決意と決心⑧
ロッタはなかなかに肝の据わった冗談をしばしば発する。
これがそうなのか本気なのかタケゾウは判断を迷っていた。なぜならロッタの目がどこか哀しそうにも見えたからだった。
どういうことを言えばいいのかどう返していいのか分からず、タケゾウはしばらくただロッタを見ることしか出来なかった。
「…………理由を……聞いてもいいか……?」
ロッタは目を閉じて頷く。
「お前も見たであろう? 多くの民の亡骸を……」
「あれはお前の剣である俺の失態だ……俺が……魔獣を排する手際が悪かったせいでロッタには関係がない」
「直接的にはそうかもしれん……じゃが儂がブルーノでお前を待ち続ける選択をしたためにこの街は割れゾルゲを狂わせてしまった……」
「それはっ……そうかもしれんが……」
タケゾウは俯いて黙り込んだ。
「儂はお前との約束を果たすことだけを考えてこれまで生きてきた……この命を長らえ、ただひたすらに待ち続ける。そのことに後悔は無い、間違いであったとも思わない……じゃがこの街の惨状を儂は見てしもうた、その上で己が幸せだけを求めてお前と一緒に街を出て行くことは……出来ぬ」
タケゾウは大きなため息を吐いた。
「……実はな……ロッタがそんなことを言い出すんじゃなかろうかという気はしていた……」
そう言ってまたため息を吐いた。
「……すまぬ」
申し訳なさそうに下を向くロッタをタケゾウは自嘲気味に笑いながら見た。
「……ならばロッタの剣である俺に何か手伝えることはあるか?」
ロッタは少し驚いたようにタケゾウを見た。そして少し哀しげな表情を浮かべる。
「タケゾウもこのまま残るとするならば……きっとキヨマサのことについて心残りであろう……ずっと心の中に後悔が残るじゃろう……」
タケゾウは寂しげに頷いた。
「……じゃが今からここを発ちヒノモトを目指すならば冬までに山を越えるのは難しいじゃろう……じゃから春までここに残り儂と一緒に居ってくれるか……そうしてくれると儂も……たすかる」
タケゾウは少しの間考えてから
「……いいだろう。この街の再興、少しの間だけだが手伝おう」
と答えた。
ロッタは涙を浮かべながら「ありがとう」とだけ答えた。




