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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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コリーンのイセッタ婆さん①

 昨夜の夢がどうにも気になって、俺は御者台の上でぼんやりと考えていた。

 まず、あの倒れていた青年は何者なのか。あの具足はかなり立派なものだった。身分の高い青年であることは間違いない。

 上半身と下半身が分断されるような相手と戦い、そして敗れたのだろう。

 はじめはあの青年は俺自身となにか関係のある人物かと思ったが、あの具足を見る限りは俺との関係はつながりそうもない。

 あの少女は何者なのだろうか。

 頭に響いてきたあの声、浦風と名乗ったあの声の主は話し方からすると高貴な立場であると予想できる。

 あの少女は見るからに異国の少女である。浦風と言う名であればヒノモトの少女であるはずで別人ということになる。

 こんなこと考えたってなにも解決はしないが、どうしても気になってしまう。

 いったい誰の記憶を見せられているのか、それともこの先に起こることを報せる予知夢か……あるいは俺の造りだした妄想で荒唐無稽のものなのか、いずれにせよ確かめる術はなく……

「ぼふぉっ!」

 突然脇腹に肘鉄が食い込んだ。

「何回も声をかけておるのに返事もせんと、呆けた顔をしおってからに、(ふう)の悪い」

 もちろん食い込まされたのはロッタの肘鉄だった。

「あたた……そんなに呆けた顔だったか?」

「おおよ、まるで妙齢の美女の夢でも見ておるような顔じゃったわ」

 相変わらずなかなか鋭い。

「ははは……で、何か用なのか?」

「んむ、ちと馬車を停めてくれぬか、地図を見て道を確認したい」

 俺は馬車を道の端に寄せて停めた。

 ロッタは御者台から荷台へと這って移動し、地図を納めてある箱を開けた。

 地図を取り出すとそのまま荷台の中で広げて現在地を確認すると何やら思案をはじめた。

 しばらく考え込んでいたが、手招きで俺を呼んだ。

 俺も荷台へ入り込んでロッタの隣に座る。

「当初はの、このまま街道を進んでこの大きな湖を過ぎてからこの道で北に行こうと考えておったのじゃが……」

 地図上に指を這わせてロッタは説明する。俺は相槌で答えた。

「少し先にハムポーレという大きな街があるのじゃが、ここから北上する道にしようかと思う」

「そうか、俺は地理には疎いからな、ロッタがいいというならそれで構わんが」

「うむ、ではそうすることにしよう」

「で、目的地はどこなんだ?」

「ここじゃ、ここ」

 ロッタは地図の上を指差した。

「ん? ああ……ええと……コリン? か?」

「んむ、コリーンじゃ」

「地図で見た感じだとけっこう大きな街だな」

「そうじゃな、ブルーノよりも少し小さいくらいの大きな街じゃ」

 ロッタは続けて話した。

「この街でな、会っておきたい人物がおるのじゃ。まだ壮健ならよいが」

 ロッタは長く生きているからな、会っておきたい人が壮健か心配ではあるだろうな……んん?

「その……会っておきたい人というのは何歳くらいなんだ?」

「齢か? 魔法使いでな、儂の先輩にあたる人じゃ」

 ロッタの先輩とは……いったい何百年生きてる人なのだろうか……

「ところで、ロッタの郷里とはどこにあるんだ?」

「それもまだ言うてなかったかの、ここじゃ、地図には載っておらんがこの黒い森の中にある」

 ロッタの指した場所は地図のずっと西の方だった。

「随分遠いんだな、しかもコリーンに寄っていくとなると街道を進むよりも二週間以上は余分にかかりそうだな」

「まあ急ぐ旅ではないしの、コリーンでは何日か滞在する予定じゃからもっと日程は延びるじゃろうな」

「よし分かった、ではまずロッタの先輩に会いに行こう。出発だ」

 俺は御者台に戻り馬車を出発させた。

「だから急ぐ旅ではないと……」

「否、ロッタの先輩が壮健なうちに着かなくてはいかんからな、一日違いで会えんようなことがあってはいかん」

 ロッタはからからと笑った。

「そんな簡単にくたばるようなタマではないわ」

 俺は肩をすくめて見せた。

 何にせよ、ひとまずはコリーンを目指して馬車を進めるのみだ。

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