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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第八章 英雄
254/305

英雄④

 ロッタは不機嫌そうにタケゾウを睨む。


「随分……苦労もあっただろう……」


 目を細めるタケゾウにロッタは「当たり前じゃ」と答えた。


 ロッタの体内に流れ込む風を巻き起こすほどの魔力の激流も少し落ち着きを見せてくるとロッタは確認をするように目を閉じて空を仰ぐ。


「そろそろよいかの……」


 風が一瞬治まるとロッタの紅い髪が輝き始め、黄金色に変わる。


 タケゾウはその姿に胸を撃ち抜かれたように眼を奪われた。


「な……なんと……」


 ロッタはタケゾウの視線にたじろぎながら身体をよじる。


「なんじゃ……そんなに見るでない」


 ロッタの言葉にタケゾウは我に返る。


「あ?……ああ……その姿は……」


「なんじゃ? 初めて見たようなことを……」


 タケゾウはまさに夢に見た少女の姿であるロッタに見惚れたまま、何も答えられなかった。


「ずっと……夢に見ていたのだ……」


「……は?」


「その姿のロッタをずっと夢見ていてな……その……ずっと探していたのだ」


 ロッタは口を閉じるのも忘れてタケゾウを見た。やがてその意味に気付くと今度は顔を紅らめて俯いた。


 すると突然にタケゾウはロッタを抱き上げた。今度は両手で抱えるように抱くと城壁に向かって駆け出した。


「なっ……なんじゃ? なんじゃ?」


 と騒ぐロッタに「見つかった」とタケゾウは後ろを振り返る。


 ロッタも振り返ると木立の隙間から上空から集まってくる魔法使いたちの姿を確認出来た。


 タケゾウはロッタを抱えたままで城壁の高さまで飛び上がり、城壁の天辺を蹴って城の中へ飛び降りた。


 飛び降りた場所は城の正面にある巨大な城門の前だった。


 ロッタを丁寧に下ろし立たせるとタケゾウは膝を着いてロッタよりも低くなるように座った。


「ロッタよ、俺はこのまま街へ下りて民衆に付けられた虫を斬り落とす。全ての虫を斬り落とす。お前はあの……ゾルゲを倒してくるがいい。危ない時には俺を呼べ、必ず駆けつける」


 タケゾウを見つめるロッタの目は優しく、愛おしむようだった。


「分かった……じゃが少し待て」


 そう言うとタケゾウの両肩に手を置いた。


「鬼になって忘れたか……お前はもともと立つのもままならぬほどに痛めつけられておったのじゃぞ? 儂が癒やしてやろう」


 タケゾウはロッタの手を通して暖かな気が流れ込んでくるのを感じた。


「なんと体の奥から力が漲ってくるようだ……」


「お前は本当に儂を救ってくれる英雄のようじゃ……街の民のことは任せた。では……行ってくる」


 タケゾウは頷き、ゾルゲの元へと向かうロッタを見送ると剣を抜いた。


 タケゾウの背後は追ってきた魔法使いに囲まれていた。


「なあ、お前ら……ちょっと話があるんだがな」


 そう言ってタケゾウはゆっくりと振り向いた。

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