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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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エミリアの初陣④

 皆が昼食を摂る間、わたしは指揮所として建てられた天幕の中へとイセッタ校長に呼び出されていた。

「ロジータの話によればヴェネラケルータがひどく弱っていたのは君の放った魔法によるものだというが確かかね?」

 別段怒るという様子でも無くイセッタ校長はわたしに確認するように質問をした。

「……はい」

「……ふむ、君としては倒せるかどうか試してみたかった、というところかな?」

 図星だった。わたしは少し答えをためらったけど正直に返事をした。

「……そうです」

「自分の成長を実感し、その力を試してみたくなる……わしの立場としては喜ばしいことだ。しかし今回の討伐は我が校あげての作戦だということは理解しているかね?」

 理解しているつもりだった。だけどわたしが最初に倒してしまえばせっかく参加した他の生徒たちは何もしないままにこの討伐を終えることになってしまうことに気が付いた。

「……理解は……しているつもりでした。……けど、少し配慮が足らなかった……のかも知れません」

 イセッタ校長は小刻みに頷いた。

「我が校では技術面はもちろん、社会に出てから社会に適応し生きていく術まで教えている。君にまず知ってほしいのは魔法使いとは人知を超えた存在であると言うことだ。

 自らが魔法を使えるとなると気付きにくいことだが多くの人々にとって魔法とは未知の現象であり、それを行使する我らは恐れられる存在であらねばならない、それが社会で身を護るために必要なことだ」

「……はい」

 同じことはこれまでも何度も言われてきていた。

「こうした魔獣退治にはよく魔法使いは招集される。しかしそこで必要とされる以上に功績を上げてはならぬ。事前に打ち合わせたこと以上に働き過ぎてはならぬ。人々に話の通じない相手と認識される恐れがある、そうなっては魔女狩りへと発展してしまうからの。傭兵からの逆恨みを受ける恐れもある」

「……はい」

 わたしは自分の犯した軽はずみな行動に後悔していた。

「……まあ、そうしょげるな。今回に関しては君の判断に大きな問題はない。放免とはいかないが特に罰を与えるということはしない。ただ、今言ったことだけは忘れてはならぬ。魔法使いが人間の社会で生きるとはそういうことだ」

「はい、分かりました」

「うむ、少し遅くなってしまったが皆と昼食を摂ってきなさい」

「はい、失礼します」


 天幕から出たわたしの目に楽しそうに昼食を楽しむみんなが見えた。

 わたしは大きなため息をひとつ、胸の中がからっぽになるほど息を吐いた。

 がんばったんだけどな……でも校長の言うことはもっともだし、今回はわたしが浅はかに過ぎたのは確かだと思う。罰も与えないって言ってくれたのは校長の優しさなんだろうな。

 わたしは知らずのうちにタケゾーさんの姿を探していた。

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