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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第六章 黒金の城(シュタールシュロス)
200/305

高貴なる青③

 城は遠目にもかなり大きなものだと分かる。


 たしかスケベたちが言っていた()()()()とは言い得て妙、だが城壁に鉄板を張り付けたという類いのものではなく、なんというか禍々しい姿だった。


 ロッタを見ると呆然としている。俺はかける言葉も見つからず戦慄(わなな)く唇を噛み締めるロッタをただ見ているしか無かった。


 遠くには見えているものの、日が暮れるまでには到着出来そうになかったので今夜は早めに野営地を決めて休むことにした。


 明日の夜にはあの城の内側に入れる予定なので残っている干し肉と細かく刻んだ野菜の煮込み料理をロッタがこしらえてくれた。


 今日の野営地は川からは遠く魚を獲る罠は仕掛けられないが、明日の朝は途中で買った卵を使って作ってくれるそうだ。


 ロッタの作ってくれるゆで卵は黄身が半生で美味い、今から楽しみだった。


 ロッタの焚いてくれた虫除けの香に包まれて早めに寝床についた。


 寝苦しいわけではなかったが、もう旅も終わると思うとなかなか寝付けなかった。


 ロッタも同じだったのか寝床から起き出すような音がする。上半身だけを起こしてみると月明かりに照らされて遠くに見える黒金の城を眺めていた。


 俺も起き出してロッタの隣に座る。


 何も言わずただ隣に座って同じように月明かりに照らされた城を見ていた。するとロッタがぽつりぽつりと話し始めた。


「儂がまだ小さい(こまい)頃、箒で飛ぶようになったばかりの頃にはこの辺りまでよく来ておった……」


 俺は相槌だけで話を聞いた。


「初めて飛んだのは八歳……否七歳じゃったか……高いところから城を見るのが好きでのう……あの頃はこんな禍々しい黒い城ではなく高貴なる青(エードレスブラウ)と呼ばれるそれはそれは美しい白い城じゃった。美麗荘厳とはまさに……あの城であった」


 それからロッタは黙り込んだ。


 顔を見たが月明かりの下では表情まではよく分からない。そしてぽつりと「五百年も前か……」そう呟いた。

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