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17話

すいません!

遅れました!

上手いことを言ってかわそうとしてくる男を逃すまいと追いうちをかける。



「そうでしたか、すみません。私の勘違いのようですね......ですが一応確認させてもらえませんか?どうしても気になってしまって.........何もないなら私たちに見せても何も問題はないはずですからね?」


「ひぃっ!」



ティーナはとても美しい笑みを浮かべていた。だがその瞳は冷たく輝いている。それを正面から受けている男も案の定顔を真っ青にしている。美人が怒ると怖いと言うのはきっと今のティーナのことをいうのだろう。



「す、好きにしろ!勝手に確認でもなんでもするがいい!」



ありがとうございますと言って男に背を向ける。馬車の荷台に手をかけようとした瞬間、背後から嫌な気配を感じた。咄嗟に振り向くとすでに男はディルたち三人によって捕らえられていた。


一先ず安心して、急いで荷台を確認する。するとそこにはやはりと言うべきか自らの血で真っ赤に染まった服を着ている五歳くらいの男の子?(しかも動物の耳と尾がついている)が倒れており、その側には小さな風の精霊が寄り添っていた。



「...っ!」



恐らくこの子がルークなのだろう。

男の子の怪我は予想以上に深刻で後少しでも遅かったら間に合わなかったかも知れない。


とにかく急いで、怪我を治すイメージを頭の中で想像する。傷が塞がった時に異物がはいらないように......傷を塞ぎ血液の量を戻すように.........よし!


今ここには男がいるので無詠唱ではいけないため、適当にそれっぽい詠唱をする。



「えっと......『完全治癒』!」



私がそう叫ぶと男の子の体を魔力が覆い、みるみる怪我を治していった。魔力が収まるとそこにいたのは、先程とは違い安らかな顔をして眠っている男の子だった。


次に服と体についている血などの汚れを落としてしまおうと、また適当に『浄化』と言う。



.........。



私は驚いた。綺麗にした男の子の髪は真っ白だったのだ。どうやら汚れすぎていて、髪の色までわからないレベルになっていたらしい。瞳の色は目を閉じて眠っているためわからないが、耳も尾の先までもが雪のように白かった。因みに耳は形から犬か狼の獣人だということが分かった。


それにしても珍しい髪色だ。私の本当の髪色は絶対にいないが白髪というのも今まで見たことがないので相当珍しいのだと思う。



『もしかして......ティーナ様ですか?』



頭に響いてきた声は側にいた風の精霊のものだ。



『えぇ、みんなからもそう呼ばれているから、そう名乗っているわ。ところでこの子は貴方の契約者なの?』


『はい!あ、あのティーナ様!本当にありがとうございます!』


『ううん、私が助けたかっただけだから。それにこの子が助かったのは、貴方の声が私に届いたからなのよ?』


『で、でも.........』


『なら、一つだけ私のお願いを聞いてくれる?』


『もちろんです!』



このままでは、絶対に納得してくれないであろう精霊にお願いをする。



『あのね、この子を街まで連れて行っていいっていう許可が欲しいの。貴方たちがどうしてあんなことになっていたのかは知らないけど、こんな小さな子を放っておくわけにはいかないもの。それにきっと今この子と一番親しいのは貴方でしょう?なら、貴方の許可を貰ってからでないと.........ね?』



私がそういうと、精霊は思いっきり泣き出してしまった。しばらくすると精霊は落ち着いたようで泣き止んだが、その後はどことなく尊敬の眼差しを向けてくる精霊に苦笑した。


念のため自身の白く細い腕に腕の力が強くなりますようにと念じて『身体強化』と、魔法をかけた。そして真っ白な少年を起こさないようにそっと横に抱えて荷台から降りた。


するとそこには、男を片足で踏みつけて動きを封じているディルの姿があった。



「おっ!ティーナ戻ったか.........って、えぇ?!」

「で、ティーナ、何かあっ......たああぁぁぁああ?!」



私を見て驚いた声をあげるディルとアルカナ。私に男の子の血でもついちゃったのかなぁ......?


そこにやってきたのはフレインだった。馬の様子を見にいっていたようだが、二人の声を聞いて戻ってきたようだ。



「二人ともどうしたんですか、そんな声あげてって.........」



フレインまでこちらを見て、目を見開いたまま固まってしまった。


その隙を見てディルに踏みつけられている男は逃げ出そうと藻搔くが、さすがは世界的に有名なSランク冒険者。そのようなことで逃げ出されることはなかった。










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