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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第四章 決戦! スツーカ砦
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 ケルナの家に招かれた俺たちは手厚くもてなされ、次々と提供されるケルナの手料理はじつに美味かった。

 ブルーノで会った時には俺は名乗らなかったが、ここでは酒を酌み交わし互いに名乗り合ってあの野盗の頭の名がユハであることを俺は知った。

 ユハはなかなかいい男で実直さも感じられる。

 話してみたところ、ユハは野盗に身を落とす前にはここよりも南にある海に突き出した半島の国の生まれで教会に属する騎士団の分隊長だったらしい。手下の者たちはその時の部下だった元騎士なのだそうだ。

 こいつらの行儀のいい剣術はそのためだと合点がいった。

 料理や飲み物の提供が一段落したようだ。

「ケルナ姐さん、あとはやっとくんで席に着いてやってください」

 ケルナを手伝っていたユハの手下たちが片付けを始めた。

「あっ、じゃああとお願いします」

 ケルナはエプロンを外すと自分の飲み物を持ってテーブルにやってきた。ユハのとなりにそっと座ると俺を見てぺこりとお辞儀をした。

「すみませんタケゾウさん、バタバタしちゃって挨拶が遅れてしまいました」

「ケルナ、この人が俺の大恩人のタケゾウさんだ」

 ユハはもう酒が回って絶好調だ、俺のことを大きな声でケルナに紹介してくれた。

「こんなに美味い料理をこんなにもたくさん振る舞ってもらって、こちらこそ申し訳ない」

 俺が言うとロッタも頭を下げた。

「儂らはあてもなく急にこの街を訪れたに過ぎない、こんなにもてなしてもらって本当に申し訳ない」

 ケルナは慌てて両手を胸の前で振った。

「とんでもないですよ、タケゾウさんのことはずっとユハさんから聞いていました。こちらこそ知らなかったとはいえ失礼なことしちゃって……私、早さには自信あったんだけどタケゾウさんには……この拳、かすりもしませんでした。ほんとにすごい方ですね」

「俺も疾さなら自信はあったが、ケルナ殿には思わず本気になってしまった」

 ケルナはにっこりと微笑んだ。

「タケゾウさん……ユハさんを助けていただいて本当にありがとうございました」

 ユハはまんざらでもない顔でケルナを見ている。俺はなんだかむずがゆい。

「まあ、ただの気まぐれだったんだがな……ユハと立ち会ってみた時に……まあ、やりたくてやってんじゃないんだろうなってのが伝わってきたからな……まあ、本当に気まぐれだ」

 俺がそう答えると突然に玄関のドアが開いた。

「よう! ケルナ! 今日もやってるじゃねえか!」

 ずかずかと数人の男が入ってきた。

「あ、ジークさんいらっしゃい」

 ケルナは立ち上がり男たちを迎えた。

「ほらよ今日もウサギがたくさん取れたからよ」

「まあ、こんなにたくさん? じゃあまた肉パイでも作っておきますね」

 手土産を受け取ったケルナは台所に消えていった。

 なんというか、ケルナが女将をやってる料理屋かなんかのようだな……と俺は思った。

 なんてことを考えているとジークと呼ばれた男が俺を凝視しているのに気付いた。そして俺を指差し大声でこう言った。

「おお、あんちゃんか? ケルナとタイマン張ったとかいうのは? そうだろ?」

 好奇心いっぱいの顔で俺を見るおっさんに少し引きながら答える。

「んん、ああ……そうだ」

 おっさんは笑いながら近づいてくる。そして俺の肩を叩きながら横に座る。

「ケルナはこの街で最強の門番だ、ケルナを負かしたってことは……あんちゃんがこの街で最強ってことだぞ」

 おっさんは大笑いだ。そこにケルナが戻ってきた。

「ジークさん、タケゾウさんは大事なお客さんなんですから絡んじゃだめですよ」

「絡んでなんかねーよ、この英雄をたたえてただけだよ……なあ? あんちゃん」

 俺は笑いながら頭を掻いてごまかした。

 この夜はこんな感じで楽しく過ごした。ユハにしろケルナにしろ、初めての接触は最悪のものだったが、こうして楽しく話せるようになるとは人の出会いとは分からないものだな。

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