頼にあった遺跡じゃない?」
フレインが指さした方向に視線を向けるとそこには、かなり古いと思われる小さなお城のような建物があった。
「確実に」
「あれね」
「……そうですね」
こんな時ばかり息ぴったりなディルとアルカナは置いといて、建物の外観をもっとよく観察する。
建物の壁は蔦が張り巡らされている。そして、入口と思われる場所にあるモニュメントのようなものはドラゴン?だろうか?
古すぎて損傷が激しくあまり良くは分からなかった。
ようやく、あともう少しで恋愛に入れそうです!




