14話
「えっ、ここ.......」
私は目の前に広がる森を見て驚いた。来る途中は話に夢中で気付かなかったが、どう見てもここは私が目覚めた森だった。
「ん?どうかしたか?」
「それにしても、相変わらずここは空気が澄んでるわね」
「そりゃあ、精霊の森と呼ばれる神聖な場所だからね」
「あっ、ごめん。ティーナ、どうかした?」
(ど、どうしよう……いうべきなのかしら.........?)
私が返事に困っているとアルカナが私の顔を覗き込んできた。
「どうしたの、ティーナ?気分が悪いなら今すぐにでも引き返せるけど......」
そう言うアルカナの顔を見て私は、自分は最低だと思った。私は自分の都合しか考えていない。同じパーティーの仲間になったのなら、相手を信頼しないとダメじゃないか。みんなはこんなにも私のことを思ってくれているのに.........
仲間なのだから、出来るだけ隠し事はなし!みんなを信じよう、と私は決意した。
「......気分が悪いわけではないんですけど……多分この森私が目覚めたところだと思うんです」
私がそういうと三人は少し目を見開き優しい眼差しを私に向けてきた。
「ありがとう、話してくれて。仲間だと認めてもらえたみたいで私嬉しい!」
「アルカナ......」
「ああ、こいつと同じ意見っていうのは気に食わないが、その通りだと思う」
「ちょっと、それどういう意味よ」
そんないつも通りのディルとアルカナの様子を見て、心が少し軽くなった気がした。
「それにしても、精霊の森の中で、か。もしかしたら精霊は君を守っていた?」
「えっ?」
その言葉に私は疑問を持った。分からなくもないがそれだったら何のために私を守っていたのだろうか?私を守ったって精霊にとっていいことは何もないはずなのに......
私が難しい顔をしていると、フレインが「冗談だよ、きっとティーナは精霊の森と知らずに入っちゃったんじゃないかな。ここは空気がとても澄んでいるしね。そのままそこで記憶を失っちゃったんじゃないかなぁ」と言った。私は確かにそうかも知れないなと思い考えるのをやめた。
森に一歩足を踏み入れると、たくさんの小さな可愛らしい姿をした精霊たちが一斉に私たちの周りに集まり、それと同時に頭の中にたくさんの私を呼ぶ声が響いてきた。
『ティーナ様!来てくれたんだね!』
『でも見て?人間と一緒だよ?』
『僕たちに会いにきてくれたんじゃないのかなあ?』
私はその声に応えようと思ったが、ここには私だけではなく他にも三人がいたことを思い出した。
(どうするべき?話したいけれどここには三人がいるし、少し用事があるから一人にしてくれとでも......やっぱり無理よ!怪しすぎるわ......!)
『ティーナ様?なんか困ってるみたいだけど頭で考えたことは、ティーナ様が伝えたいと思えば声を出さなくても僕達に伝わるよ?』
「えっ?」
私が考えていたことを聞いていたかのように、精霊が話しかけてきたので、私は気をつけていたにも関わらず思わず声を出してしまった。
「どうかしたのかティーナ?」
案の定ディルに話しかけられたが、それは答えずに終わった。
「な、なななな何だこれ?!どうなってるの?!僕達なんか悪いことしちゃった?!」
そんなフレインの突然の叫びによって.........
「な、何よいきなり?!びっくりするじゃない!」
「!どうしたんだ?フレイン?」
私はようやく気がついた。精霊にいきなり囲まれたら、そりゃあすごいを通り越して怖いだろうな、と。
「ディルとアルカナには見えないと思うけど、今僕達見たこともないような数の精霊たちに囲まれてるんだよ!危害を加えてくる様子はないから大丈夫だとは思うけど......」
「ええっ?!」
「そ、そうなのか......?」
流石にその驚きはどうかと思ったが、見えないのなら仕方ないと思った。
「そうだ!ティーナには見えてるよね?!とにかくここから離れたほうがいいよ!」
「えっ、あ、あの.........」
「そ、そうだな。フレインにわからないんじゃ仕方ない。俺には見えないし。とにかくここは一旦ギルドに戻って報告しよう」
『ティーナ様、もう帰っちゃうの?』
『ごめんね。今日はもう帰るけど今度また会いに来るわ』
『そっかぁ......でも気をつけてね。人間って弱いけど凄く危険なんだから』
弱いけど危険。その意味はよく分からないし、精霊が言っているのを聞くと、自分が人間ではないと言われている気がする。
だが、金髪に緑眼の小さな男の子姿の精霊の表情を見れば私を心配してくれているのがわかった。
『わかったわ、ありがとう』
私がそう返すと、精霊は満面の笑みを浮かべて、うん!と返事をした。その様子を見た私の心は満たされた気がした。
だが、自分のせいでこんな事になっているのかも知れないと三人に言えるはずもなくティーナは、心の中で三人に謝りながら森を後にした。