15話
あの後、ギルドに戻りあったことを説明した後、結局フレインの、驚いたが危険はないだろうという発言により、精霊の気まぐれということで話は終わった。
だが、この事件の張本人の私としては非常に申し訳なく居た堪れなかった。
「全く、不思議なこともあるもんだなぁ〜」
ディルがそんなことを言うが、私はそうですねと気まずく思いながらも答えた。
***
私たちはあれから順調にいろいろな依頼を受けてきた。四人で初めて受けた依頼は上手くいかなかったけれどそれからは、順調にやってこれたはずだ。
あれは、私のせい......ではないと言いたいが、私がいなかったらきっとなんの問題もなく終わるはずだったのだろう。
うぅ、本当に申し訳ない......
あれから、行動もなるべく一緒にしたほうがいいだろうとのことで、寂しく思いながらもタイカさんの宿に別れを告げ三人が宿泊している宿に移った。ちなみに部屋はアルカナさんと同室で毎日楽しくおしゃべりしている。
ちなみに今日は蒼天の銀の三人と出会った森へ魔物を討伐する依頼を受けに行く予定だ。
前も危なかったし大丈夫なのかと聞くとブラックローウルフは普通群れたりしないから前は異常だったのだという。
それに今回はそんなに深くまで入らないらしい。
案の定、今日森に行ってもこの間のブラックローウルフにも出会わなかった。
ん?でも待って......?
こないだもそうだが、森には精霊がいなかった。この森だけではなく街の中でも殆ど見かけたことがない。それを聞くとこの間の事件の精霊の森は聖気に満ちているため精霊が多く集まっているのだそうだ。けれど別に街や他の森に精霊がいないわけではなくただ数が少ないだけらしい。
因みにあの精霊の森は世界で最も精霊が多くいると言われているのだとか。だが、その理由は解明されていないらしい。
人は精霊と契約することで精霊の力を借りて魔法を使ったり、ある程度の意思疎通ができるようになるらしい。そこで、ある精霊と契約した人が精霊の森について聞いてみたことがあるらしいのだが、精霊は一切口を割らなかったという。
まぁ、私には関係ないが......多分......
「なぁ、今日の晩飯どうする?」
「晩飯ってヴィル......今、昼食取ったばっかじゃない!」
「仕方ないだろ。依頼が早く終わりすぎて今日はもうすることないんだから」
「まぁまぁ、二人とも......」
アルカナとディルが喧嘩してフレインが止める、もうこの流れにもだいぶ慣れてきた。
え?私は何をしているのかって......前にこれに入っていったらティーナはどっち?!と選択を迫られた私は案の定どちらかを決めることはできずに参ってしまったのである。
二度とあんな目には遭いたくない。だから私はあはは......と誤魔化すしかないのだ!
『....けて.....』
「ん?あの今何か言いましたか?」
「?いや、俺たちは何も言ってないぞ?」
おかしいなぁ。今確かに声が聞こえたんだけど......それにここは森から帰る途中の道で私たち以外に辺りには誰もいないはずなのに......
空耳かなぁ..........
『......助けて!ルークが死んじゃう!』
「...!」
今のは確かにはっきり聞こえた。頭の中に直接響いてくるようなこの声は恐らく精霊だ。
だけど......ルークが死ぬ?精霊は基本的に何千年も生きる。高位の精霊ならば何万年も生きるものもいるだろう。だが、長く生きすぎた精霊にとっては死は祝い事なのだ。そんな精霊が死ぬと言って騒ぐ理由が分からない。
ん?待って?もし精霊が言っているルークというのが精霊ではないとして、それが精霊の契約者だとしたら.........
そこまで思い至ったティーナは一気に青ざめた。
「どうかしたの、ティーナ?顔が真っ青よ?」
私のどう見ても普通ではない顔色に気づいたアルカナが尋ねてくるがそれに返す余裕はない。
一刻も早く精霊とルークという人物を助けなければいけないということで私の頭はいっぱいだった。
だけど、あまり気にしていなかったせいでどの方向から聞こえてきたのかが分からない。さっきの精霊の声も焦っている精霊から魔力が漏れ出てたまたま私に届いたにすぎない。それに精霊の声が聞こえる私にしか聞こえていないだろう。
私は、深呼吸をし、どんな音も絶対に聞き漏らすものかと耳に全神経を向けた。
......お願い、どうかもう一度、もう一度だけ!
『ルーク!起きてよ!』
聞こえた。
方角は.........西!
その方向を向くと、何もないかとも思ったが遥か先に一台の荷馬車が走っているのが見えた。
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