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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第二章 漆黒の姉妹(レイヴェンシュワルツシュバイセン)
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漆黒の姉妹⑥

 森を進み木立がまばらになった辺りに川へと流れ込む小川の谷が深くなった場所を見つけたので、ここを今日の野営地とした。

 薪を集め焚き火を起こす。火打ち石など持ち合わせは無かったがロッタが魔法で火を付けてくれたので随分と楽ができた。

 カラスの襲来には谷へ逃げ込むことで戦いやすくはなる。オオカミに対しても谷を背にすれば正面だけを警戒すればいいので守りやすい場所だ。

 さらにロッタが魔獣の魔力に反応する札をこしらえてくれたのでこれを周囲の目立たない場所に張り巡らせてあるので接近すればすぐに対応が出来る。

 これでひとまずは休むことが出来る。

 一晩火を絶やすわけにはいかないので俺はもう少し薪になるような枝や風倒木を探してきた。馬車に戻るとロッタが焚き火の傍で鍋の中身をかき混ぜていた。

「薪を調達してきたぞ、これだけあれば朝まで十分だろう」

「おお、ご苦労じゃったのう、もう出来るでな、そこに座るがいい」

 ロッタは鍋の中身をかき混ぜていた木の匙で俺の座る場所を示す。

 焚き火のほとりに腰を下ろすとロッタの横顔がゆらめく炎に照らされているのが見えた。鍋を覗き込み中身の様子を窺っている。

「干し肉を湯がいただけでは味気ないからのう、儂の造った干し味噌を少し入れてそこらで生えておった菊菜を入れてみたぞ……ふむ、もういいじゃろう」

 ロッタは少し匙ですくって味見をすると、味付けに満足したのか一人頷くと椀によそって渡してくれた。

「どうした? 早う受け取らんか」

「お、おお、では頂こう」

 俺としたことがロッタの横顔に見とれてしまっていた。

「そんなに過敏にならずとも何かが近付けば札の陣が作動するから準備の時間はある、今は鋭気を養う時じゃ」

 そう言うとロッタは自分の分を椀によそい始めた。

 俺はロッタの横顔から目を離すことが出来ず、我知らずずっと見つめていた。

「どうした? 早う食わんか」

「……ん? あ、ああ、そうだな。では頂くか」

 ロッタの作った干し肉汁はほんのりと味噌がきき、菊菜の苦みが干し肉の旨味を引き立て質素な汁ではあるが美味かった。

 おかわりも頂き人心地つくと俺は大きくため息をついた。

「なんじゃ、そのため息は……」

 ロッタは少し笑った。

「いや、汁が美味くてな……つい」

「そうか? もう少し足りんかったかのう……」

「いやいや、十分だった。もう満腹だ」

 ロッタは穏やかに微笑む。

「ならば少し眠っておくといい、儂は片付けをしておくでな」

「片付けなら俺も手伝おう、それよりも俺はロッタに聞きたいことがある」

「んん? なんじゃ、えらく前のめりになっておるが……」

 そうだ、これからあのカラス達と戦わねばならんからな。

「オウカから聞いた話ではロッタは封印のせいでまるで力を発揮することができない、とのことだったが……」

 ロッタは片付けの手を止めて空を仰いだ。

「そうじゃな……少し、否……色々と話しておかねばならんことがあるのう、何から話せばよいか……何か聞きたいことがあるか?」

「そうだな、まずはロッタの体のことだ」

「なっ! 儂のっ……カラダじゃと!?」

 ロッタは自分の肩を抱き、俺に背中を向けた。

「はぁ? いや、ちちち……違うぞっ、そういう意味ではない、断じてない!」

 ロッタはからからと笑った。

「冗談じゃ」

 くそっ、またからかわれたようだ。これもいずれはやり返せるようにならんとな。

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