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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第七章 魔法遣いローテアウゼンのキセキ
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軌跡~浦風と紅目③~

 東の岬には狭間台と呼ばれる岬の下を往く船を射るための射台が設置してある。ひとつにつき五人が乗って射ることが出来るように作られており後ろには矢の保管所と予備の弓が置かれていてその補給路も張り巡らされている。


 そのうちのひとつに浦風と紅目は陣取っていた。浦風は敵の姿がないことを確認すると紅目(ローテアウゼン)に次第の説明を始めた。


「紅目殿、この島の周りは島が密集しておってな、島と島の間は潮の流れが速く複雑じゃ。必ずここを通らねばこの島へは上がってはこれぬ」


「そうか……ならばここでイッカクとやらの船を一網打尽にするのじゃな」


 紅目(ローテアウゼン)は嬉しそうに東の海を覗き込んだ。


 浦風は紅目の背中を複雑な笑みを浮かべて眺めていた。


「ところで……紅目殿よ」


 紅目(ローテアウゼン)は「なんじゃ?」と振り返る。


「重久とはどうなのだ? 近頃は満更でもないように見えるが」


 紅目(ローテアウゼン)は顔を真っ赤にして声を挙げた。


「なっ……なんじゃ急に!」


「それとも故郷(くに)に想い人でもおるのかや?」


 耳まで顔を真っ赤に染めた紅目(ローテアウゼン)は照れ隠しに怒ったように答える。


「わっ……儂にはそんな者はおらぬっ……そのうち婆が婿を連れてくるだけじゃ」


 そう言った紅目(ローテアウゼン)を見て浦風は少し驚いた。


「……妾と……同じなのじゃな」


 紅目(ローテアウゼン)は浦風を見た。


「……もしかして若のことか……? 嫌なのか……?」


 浦風は黙っていた。答えにくいのか、それでも意を決して返答を述べようとするも「いやでは……」と言いかけたところで伝令の叫びが響く。


「イッカクの船です! 三(そう)!」


 浦風はすぐに攻撃用意の指令を出した後、寂しげに笑うと紅目(ローテアウゼン)に向き直り告げた。


「紅目殿……イッカクとは東の鬼族……一本角の鬼どものことじゃ、我らの敵。そして我らもまた鬼族……二本角の双角(そうかく)……我らは今激しい抗争の只中にある……」


 浦風の号令のもと、辺りの女衆たちは次々と鬼の姿へ変わっていく。


 浦風もまた額から短い二本の角が現われる。

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