皇帝(カイザー)③
皇帝はロッタを蔑むような笑みを浮かべて玉座から見下ろしている。
「よいザマだな……ローテアウゼン、今さら戻ってきて何が目的だ? 首領になろうというのか?」
「否……そうでは……儂はただ…………」
言いかけたロッタが俺を見た。苦しそうな顔をしていた。
なんだ……? なぜ俺を見た? どういうことだ?
しばらくの間静寂が訪れた。誰も何も発しない、ただ重い空気だけがのしかかってくるようだった。
静寂を破ったのは皇帝だった。
「ローテアウゼン、君は僕の憧れだったよ。羨ましかったんだ、君の才能が。それもこの長い時をかけてやっと自覚できたのだがね…………僕はずっと北の出身で、小さな頃から魔法が得意だったよ……誰よりも上手く出来た。神童、天才あらゆる賞賛の的だったが我が街には時計塔への伝手がなかった。そこでここの魔法研究所付属魔法学校へとやってきたんだが君はいつも僕の一歩いや二歩も三歩も先を行っていたね。忌々しかった。
あらゆる賞賛は僕のものだったのにここでは全て君だ。やはり魔法使いは女でなければと僕よりも魔法の使えないやつらから慰められる有様だ。
だが君は突然消えた。ものすごい騒ぎだったよ、なにせ首領家の天才ご令嬢がいなくなったのだからね。
捜索隊も組織された、もちろん僕も入っていたさ。君の捜索は何年続いたかな……」
皇帝の話を聞きながらロッタは震えていた。ロッタにとっては過去の過ち、そして知らなかったその後の話ということか。
「……ある日、とんでもない重力震、魔力震が観測された。それから数日の間、空から流れ星が降り注いだ。
とんでもない騒ぎになったよ、世界の終わりだと皆が泣き叫んでいた。世界が滅ぶのかと僕も心配していたのだけどすぐに収まって安心したよ、君の仕業だろうと僕はすぐに分かったけどね。
それから少し経ってから君がブルーノに居ることを捜索隊が発見した。何度も使者を送ったけど君は帰還を拒み続けた…………それが今になって帰ってくるとはね……」
皇帝は大きく溜息を吐いた。
そしてロッタをまじまじと眺めるとほくそ笑む。
「大魔法使いローテアウゼンよ、我が后となれ」
皇帝は立ち上がりそう宣言した。
ロッタは驚きのあまりに皇帝の顔を見上げて後ずさる。




